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第36回 朝日新聞社

アクティブシニアに向けて新たな情報や社会とのつながりの場を提供する、朝日新聞社のコミュニティプロジェクト


総合プロデュース本部 コンテンツ事業部 Reライフ.net 編集長
菊池 功氏

新聞紙面から始まったアクティブシニアを応援する「Reライフプロジェクト」
そのプロジェクトが運営するコミュニティ「Reライフ読者会議」は、50代、60代の男女を中心に1万人以上が集い、紙面×ネット×リアルイベントを通して、アクティブに生きるシニアのための情報共有の場となっています。
今回はシニアマーケティングを考える上でも貴重なコミュニティを運営していらっしゃる朝日新聞社 Reライフ.net の編集長 菊池 功氏にお話を伺いました。

2021年6月取材

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2021年、大きな転換期を迎えたシニアとネットの関係性

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Q.まず、朝日新聞社が「Reライフプロジェクト」を通じてシニアマーケティングに取り組むことになったキッカケをお聞かせください。

朝日新聞に「Reライフ」という人気の紙面があります。
人生100年時代、定年・子育て後が長くなり、50代以降の数十年をいかに生きるかが問われるようになりました。
元気なシニアが増えるとともに、長寿化・高齢社会による不安も膨らんでいる。そんな方々の生き方を提言する紙面です。

そのファンの方々に向け、新聞だけでなく、ウェブやリアルイベントなどでも情報や体験を提供しようと「Reライフプロジェクト」を立ち上げました。
月間100万PVを超えるネットメディア「Reライフ.net」や、春秋年2回の大型イベント「Reライフフェスティバル」などを運営しています。

「Reライフフェスティバル」はリアルの時は1開催あたり約3,000人、コロナ禍でオンライン化してからは1開催期間中延べ11万人以上の方にご参加いただいています。

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そして、もうひとつ特徴的な活動が「読者会義」です。
オンラインで登録していただき、登録後はセミナーや座談会に参加したり、様々なプレゼント企画に応募できたりします。
参加者は50代~60代のアクティブシニアといわれる世代の人たちです。登録者数は1万人を超えました。
「人生後半」を健康で、より豊かに生きるために、同世代の生活者同士がつながり、語り合い、共感する場をつくる。
そして、そこに集う人たちの課題解決を専門家や企業が支援する。
そんなプラットフォームになることを目指して立ち上げたコミュニティです。


Q.当時、ネットの分野でシニア(マーケット)に取り組むということに対して懐疑的な意見などはありませんでしたか?

特にはありませんでした。
当時の当社にはすでに「朝日新聞デジタル」があり、10年ほど前からは徐々にデジタル独自のコンテンツも発信するようになっていました。
そうした取り組みの中で、当社は紙だけでなく、デジタルにも力を入れていく方針を決めました。

一つのテーマを深掘りしていくネットメディアも次々と立ち上げました。
そうした流れの中で「アクティブシニア」にターゲットを絞り、その層にふさわしい情報を提供する「Reライフ.net」がスタートしました。

 

Q.コミュニティへの参加経路はオンライン一択なようですが、オフラインはないのでしょうか?

読者会議への登録や各種イベントへの申し込みはすべてネット上で行っています。
当初は紙面でメンバー募集を告知していたため、電話での問い合わせもありましたが、想定していたよりもアクティブシニアのデジタルリテラシーが高く、スムーズに登録者が増えていきました。

登録はオンラインですが、コロナ禍以前は、リアルのイベントを開催していました。
そこで読者会議のメンバー同士や我々編集部ともふれあってきました。

イベントを通じて新たに会員になってくださった方もいます。
今現在は三密を避ける必要からリアルのイベントについては開催を見合わせておりますが、いずれコロナ禍が収束すれば、以前のような活動を再開する予定です。


Q.コロナ禍で世界のネット環境やネット活用が一気に進化したとも言われますが、「Reライフ」の運営においても感じることはありましたか?

読者会議メンバーへのアンケート調査でも、コロナ禍前はオンラインイベントに参加していなかった方々においても、コロナ禍の中で様々な集まりや仕事上の会議がオンライン化されたことにより、必要に迫られてオンラインイベントに参加する人が増えていることがわかっています。

当社の調査によれば、(そのようなオンラインでのコミュニケーションについて)7割近い人たちが経験していました。
徐々に操作に慣れてきて、今ではオンラインでの美術展や旅行などを楽しむ人も増えています。
今後、オンラインイベントは様々な発展を遂げるでしょう。

また、私たちの活動においても、ファッションや医療関係などオンラインイベントの数を増やしており、リアルイベント、オンラインイベントは読者会議活動の両輪となると思っています。

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その一方で、課題も見えてきています。
高齢の方の場合、家庭内のネット環境が整備されていないケースが見受けられます。
オンラインイベントへの参加は、スマートフォンよりパソコンの方が画面も大きくて便利です。
すべての家庭でwi-fiが整備されるなどのネット環境の充実化が実現すれば、私たちの活動もより幅が広がるのではないでしょうか。

 

Q.ネットの比重が大きくなる中で、読者とのコミュニケーションが変わりましたか?

新聞は購読者の減少という課題に直面しています。
仮に購読していても、新聞の記事量は新書一冊分といわれるほど多く、すべての記事が読まれるわけではありませんし、また、日々の記事が読まれたのかどうかを確かめるすべもありません。
そのため、「大事な話は5回書け!」と先輩から言われたほどです。

ネットの場合、メルマガで直接情報を送ると、それをもとにどれくらいの読者がWebに流入したのかをある程度知ることができます。
Web上の記事も、どれぐらい読まれたのかを計測することができます。そういう意味では、Webでは読者の反応がリアルにわかり、直接話すことはなくても関心があるテーマなどを推し量ることができます。

私たちは様々なデータを読み解くことで、常に読者とコミュニケーションをとっているといえるでしょう。
またコミュニティ活動では、オンラインであっても「Face to Face」でつながることを大切にして、ZOOMミーティングなどを活用しています。
読者会議コミュニティの強みはオンラインであっても「顔や人となりがわかる」ことです。


次頁 : 「会員のモチベーションの高さ、その理由と活用方法とは」


朝日新聞社 「Reライフプロジェクト」


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  • 「明治メイバランス」シリーズ初の宅配専用商品
    One to One のサービスが強みの宅配事業で
    拡大を目指す

    食品開発本部 中島綾子氏
    マーケティング本部 小池康文氏、安元敬亮氏

    株式会社 明治の、長い歴史を持った「明治メイバランス」シリーズ。その種類は現在80種以上にのぼります。
    今回はその「明治メイバランス」について、この春から新しくはじまる取り組み・展開も含めたお話しを伺いました。

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    左から小池氏、中島氏、安元氏

    2021年3月取材

     


    Q.明治といえばお菓子というイメージで子どもの頃から身近なブランドですが、それとは少し異なる医療系のジャンルに着手されたのはどういった背景があったのでしょうか?また、このジャンルに積極的に関与して行こうとされたきっかけは何でしたか?

    (中島氏)
    1980年代に発売された「YH 80」という商品(YHはヨーグルトYogurt・ハニーHoneyの略)が弊社の流動食の始まりでした。「明治メイバランス」が生まれたのは1995年ですが、流動食に関しては「明治メイバランス」が発売する前から少しずつスタートさせていました。
    「明治メイバランス」は、もともと病院や介護施設で使われている口から食べることができない方の栄養補給のための商品です。今ではアイスやゼリーといったものまでラインナップが広がり、80以上の「明治メイバランス」シリーズ商品があります。近年はできるだけ口から食べることを推奨する動きが高まってきており、「明治メイバランス」も飲むタイプだけでなく、ゼリーやアイスなど、お客様のニーズに合わせて様々な形態の商品を展開しています。

    (安元氏)
    元々の始まりは先ほどお話に出てきましたヨーグルトと蜂蜜を使用した「YH 80」という商品で、ヨーグルトという素材を応用していこうというのがきっかけです。
    「明治メイバランス」の話をする際に切っても切り離せない話なのですが、ある男の子が全身大火傷を負ってしまい、病院へ運び込まれ、医師がお腹に優しくて栄養豊富なヨーグルトでなんとかこの男の子を救えないかと当社に問い合わせをしたことが歴史のはじまりとされています。栄養豊富なヨーグルトとカロリーが高い蜂蜜を投与することで男の子は一命を取り留めました。その後その栄養補給の手法が広まり、医師から商品化して欲しいという声をいただいて商品化に至りました。
    チーム医療の考えが進み、医師や医療・介護従事者が一丸となって医療を行っている医療機関、介護施設が多いですが、今でも医師の先生方だけでなく、医療・介護従事者の方々のお力を借りて商品を開発したり、お客様に伝える活動をしたりしています。

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    明治メイバランスシリーズ

     

     
    Q. ドラックストアの栄養補助食売り場で多く「明治メイバランス」を見かけますが、B to C に向けて展開された際の工夫点、売り方で何か気をつけてらっしゃる点や、意識されている点は何でしょうか?

    (安元氏)
    高齢化が進み、高齢になっても住み慣れた地域と自宅で過ごしながら療養をされたいと希望する方のボリュームが増えたことや病床抑制による医療費の削減を背景に在宅医療・介護の流れが進む中で、手軽に店頭で流動食を買えるということが価値になるのではないかと考え、明治メイバランスの市販化を進めました。
    この商品は、お客さまに商品の良さを理解していただく必要がある商品なので、販売スタッフの方への勉強会を開催するなど、(展開する)ドラッグストアさんと手を組みながらしっかりと丁寧に販売をしていきました。元々は介護食というカテゴリーの中でお食事がとりづらい方のニーズを想定して販売しておりましたが、ご購入いただくお客さまが増えていくにつれ、「介護食という狭い世界だけにとどまらない価値があるのではないか」と考え、栄養補助の観点からの提案を行っていったところ、流通様からもご賛同頂き、栄養補助食売り場にも置いていただけるようになりました。

     

    Q. 購入者としては介護をする方と介護をされる方、どちらを想定してこのような商品展開にされたのでしょうか?

    (安元氏)
    両方を想定しています。実際に飲用する方に対しては、おいしく飽きずに飲んでいただきたいという思いから、味の改良を重ねています。一方で、医療機関で使用されているという安心感や、「明治メイバランスMiniカップ」については独自設計の「小型カップ」と蛇腹のストローで、介護するご家族が使いやすいような商品になるように考えています。
    ですので、どちらか一方を想定した商品展開ではなく、介護者・被介護者どちらも重視し展開しています。

     

     
    Q. 「明治メイバランス」のスタート時、1980年代の介護は小さな市場だったと思いますが、当時から社内でマーケット・事業として評価に値するものという位置づけをされていたのでしょうか?

    (安元氏)
    弊社にはヨーグルトや菓子をはじめ様々な商品があり、市場トップシェアのメガブランド商品も多々あります。 「明治メイバランスMiniカップ」もトップシェアではあるものの、市販における売上がまだ小さいのも事実です。しかし、社内で非常に重要なブランドとして位置づけられている実感があります。この商品は、栄養で社会に貢献できる商品として、研究・開発から販売まで、力を入れて取り組んでいます。

     

    Q. 「メイバランス」というネーミングには何かストーリーがあるのでしょうか?

    (中島氏)
    「メイバランス」は、明治(“メイ”ジ)の“バランス”の良い栄養食品という意味合いで名付けられています。
    始まりは1つの商品でしたが、医療従事者や患者さま、そのご家族のニーズにお応えできるよう、今では80種類以上のラインナップを揃えており、医療現場でいちばん使われている栄養食ブランド※に成長しました。
    「明治メイバランスを使っていれば安心」と思っていただけるようにこれからもお客様のお声にこたえていきたいと思っています。
    当商品群は、用途やニーズに応じた栄養設計、ラインナップ、味、物性、使いやすさや識別性・安全性を重視した容器などに配慮をして開発をしています。
    ※ (株)シード・プランニング「2019年版 高齢者/病者用食品市場総合分析調査」における病院・介護施設での経口栄養流動食(容量125ml以下のリキッドタイプ)シェア(2016年4月~2019年3月)

     

    Q. この2021年春、新商品が出ると聞きましたが、開発の背景をお伺いできますでしょうか?

    (中島氏)
    この春から「明治メイバランス」の宅配専用商品を販売します。
    「明治メイバランスMiniカップ」の販売開始後、お客様からは「1本で栄養素がいっぱい摂れるのは嬉しいです。」という声をいただいた一方で、「1本で200kcalは多すぎる」、「味が濃いので飲みづらい」と言うご意見もありました。しかし「宅配で定期的に届けてくれるのは、体のメンテナンスが習慣化できて良いと思います」という声が後押しとなり、宅配に1番マッチする「明治メイバランス」は何かを考え、明治の強みである「ヨーグルト」にたどり着きました。
    皆さまの期待に答えられる味に仕立てるということ、これだけの栄養素をわずか100mlの商品に入れるということには苦労が多くありました。「明治メイバランスで培った栄養設計技術」、「ヨーグルトの健康価値とおいしさ」、「定期宅配による習慣化」・・これらを合わせたのがこの商品です。


    (小池氏)
    商品設計にあたり、1回で飲みきりやすく、ひんやりした口当たりが好評の小型タイプのビン入りの商品にしたいと社内で提案しました。しかし、ビンに本商品を充填すると、光が当たることで様々な栄養素がダメージをうけてしまうという問題に直面しました。その課題を開発チームがクリアしてくれたことで、発売に至ることができました。

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    明治メイバランスのむヨーグルト(宅配専用) (2021年4月5日発売)

     

     
    Q. 昔からある牛乳配達などの宅配サービスが減少した中、今もう一度力を入れられるにあたって新しくネットワークを構築されたのでしょうか?

    (小池氏)
    1970年代からスーパーやコンビニが台頭していくことで急激にお客様軒数が減り、宅配事業存続の危機でした。しかし、宅配専用商品の開発や保冷可能な受箱の導入、さらには配達員の営業活動時間のシフトチェンジなどに取り組んだ結果、V字回復をしてきました。現在では全国250万軒のお客さまにお届けしています。最近の例で申しますと、小型ビンタイプの「明治プロビオヨーグルトR-1ドリンクタイプ(以下、「R-1」)」において市販品とは差別化した中身で発売することで、スーパーで「R-1」を購入している方々が「宅配を届けてくれるほうが続けやすい」と、宅配に切り替えてくださる例が非常に増えているようです。
    もちろんネットワークの構築・維持に関しては、全国3,000店の明治特約店さんと共同してそのインフラの構築を進めています。明治の特約店さんは我々の大切なパートナーであり、全国の高頻度定期チルド配達網は、当社の強みだと考えています。更なる価値創造に向けて、去年からワタミの宅食さんとも取り組みを開始しました。ワタミさんのお弁当を届ける時に「R-1」などの宅配商品も一緒に届けていただき、反対に明治の宅配商品を届ける時にワタミさんのお弁当もお届けするなど、お互いの顧客網を使いながら相互に送客し合うことで、お客様の健康的な生活をサポートすることを目指しています。
    さらにこのコロナ禍でお客さまの健康意識が高まっていて、解約をするお客さまが減っています。新規営業時においても、在宅勤務や活動自粛による在宅率の向上でお客様との接点が増え、新規軒数も増加しています。2020年度は宅配事業の売上が非常に好調です。新商品「明治メイバランスのむヨーグルト(宅配専用)」の発売によって、2021年度も更に飛躍できると考えています。

    (安元氏)
    元々(商品と宅配に)親和性があるなと思いながら、商品的なブレイクができなかったというところを今回(の宅配専用「明治メイバランス」で)できたというのは非常に大きいと思います。

     

    Q. これからの「明治メイバランス」宅配サービスに対する意気込みや思いをお聞かせください。

    (中島氏)

    「明治メイバランス」シリーズをヨーグルトに展開できることについて、チャレンジングな取り組みですが期待感も強く感じています。
    「明治メイバランスMiniカップ」の市販展開をスタートした頃は医療従事者・介護従事者からの紹介でこの商品を購入していただく方がほとんどでしたが、近年では、お客さまご自身が店頭でご覧になって買っていただくというお客さまが増えています。しかし店頭ではすべてのお客様に直接、「明治メイバランス」がどのような商品なのかをお伝えすることはできません。その点宅配では、お客さま一人ひとりとお話して大切な情報をお届けできるため、この商品と相性の良いチャネルだと思っています。お客さまに気に入っていただき、「毎日飲みたい!」と感じていただけるよう、チャレンジしていきたいと思います。

     

    Q. 宅配サービスのエリアや想定されるターゲットやペルソナはどうお考えでしょうか?

    (小池氏)

    エリアは全国です。ターゲットとしては、アクティブシニアとギャップシニアをメインターゲットとして想定していますが、私たちの中では年齢というよりその方の状態が重要と考えています。状態・気持ちで商品を選んでいただくことが必要なのかと思います。あまりシニア感を出さず、介護ということでなく、あくまで食事のバランスを整えるという面でアプローチしていく予定です。30、40代の朝食を抜いてしまったという方にも、栄養バランスを整えようという訴求の中で、シニア以外の層の獲得もできるのではないかと期待しています。
    発売前にお客様見本を配布し、営業活動を進めていますが、非常に好評です。基本、特約店さんの営業活動と、Webでの「4本無料お試しキャンペーン」、 新聞広告等でのプロモーションを展開していく予定です。

     

    Q. 今回ネットでのサービスの申し込みというところも重要視されているのでしょうか?また、デジタルマーケティングにおけるシニアの方々の反応をどう捉えられていらっしゃいますか?

    (小池氏)

    昔より随分シニアの方々のITリテラシーは上がっているかと思いますが、やっぱり新聞の方がリーチ率は高いと考えています。Webは30~40代、新聞は60~70代。「新聞に広告を出して、事務局を設置して電話受付対応する」よりは「Web広告を出し、レスポンス自動受付で、メール配信」の方が、コスト効率がいい…その辺のバランスを取りながら対応していこうと思います。
    あとは、離れて暮らす親御さんへのプレゼント需要を狙っています。私も親が遠くで一人暮らしをしているので、宅配でお届け、支払いはこちらで、とこっそりプレゼントするつもりです。

     

    Q. 宅配ビジネスというものの可能性や課題でベンチマークされたものはありましたか?

    (小池氏)

    宅配で言うと、ECサイトでの時間指定配達や、生協さんのような豊富なラインナップ対応もできないと思っています。我々の強みは週に2、3回という頻度でお客さんの家に行ってone to oneのコミュニケーションを取ることなので、そのコミュニケーションを商品と合わせて提案することで、地域包括ケアシステムの一翼を担う、予防活動に貢献していきたいと思います。「宅配で週に2、3回来てくれるから、見守りも兼ねているよね」、「コミュニケーションが社会との繋りとなって孤独にならないよね」といった、コミュニケーションとセットした新しい宅配モデルの構築を目指しています。闇雲に商品ラインナップを増やしていこう、「明治メイバランス」のシェアを増やしていこう、と言うことではなく、限られた商品の中でそこにプラスの価値を付与して戦っていきます。「離れて住む子どもよりも近くに住む牛乳屋さん」のような健康習慣のインフラにしていきたいです。
    この商品の必要性をお客さま一人ひとりにしっかりと理解してもらうことが大切です。置けば売れる商品というわけではなく、しっかりと理解してもらいながらこの商品を取っていただくというのが、習慣化につながり、お客様の健康習慣に貢献できると思います。

     

    Q. 一定の説明と利用者側の理解・咀嚼があって、初めてコミュニケーションが成立して維持・発展していく商品ということでしょうか?

    (中島氏)

    そうですね。今回の取り組みが、お客様のヘルスリテラシーを高めるための一助になればと思っています。
    3食しっかり食べているつもりでも、実は栄養素が十分に摂れていないことが多くあります。年齢を重ねるほど、食べる量が減るためその傾向は強まります。栄養素の不足が長く続くとフレイルなどへのリスクが高まるので、そうならないよう、予防的な取り組みを広めていきたいですね。


    株式会社明治 https://www.meiji.co.jp/

    明治の宅配 https://www.meiji.co.jp/takuhaimeiji/commodity/

     


     

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    実証実験に基づいたシームレスな
    介護施設支援ソリューション
    「頭の健康管理サービス」「頭の健康@HOME」

    シャープマーケティングジャパン株式会社 ビジネスソリューション社
    システム機器営業推進部 佐田 いち子氏


    シャープ株式会社 ビジネスソリューション事業本部
    システムソリューション事業部 商品企画部 井上 貴英氏

    「頭の健康管理サービス」「頭の健康@HOME」はシャープ株式会社が開発・運営を行う介護施設支援ソリューションです。最終エンドユーザーの利用者(=高齢者)を見据えた法人向けの生活機能・認知機能訓練に特化したシームレスな運用ができることが特徴です。
    今回は、システム機器営業推進部の佐田いち子氏、システムソリューション事業部商品企画部の井上貴英氏にお話しをお伺いいたしました。
    ※今回はシャープ株式会社のオンライン会議サービス「TeleOffice」を使用して取材いたしました。

    シャープ 人物写真              井上貴英氏            佐田いち子氏

     

    2021年2月取材

     


    Q.はじめに、シニアの定義をどうお考えですか。

    弊社といたしましては、特段シニアというものを定義しようとはしておりません。ここからは個人的な感想になりますが、“高齢者”という響きはなんとなくネガティブな印象があります。それをふんわりと置き換えると“シニア”とか、年齢層を引き下げて“人生史上最高の時”のような“グランドジェネレーション”といったそういう言い方もあるのだろうなと思いますが、その言葉自体にはあまり拘ってはおりません。

     

    Q.「頭の健康管理サービス」について教えてください。

    顧客ターゲットは、通所施設――デイサービスやデイケア、入所施設――介護老人保護施設あるいはサービス付き高齢者向け住宅、などです。
    サービスの概要につきましては、介護施設の業務効率をアップし、人手不足の解消を支援する新しいソリューションということで、利用者(=高齢者)が楽しみながら認知機能を訓練することができるサービスになっています。特に私どもは生活機能、中でも認知機能は日常生活で欠かせない脳の働きということで、これに着目し強化することを考えております。


    システムの構成といたしましては、40型タッチディスプレイあるいはタブレットを高齢者ご自身がお使いになります。画面にタッチをして訓練用ゲームをすると、その結果がクラウドサーバーに保存されます。施設スタッフは操作の支援や、結果を見たりすることができるシステム――アセスメント→計画作成→訓練実施→結果・評価といったケアプランの業務フローをシームレスに支援できるシステムとなっております。

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    Q.「頭の健康管理サービス」の開発~販売までの背景・経緯をお聞かせください。

    2012年頃、「タブレットを活用して健康管理をしたい」というお話を奈良県王寺町の高齢者団体「未病クラブ」というところからいただき開発をスタート致しました。
    そこから、奈良県や神奈川県の公募事業で実際に健康管理・介護予防ソリューションという取り組みを本格的にスタートしております。また、その後経済産業省公募事業として三重県亀山市と亀山市シルバー人材センターと協業して、ビジネスの実証実験を2015年から開始しております。さらに、「頭の健康管理サービス」の介護トライアルということで近畿経済産業局の実証プロジェクトを経て、2019年8月に「頭の健康管理サービス」の販売を開始させていただきました。


    私どもビジネスソリューション事業本部は事業の柱の一つとしてBtoB向けのディスプレイを扱っております。そのディスプレイを活用いただくため、ディスプレイに表示するコンテンツを配信するソフトウェアの開発も行っております。
    さらに、傘下の販売会社がシステムインテグレーションやサポートができる体制も整えております。
    「頭の健康管理サービス」はこうした当社のもつBtoBビジネスのリソースと、これまでの実証実験やトライアルから得たノウハウ、それから各大学との連携による知見、そのようなものを組み合わせることで、今後増加する高齢者の受け皿となる介護施設の課題解決に貢献できると考えて商品化しております。


    2017年から実施している介護フィールド実証で、介護施設の方々にご意見を伺ったところ、まず1番目には2018年の介護保険法改正に伴う収入減の対策をしたいという声、2番目には介護施設間の競争が激しいので認知機能対策訓練としての差別化を図りたいという声、3番目には多忙な機能訓練指導員の仕事を少しでも軽減して楽にしたいという声、4番目には厚生労働省より生活改善を重視する方向が示されており、今後の介護報酬の改定を見越して生活機能訓練を充実させたい、という4つの声が聞かれました。
    このようなニーズにお応えできるというのが「頭の健康管理サービス」であるということで、我々は商品化に取り組んで参りました。

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    Q.BtoBへ特化している理由をお聞かせください。

    シニアマーケットを考えたときに、もちろんBtoCということも考えられ、弊社でも、火を使わない調理家電など、様々なシニアにフィットする商品をご提供しています。しかしながら、「頭の健康管理サービス」や「頭の健康@HOME」にはICT機器の操作が伴い、これをサポートすることが必要になってきます。
    私どもは、高齢者への操作サポートが、高齢者とのコミュニケーションの機会になりうるのではないかと考えております。


    自治体全体で支えあい、シルバー人材などがキーとなって支援できる地域包括ケアに貢献するモデルを作れるのではないか。それが自治体の要望でもあるし、動ける方がサポートする、そういった高・高支援モデルが望ましいと考えています。
    その考えに至った背景は、2012年から始めている高齢者団体「未病クラブ」での実証実験にあります。アクティブシニア同士でもいろいろなレベル差があり、ICT機器に関しても非常に良くご理解されている方、ちょっと良く分からないという方、と様々です。良くお分かりの方は「こういう風にするんだよ」と不案内な方に教えてあげるのですが、その姿がとっても微笑ましくて、また私どものような年代の者が教えるよりもはるかに自然に受け入れてもらえる。
    こういう姿があり得るのだなということを目の当たりにしました。


    その後、県や国の公募事業でも、自治体の中で、シルバー人材の方にサポートしていただくと、教える側も根気よく教えていただけるし、聞く側も聞きやすいというモデルが成り立つことが分かりましたので、そこをターゲットにしようと考えています。
    また、介護施設支援ソリューションでは、トレーニングの実施に際し使い方を教え、教わるシーンが、施設の機能訓練指導員やセラピストと、高齢者とのコミュニケーションツールとしても役立っているとお聞きしており、正に、理想通りに活用いただいております。


    弊社以外の企業でも、介護施設スタッフの労力削減や業務効率アップという観点からの開発は進めておられると思いますが、“高齢者が使う”というところに拘り、10年以上費やして、全ての日常生活の根幹である認知機能という点にフォーカスした取り組みというのは、他社には無いだろうと考えています。
    自治体向けモデルにせよ、介護施設向けにせよ、主役は一人ひとりの高齢者なのです。ただ前述の経緯・想いから、そこにサービスを届ける方法、ルートをBtoBとしている、と考えていただければと思います。

     

    Q.導入にあたってのメリットを教えてください。

    導入いただいた場合のメリットは、利用者(=高齢者)にとっては、楽しく訓練用ゲームをしながら認知機能を刺激できるということ。これによって顧客満足度が向上し、他の施設との差別化ができます。
    施設様にとっては、機能訓練の効率化ができるという点が大きなメリットとなっています。


    機能訓練について、施設様ではケアプラン計画書の原案を作成し、アセスメントを行って計画を完成させます。そこから訓練を実施し、計画書に評価を記載して、最終的にはその結果をご本人やご家族に説明して同意をいただく、というフローが一般的です。
    「頭の健康管理サービス」の場合は、アセスメントの部分について、厚労省の作成した「興味・関心チェックシート」を、さらに深く掘り下げた質問に回答していただきます。その結果を基に、強化すべき認知機能を自動的に割り出し、個々人にあった訓練用ゲームが自動提示される流れとなっています。個人を識別するICカードをカードリーダーにかざしていただくとその日やるべきゲームが提示され、実施していくとまた次のゲームが提示されるような仕組みになっています。

     

    Q.サービスの特徴はいかがでしょうか。

    特徴として1つ目のポイントは、現場ニーズにお応えできる独創的な機能訓練です。介護施設でのフィールド実証や、ヒアリング観察に加え、脳医学あるいは機能訓練関係の大学との連携によって、アセスメントから計画作成・評価までできる独創的なシステムを生み出すことができました。
    2つ目のポイントは、実証の中から生まれた、高齢者にも使いやすいUIです。介護現場での観察結果を基に、高齢者でも直感的に操作しやすく仕上げております。
    3つ目のポイントは、サービス内のゲームの一部を東北大学の川島隆太教授に直接学術指導を受け開発していることです。東北大学では効果のエビデンスを取得し、論文発表もして下さっています。
    4つ目のポイントは、直感的に変化が分かる結果の“見える化”です。機能訓練の結果が自動保存されるのはもちろんのこと、チャートや折れ線グラフなど、様々な形式でのアウトプットができます。

     

    Q.ハードウェアからすべてご提供する理由について教えてください。

    介護業界はまだまだICT化が進んでいないのが現状なので、すべてキッティング(機器の設定・調整作業)してご提供し、何かお困り事があったらサポートできるように考えております。お手持ちの機材で利用できると、コスト面からみると施設様にとっては良いかもしれませんが、トラブルが起きた時、解決に時間がかかる可能性が高くなります。
    そういうことから、現在は決められたハードウェアをフルキッティングしてご提供しております。この先、どんどんICTが浸透すれば、また別の様態もあるかとは思います。


    もう一つ別の理由があります。科学の世界では認知機能を維持・向上させるためには脳の処理能力を上げることが有効とされています。そのためには訓練ゲームの実施速度を向上させていく必要がありますが、お使いいただく機材が異なる場合、その実施速度の差が脳の処理能力によるものなのか、機材の反応によるものなのか判断がつかないとデータ自体の意味が無くなってしまいます。ですので、現時点では、弊社の機材で統一してお使い頂いています。

     

    Q.「頭の健康管理サービス」を実施するにあたって必要なシステムを教えてください。

    ハードウェアの構成としては、40V型タッチディスプレイ・コントローラーボード(パソコン)・フロアスタンド・ICカード・ICカードリーダーになります。このICカードは個人管理をするために必要となっています。カード1枚で個人を特定することができます。ディスプレイ・コントローラーボード・フロアスタンドの代わりにタブレットもお使いいただけます。
    そこに「施設基本」・「機能訓練」・「個人管理」の各ライセンスが必要になります。
    「施設基本ライセンス」というのは施設に1ライセンス必要なもので、この中にはゲーム系のものが全て入っています。「機能訓練ライセンス」は、機能訓練に活用するために、スタッフがお使いいただくものになります。「個人管理ライセンス」は、個人のデータ管理をするためのものになります。
    以上のようなハードウェアとソフトウェアで成りたっております。
    この他、「健康管理ライセンス」というものがあり、こちらはこの後の「頭の健康@HOME」にも繋がっていきますが、タブレットでお使いいただくときに健康管理もできるというようなものになっています。

    構造

     
     
    Q.導入事例を教えてください。

    導入施設様Aでは、導入前は認知機能を維持強化したいという取り組みを考えておられました。その中で訓練計画とか結果・履歴を簡単に管理できたら良いなというような課題感を持って探されていたところ、「頭の健康管理サービス」にたどり着かれたということでした。
    実際に導入されてみると、利用者が楽しみながら取り組める効果的なトレーニングであると感じておられること、介護スタッフの業務が軽減されたということ、一人一人のアセスメントによってそれぞれに合った訓練用ゲームが提示される為、時間的にスタッフが高齢者に寄り添う余裕ができたというお声を頂いております。
    (※詳しくは、下記サイトをご覧ください。 https://jp.sharp/business/case/bigpad/bigpad_detail_26.html


    もう一事例として挙げたいのは、導入施設様Bのケースになります。
    オープン前から施設の内覧会でケアマネージャー様にご意見を伺ったところ、「これまでにないサービスだ」と、非常にポジティブな感想をいただきました。ケアプランの立案や実績の記録などが簡単にできるということで導入をお決めになりましたが、導入当初は「いろいろな認知機能の方がいる中で本当に利用できるのかな?」というような疑問を持ったスタッフもいらっしゃったそうです。結果といたしましては、すんなりとすべての方が利用できたということで、ご家族やスタッフの方も驚き喜んでいらっしゃったとお聞きしています。
    (※詳しくは、下記サイトをご覧ください。
    https://jp.sharp/business/lcd-display/case/medical/lcdcase_015.html

     

    Q.「頭の健康@HOME」についてお聞かせください

    「頭の健康@HOME」の顧客ターゲットは見守る側、事業を進める側として自治体やシルバー人材センター。
    お使いいただく側としては在宅のシニアと考えております。
    現時点では、介護施設向け「頭の健康管理サービス」の付帯サービスという位置付けになっております。ご自宅ではそれぞれの高齢者がご自身のタブレットやスマートフォンを利用して健康記録、あるいは頭の健康ゲームを実施したデータをサーバーで管理し、介護施設のスタッフから電話などでお声掛けをするようなご利用方法になります。高齢者のご家族とも連携した健康見守りもできますし、アクティブシニアに対しては健康管理や介護予防による健康寿命の延伸を図り、要介護認定者には適切な健康管理による重症化防止を目指しています。

     

    ③


    現在約3,500万人の高齢者がおられますけれども、その多くはアクティブシニアと呼ばれる方々、そして要介護・要支援認定者が全体の18.3%にあたる645万人(2018年度分、2020年7月厚生労働省発表)、アクティブシニアと要介護・要支援認定者の間におられるのが介護リスクの高い「フレイル群」と呼ばれるメザニンシニアになります。
    自治体やシルバー人材センター、高齢者団体、NPOなどが、介護予防事業などを行うことで健康寿命の延伸と社会保障費の削減を目指しています。また、医療・介護事業者は、重症化防止の取り組みを行っています。この両方で、「頭の健康@HOME」の在宅利用というのは成立します。
    特に感染リスクへの懸念から、一時的に施設に通うことができない高齢者に対し、「頭の健康@HOME」はご自宅での生活機能・認知機能訓練の一助になると思っております。

    ①

     
    Q.サービス開発について苦労されたことや、やりがいをお聞かせください。

    企業が実証フィールドを求めて、いきなり自治体や介護施設にアプローチするのは非常に難しいですね。
    ですので、やはりそこは公的プロセス、官公庁の公的な事業に参画しました。公募に応募して正式に採択をされ、世の中にこれは必要な事業だと官公庁からも認められた上で推進しています。
    いわば、正攻法の取り組みです。そうした上で、マッチングをしていただくなど、実証フィールドを与えていただいて開発を進めています。


    私どもの特徴の1つとしましては、研究開発を行う技術者が現場に入り込んで、直接しっかりとお声を聴くということをしています。お忙しい中でお時間をいただくわけですから、まずお聴きする際に「何かお困りことはありませんか?」と漠然とお尋ねするのではなく、こういう課題感を持っていらっしゃるのではないかという仮説を立てた上で、ヒアリングしていくアプローチをしましたし、また「こんなことで困っている」とお聴きできたなら、それをできるだけ商品に反映して次の機会にお持ちする、ということの繰り返しになります。いわゆるアジャイル開発(作りながらブラシュアップしていく)というような手法になりますけれども、そういった地道な積み重ねで商品を仕上げているということになります。


    2017年頃から介護施設様向けのフィールド実証を進めていますが、その時は少し早過ぎたかもしれません。ですが、最近は厚労省がデジタル化・科学的根拠に基づいた介護という指針を提示するようになってきました。そうなると、私どものシステムがお役に立てるだろうと考えています。
    ヒアリングや観察に関しては、実際に介護現場で働いておられるプロフェッショナルの方々に、ご利用者様(=高齢者)もそこにおられる中でお時間を割いていただく、またご利用者様(=高齢者)には観察もさせていただく。失礼な話ですよね。まったくの他人がその場に訪れてじっと見るわけですから。
    そういう事をなるべく違和感を覚えないように、控えめに短時間で済むようにと苦労しながら進めています。


    その結果、やりがいというところでは、実証フィールドとして協力してくださった介護施設様から、本格的なサービスの導入をいただいたり、サービス利用者様の笑顔を拝見できたり、契約を更新してくださったり、「とても手放せないものになっている」というお声を聞くといった事でしょうね。

     

    Q.利用するにはどのような流れになるでしょうか。

    「頭の健康管理@HOME」は昨年の6月24日に提供を開始したものですが、個人向けサービスは昨年9月末にて終了しております。
    法人向けにつきましは、まずIDを取得して頂きますと高齢者、またはご家族に招待メールが届き、メールに従って高齢者が参加すると毎日ご自身のタブレットやスマホに“お題メール”が届きます。“お題メール”にあるワンタイムURL(その日しか利用できません。)から健康情報の入力や、頭の健康ゲームをする画面が表示される、といった仕組みになっています。

     

    Q.収集データについてはどのような活用を考えていますか。

    個人情報にあたりますので、データについては高齢者様自身にも施設様にも同意をいただいた上で収集させていただき、現在はシステムのバージョンアップということに活用することしか考えておりませんが、たくさんデータが集まればもちろんその“ビッグデータ”から引き出せる新たなサービスなどはあると考えています。
    収集するデータについては、訓練用ゲームの結果だけでなく、全ての操作ログも収集できますので、そこから何か抽出できるのではないかと考えています。

     
    Q.介護施設の方へ認知していただくためには、今後どのような仕組みが必要になると思われますか。

    現在介護医療現場には弊社の複合機あるいはプラズマクラスターイオン発生機、こういったものを多数導入頂いています。また、感染拡大防止対策を支援するという観点から、顔認証+自動検温システムやフェイスシールドといったニューノーマル商品、遠隔対応ソリューション等の新規ソリューションも進めております。今後は「頭の健康管理サービス」はもちろんのこと、こうした個々の介護事業向け商材を群として、シャープがワンストップで提供できるようにしていきたいと考えております。

     

    Q.今後の見通しや注力していきたいポイントを教えてください。

    今でもかなり意識していますが、やはり、科学的根拠に基づいた介護に寄与する方向に向かって、施設の方々がご苦労なさらずにそれを実現することに注力していきたいと思っています。
    せっかくご協力いただいた施設様や、導入してこれをお使い頂いている方々がこれを使ったがために労力がかかっている、というのであればそれは問題です。意識しなくても科学的な根拠、エビデンスが取れていくようにしていきたい。そのために、なるべくICTを利用する際の障壁を取り払っていけるような取り組みができたら、と考えています。


    介護の世界というのは、労務的にもコスト的にもなかなか課題が多いとお聞きしています。その中で、介護スタッフは一生懸命頑張っておられます。そこで何が起こるかというと、スタッフ一人ひとりにノウハウが溜まっていくのですね。
    そしてスタッフが辞めると、ノウハウも一緒に失われてしまう。ですので、“介護の平準化”というのが必要だと思っており、そこをサポートできるのが「頭の健康管理サービス」であると考えています。誰がやっても一定の質で、ご苦労なさらずに機能訓練ができる。そして、介護スタッフには、もっと利用者との触れ合いに時間を割いて欲しいと思っています。
    高齢者と関わる時にこのサービスがあれば、もっと人と人とが寄り添う、いわゆる人間にしかできないことがやれるのではないかなと思っているので、そういう方向に持って行きたいですね。

     


    シャープ株式会社 https://corporate.jp.sharp/
    頭の健康管理サービス https://jp.sharp/business/solution/atama-kenko/

     


     

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    1969年創業ホビージャパンの新たなチャレンジ
    シニア向け「大人のぬり絵集」

    経営管理部 広報宣伝課 課長 岡本恭範 氏
    刀剣画報編集部 編集長 笹岡政宏 氏
    刀剣画報編集部 井原凛大 氏

     

    1969年にミニカーの輸入・販売からスタートした株式会社ホビージャパン。趣味・嗜好性が高いいわゆるマニアックな書籍を多く出版されていますが、シニア向け「大人のぬり絵集」にスポットを当て、出版の経緯、ご苦労された話、ターゲットへリーチさせるための工夫から今後のアプローチまで、幅広くお話をお伺いしました。

    2020年12月取材

    ホビージャパン16

     


    Q. 「大人のぬり絵集」というスタート時からシニア層を狙おうとしたキッカケは何かあったのでしょうか?

    当社では従来から「刀剣画報」という刀剣に関する雑誌、そしてその前には「歴史探訪」という歴史の雑誌をリリースしていました。歴史の雑誌はメインの読者はご想像の通りシニア層で、特に50歳前後がコアとなります。
    このように、弊社の出版物は70代以上も含めそもそもシニア層の読者層が多いという実情があり、この層へ改めてアクションしたという、いわば自然な流れの中でのことだったと思います。

    とはいえ当時、社内的には「歴史」をテーマにやっていこうという事自体割と新しいチャレンジでした。
    本来は模型関係の商材や出版物が主であったのですが、この辺りのターゲット層も徐々に高齢化し、50歳前後の方々が中心になっていました。つまり、シニアの入口くらいといったところでしょうか。
    そんな背景もあってもう一歩先、つまり更に年齢が高い層にもリーチするようなチャレンジを考えていました。

    ホビージャパン1

     
    Q. もう1つ上の層を狙っていくためにどのようなことを考えましたか?

    まずは既存の顧客層の特性から考えました。そもそもホビージャパン社が取り扱う商材には、年齢を超えて共有できるオタク的な要素(興味を持つ分野)が含まれることが多くあります。

    例えばガンダムであれば「ミリタリー」や「戦争」というキーワードがあがってきますし、一方で「歴史」とか「史実」といった要素を好む層でもあります。
    そんな繋がりから「歴史」関連の出版物へと繋がっていったと思います。

    ですので見方を変えれば、シニアを狙うというより「趣味を持ちながら歳を取っていく方々」がどうやって暮らして行くかという事に寄り添うという考えが先に立っていたのだと思います。

     

    Q. 実際のところ「大人のぬり絵集」に目を向ける方は、どの世代でしょうか?

    これまでお話した層(50~60代)よりは、もう少し上ですね。最初は、葛飾北斎とか趣味性・歴史性の強い絵からスタートしました。ぬり絵としてはちょっと難易度が高いといえます。

    ここからもっと簡単に楽しめるもの、緻密なものよりも描く喜びが感じられるものという方向にシフトしていきました。
    その結果ターゲットが拡がり、70代以上の方々にもご興味を持っていただけるようになりました。

    結果的に、「大人のぬり絵」が当社内で一番高年齢向けのコンテンツになったという次第です。

    ホビージャパン7

     

    Q.趣味・嗜好性が強いユーザー層からシニアにまでターゲットを拡げていく試みについては社内では何か議論はありましたか?

    社内には従来から「面白そうなものはやってみよう」という意識が根付いていました。新しいことには寛容な社風、興味のあるものに取り組む社風ですね。ですので、新しいチャレンジには、それがシニアターゲットであったとしても肯定的ではありました。

    確かに弊社は趣味・嗜好性が高い、いわゆるマニアックな商品が多いのは事実ですが、別にマニアックじゃなくても良いんです。マニアックであることがマストではありません。ニーズがあるものには素直にチャレンジしますし、更に言うならば「ホビージャパン」という社名の通り「好きなコトをやろう」というマインドです。

     

    Q.創業されて半世紀以上(1969年創業)の歴史をお持ちですが、本当に自由な社風なのですね。

    確かに歴史は長いですね。しかし、「ホビージャパン」という“入れ物”は変わらないのですが、時代に合わせてその“中身”、つまりリリースする商品は柔軟に変わってきています。

    最初はミニカーの輸入・販売から始まった会社なのですが、その後会報誌をリリースし、それが月刊の模型誌になりました。模型誌についても、当初から「ガンダム」を扱っていた訳ではなく、ミニカーや車両模型がコンテンツの中心でした。
    1980年代になってミリタリー系の模型になりキャラクター模型やフィギュアを扱うように変化を経てきております。


    ホビージャパン3


    Q. 「大人のぬり絵」という新しい取り組みでご苦労された点は?

    やった事がないので当初は手探り状態でした。リリースしては読者の反応を見るの繰り返し、つまりはトライ&エラーですね。

    反応を見るのも苦労しました。若い世代をターゲットにした商材であればネット、特にSNSなどで反応を見る事ができるのですが、基本的にシニアマーケットについては(ターゲットがオフラインであるため)その手段が有効ではりません。
    ですので、そこはマーケターの勘に頼らざるを得ません。つまりは”主観的な推察”とでもいうのでしょうか。

    シニアの方については、その行動を可視化するのが難しいといえます。あまり家から出ず、我々にとってはその行動がブラインドの状態であることが多いわけです。ですので観察すること自体が困難です。

    例えば、本屋に行って店頭をウォッチしたりもするのですが、そこではどんな方が購入してくれているのかから始まります。そして仮に若い方が商品を購入してくださった場合、それはプレゼント需要なのか?移動手段がないシニアに頼まれて代理で買いに来たのか?などを想像します。更には、商品についてどこで情報を得たのか?という点も、勘を働かせる必要があります。この勘を養うためには、結局は経験が重要になると思います。当社で言えば、「何が受けるか?」を考えながら長年に渡り出版物や商品をリリースしてきました。この経験の中で自ずと勘が養われてきたのだと思います。

    違いがあるとすれば、これまでは担当者自身が「やりたい」、「作りたい」と考えていたことを実現する「等身大マーケティング」を行っていたのに対し、これからはターゲット(シニア層)の生活様式や行動形態を類推してモノ作りをする「論理マーケティング」へとシフトしていく、それだけのことです。

    SNSなどを分析して世にどんな需要があるかを分析することも結構ですが、自分とは違う誰かの需要に気づくためには、自身の勘を最大限に働かせて見えない何かを「狙い撃ちする」ような感覚も必要だと思います。

     

    Q. 商品の存在をターゲットにリーチさせるための工夫などはありますか?

    そこが一番の悩みどころですね。シニアの皆さんは、年を追うごとに(我々が生活する)世間からの距離が徐々に遠くなる傾向にあります。ネットはもちろん、従来メディアも必ずしも有効であるとは限りません。
    そうなるとやはり工夫すべきは、インストアでのポジションということでしょうか。
    書店の棚に並んでいる時の存在感を感じてもらえる、選択肢の中に入れてもらえるようにどうするか…という事になろうかと思います。

    ホビージャパン5

     
    Q. 今後のラインナップやアプローチで、こんな事を考えているというものがおありでしょうか?

    現在の売れ筋ある「花」シリーズについては引き続き力を入れていきたいと考えています。

    ホビージャパン4

    また現行の「大人のぬり絵」シリーズ全体についてもこれまでかなり精査を繰り返してきて、ある意味完成に近づいてきているので、更に一歩進んだ形にもチャレンジしてみたいと思います。

    例えば「ぬり絵+パズル」で「脳トレ」のようなものを作るとか、ぬり絵をベースにそこにもうひとつの要素を付け足して発展させていきたいですね。

     



    株式会社ホビージャパン http://hobbyjapan.co.jp/

     


     

     

     
     
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    「ホップで希望を創り出す」
    熟成ホップで人々をもっと健康に!
    注目のキリンホールディングス株式会社の社内ベンチャー

    CEO 金子裕司 氏

     

    ビールが好きな方なら誰しも「ホップ」というものをご存知ではないだろうか。実はホップというものは10世紀以上前からヨーロッパで薬用ハーブとして利用されており、現代ではその力から健康素材としての活用もされている。

    今回はキリンホールディングス株式会社(以下キリン)の社内ベンチャーとして、「熟成ホップ」を活用した健康サポート製品を開発・販売しているINHOP株式会社(以下INHOP)のCEO,金子裕司氏に「いつまでもブレない自分で人生を送りたい」と願うシニアの方々向けの「ブレメンテ」という商品についてお話しを伺った。

     

    金子さん

    2021年 1月取材


    Q 熟成ホップは認知機能改善効果があるという観点から商品の開発を行ったとキリンの記事で拝見しましたが(※)、どのように発見されたのか、開発に至る背景等お聞かせください。

    ビールに不可欠なホップですが、ビールに使われ始める前より、健康機能がある植物であることが歴史的に知られています。ホップは伝統的なハーブでもあるのです。しかし、ホップの苦味は食品としてはビール以外の転用が難しく、様々な食品に展開できるように、どうにか健康機能を維持したまま苦味のみを抑えられないか、と研究を重ねて出来上がったのが「熟成ホップ」です。熟成(酸化)したホップは苦味が穏やかになる、という醸造学の知見を応用して開発しました。

    (※)参考URL https://www.kirin.co.jp/company/rd/result/closeup/09.html

    塾生ホップエキス

    熟成ホップエキス

     

    Q シニアマーケットに対する考え方、参入される際にターゲティングや売り出し方など考慮されたポイントがあればお聞かせください。

    まずは弊社の企業理念の話からになりますが、弊社は「ホップで希望を創りだす」という理念を掲げています。古くから生活を支えてきたハーブであるホップに、現代サイエンスを掛け合わせることで新しい可能性を創り出せるのではないか。そして未来に向かう子供たちの「希望」や、日本を担うビジネスパーソンの「希望」や、「人生100年時代を楽しく生きたい」という大人の「希望」に繋げていきたいと考えています。

    その中で「人生100年時代」に対して、年齢を重ねても自分らしさを失いたくない、いつまでも生き生きと仕事をしたい、等のニーズが顕在化してきています。そこに対して、我々もお役に立てるのではないかと考え、「熟成ホップ」をシニア向けに展開していこうと決めました。マーケットが広がっているからという面もあるのですが、マーケットがあるというよりはお客様のお悩みに対する私たちの回答を提示していきたいという形での展開です。

    弊社からリリースした最初の商品は、受験生をサポートするために開発した「受験力」という製品で、その次の製品が「いつまでもブレない自分で人生を送りたい」と願うシニアの方々向け「ブレメンテ」になります。

     

    Q 現在シニアマーケティングの実施に向けて声を聴くということをしていると思いますが、いまどのようなリアクションが集まっていますか?

    まだ集まっているお声は少ないですが、「飲み始めてしばらくしたら、毎日が軽やかになった気がする。」、「長時間の打ち合わせが続いた日など、家に帰ってからブレメンテを飲んで、次の日に影響を残さないようにしています。おかげでスッキリした毎日を送れています。」等の声をいただいています。

    おじちゃんとブレメンテ

    ブレメンテ 飲用シーンイメージ

     

    Q ブレメンテを販売するにあたっての工夫点はありますか?

    お客様の反応を見ながらコミュニケーションや商品をブラッシュアップしていこうと考えました。それを実現するために「ブレメンテ」の場合は自社サイトではなく、「makuake」というクラウドファンディングでの販売から開始しました。商品に対してどのような人から興味を持たれるのか、どのような声が集まるのかを検証し、その後自社サイトでの販売を開始しました。

    makuake

    クラウドファンディング「makuake」の商品ページ

     

    Q クラウドファンディングを利用されたという事は非常に興味深いのですが、どんな目的で資金調達をされたのでしょうか?

    資金調達の目的ではありません。クラウドファンディングでよくある「商品製造前に販売し資金を集める」ではなく、商品を製造した上の販売です。新商品に対する感度が高い方が集まるクラウドファンドというプラットフォームを利用することで、この商品にどのような人が興味を持つのか、どのような声が集まるのかを検証するのと同時に、商品認知を図ることが目的でした。

    実際に利用してみて、コミュニケーションについては改善の余地があることがわかったので、自社サイトでの販売では改良しています。

     

    Q コロナ禍でこれまでの取り組みが活きた事例はございますか?

    設立が2019年で、商品の販売開始が2020年7月なので、コロナの影響を比較評価できる状況にはありません。正にコロナ禍での販売開始であるため、活きた事例があるというよりはゼロベースで試行錯誤しながらの活動でした。

     

    Q それでは、コロナ禍で売り出すにあたってなにか変更したことなどはありましたか?

    元々実店舗での販売と自社サイトを組み合わせた販売を計画していましたが、自社サイト主体の販売戦略に切り替えました。

    ブレメンテ

    ブレメンテ 商品イメージ

     

     

    Q ネットでのコミュニケーション、ネットを通じたシニアマーケットとの親和性はどうお感じでしょうか?

    まだ実績がないので大きなことは言えないですが、自分たちがアプローチしたいターゲット次第では、ネット主体で取り組むことに問題はないと考えています。シニアの方のネット利用率、スマホ保有率も年々増加していますし、実際にクラウドファンディングや自社サイトを介してシニアの方も繋がっています。私たちは、アクティブシニアは勿論、50代ビジネスマンなどネットとの繋がりの多い方々へのリーチを積極的に進めていき、お客様の声に寄り添ったビジネスを展開していければと思っています。

     

    Q 今後のシニアに対するお取り組み予定は何かありますか?

    まずはブレメンテの販売を通じて、お客様に寄り添いながら、製品をブラッシュアップすることを考えております。規模が小さくてもお悩みを持ったお客様方へ深くアプローチをしていきたいです。

    また、「ブレメンテ」のような商品単体ではなく、運動や睡眠など他の生活習慣とも連動した無理なく継続いただける仕組みについても考えていこうと思っております。

     


     

    INHOP株式会社 https://inhop.co.jp/

    自社通販サイト https://inhop.co.jp/products/

     


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    シニア世代の「休眠美容師」を
    積極的に採用し実績を伸ばす
    メンテナンス専門の美容室「チョキペタ」

    株式会社C&P 代表取締役社長 置塩 圭太氏

     

    カット&カラー専門店「ChokiPeta(チョキペタ)」は関東と関西で56店舗(2019年7月現在)を展開する美容室です。主にメンテナンスカット(大きくヘアデザインを変えるのではなく、今のヘアスタイルをキレイに維持するために伸びた部分だけ1~2cm程カットすること)や白髪染めの需要に特化しているのがこのチョキペタですが、顧客層のみならず従業員である美容師にもシニア世代が多いことが特徴的です。

    今回は、チョキペタを展開する株式会社C&Pの代表取締役社長・置塩圭太氏に事業の概要からシニア世代とのかかわりについてまで、お話をお伺いしました。

     

    Top

    2019年9月取材 


    Q. チョキペタという美容室の始まりと、この業態を始めるに至った経緯などを教えてください。

    2011年7月、系列会社(株式会社C&Pも所属するアルテグループのグループ企業)である株式会社スタイルデザイナーの一事業として始めました。
    当時は、いわゆる1,000円カットなどのカット専門店やカラー専門店が出店し始めていた頃でした。しかし、カットとカラー両方をやっている専門店というものはまだ存在しない時代でもありました。

    ですから「ほんの少し髪を切り、そのついでに根元だけ少し染めたい」という人は、フルメニューのあるデザインサロンへ行かねばならない。仮にリーズナブルな価格で済まそうと思ったら「カット専門店」と「カラー専門店」の二つに行かなければなりませんでした。

    そこで、白髪染めのカラーリングに中心を置きつつ、メンテナンスカットも同一店舗でできるような「ワンストップサービス」を提供しようと思い立ったのが、事業を開始したきっかけとなります。

     

    ダイエー成増店

    シンプルで落ち着きがあるデザインが特徴のチョキペタ店内(写真は東京・ダイエー成増店)

     

    Q. 二つのサービスを一つにして提供しようという着想が始まりということですね。この二つを組み合わせようという着想は、どのようにして生まれたのでしょうか。

    それは実はたまたまのことなのです。当時、創業者の吉原(アルテグループの創業者であり、現・株式会社アルテサロンホールディングスの取締役会長の吉原直樹氏)が、自社のFC加盟店の隣にカラー専門店が出店しているのを見つけました。その加盟店はフルメニューを提供しているサロンでしたが、隣のカラーだけのお店も十分繁盛しており、言わば共存関係にありました。

    つまり、「隣にカラーもカットもできるサロンがあってもカラー専門店のビジネスが成り立つのならば、メンテナンスカットとカラーだけを組み合わせたリーズナブルなサロンも成立するのではないか?」と発想したのです。

     

    Q. ブランド名の「チョキペタ」が大変ユニークでキャッチーなのですが、カットの「チョキ」と白髪染めの「ペタ」が由来でしょうか。

    これも創業者の吉原のアイデアですね。「チョキチョキしてペタペタする」、そんな単純なイメージ想起に由来しています。チョキペタが株式会社C&Pとして事業を独立したのは2019年1月ですが、ビジネスモデル自体はスタイルデザイナーの一事業部として店舗を出した8年前に開始しており、当時からこの店名で展開しております。

     

    Q. 白髪染めを中心においた事業展開というお言葉がありました。顧客としてのターゲットはシニア世代でしょうか。

    そうですね。創業当時から、白髪染めにフォーカスしており、ヘアデザインを変えず維持したい、という方をターゲットと考えています。かつ、あくまでもリーズナブルな価格で、短時間でサービスを提供することに特化しています。このサービス形態がシニア世代の方のニーズにマッチしていると思います。

    白髪が出て、それを染めている世代の方々の多くは、ご自分の髪形がある程度決まっている人が多いですよね。ご自身が持つ理想のイメージやスタイルは変わらない。芸能人で言えば、和田アキ子さんなどを想像していただければわかりやすいかと思います。だから、「ヘアカタログを見ながらデザインを頻繁に変える」ようなお客様はあまりいらっしゃいません。毎月毛先を揃えたり少しだけ根元染めをしたりするなど、いつもきれいな状態にして若々しく保ちたいというご注文が大半を占めます。

     

    他の理美容室とは一線を画すメンテナンスサロン・チョキペタの6つの特徴

    他の理美容室とは一線を画すメンテナンスサロン・チョキペタの6つの特徴

     

    Q. そんなシニアの顧客層に対応するための独自の店舗運営をしているとお聞きしていますが、お聞かせ願えますか。

    まずは、従業員の年齢層が高いということですね。現在、美容師の平均年齢は28~29歳くらいなのですが、シニア世代のお客様というのはこういう若い美容師が中心の美容室には入りづらく感じることがあるのです。いわゆるジェネレーションギャップというものです。

    ですので、シニア世代の皆様に気軽にお越しいただき心地よく過ごしていただける美容室を展開するためには、働く美容師も同世代であることが理想です。
    そういった経緯から、チョキペタでは「休眠美容師」を中心とした比較的年齢の高い美容師を採用しています。従業員の年齢層としては40代が最も多く、最高齢者についてはつい先日記録を更新したのですが69歳男性という方にも働いてもらっています。

    そういう意味でいうと「シニアの美容師が働きやすい職場環境を作る」というのも、私たちの重要な使命です。

     

    Q. 「休眠美容師」という言葉を初めて聞きました。どのような背景で休眠美容師を採用しておられるのでしょうか。

    まず大前提として新卒の美容師が採用しづらいという求人環境があります。大きなチェーンのサロンは求人を専門におこなう部隊が新卒美容師の採用に動くことができますが、小さな美容室ではそうはいきません。

    一方で、美容師という仕事は国家資格が必要です。その国家資格を保有した貴重な働き手が、結婚や出産、その他の事情を経て現在では仕事をしていない方が80万人ほどいます。このような方々を「休眠美容師」と呼んでいます。

    もちろん、しばらく現場を離れていた休眠美容師が職場に復帰するのは簡単なことではありません。技術もトレンドも現役だった頃とは大きく変わっています。しかし、メンテナンスカットと白髪染めという限定したサービスであれば対応が可能です。
    そんな美容師の負担を軽減するため、タッチパネル式の受付機と券売機、そしてオートシャンプーなども取り入れ、業務をスリム化・自動化という工夫をしています。

     

    チョキペタの「店内ロボット化の推進」を象徴する存在であるオートシャンプーと券売機

    チョキペタの「店内ロボット化の推進」を象徴する存在であるオートシャンプーと券売機

     

    ここ数年で、やっとこの業界内でも産休の取得やパート・アルバイトの採用、そして短時間勤務というのが少しずつ受け入れられるようになってきましたが、10年ほど前まではフルタイムで働くことが当然のことという状況でした。

    その中で当社は、創業当初から週に数回程度の出勤を希望する人や、パートで働きたい、扶養内で働きたいという要望を持つ人を積極的に採用してきました。これは画期的なことだったと思います。

    今後も当社は、こういった休眠美容師も積極的に採用し働いてもらうと共に、その中の一部の方を正社員として迎え入れるなど、美容師としてのキャリアの選択肢を提供していきます。そして、美容師の皆さんそれぞれに自身の仕事に誇りをもちつつ、そして永く仕事を続けてもらいたいと考えています。

     

    Q. 休眠美容師を職場に迎えるのは簡単なことではないのでしょうか?

    トータルサービスを提供するようなサロンが休眠美容師を雇うのは難しいと思います。美容の世界においては、技術やトレンドは常に進化し変化しています。
    例えばヘアデザインには流行がありますし、カラーも複雑になってきています。また縮毛矯正(ストレートパーマ)や特殊なパーマなど技術面も常に変化しています。そのために、現場から長い間離れていた休眠美容師にとっては、復帰したくても二の足を踏んでしまうのが現実です。

    ところが、白髪染めの技法はほとんど変わっていないのです。チョキペタならメニューはスリム化してカットもメンテナンスだけ、カラーも白髪染めだけというのがサービスの中心です。持っている技術をそのまま生かしつつ活躍していただくことができます。

     

    写真は約40年のブランクを経て現場復帰したチョキペタ白根店の浦田なお美さん (チョキペタが実施するカット講習にて)

    写真は約40年のブランクを経て現場復帰したチョキペタ白根店の浦田なお美さん
    (チョキペタが実施するカット講習にて)

     

    Q. 顧客としても求人の対象としてもシニア世代という業態を通じて得た「気づき」があればお聞かせください。

    まず、シニアの従業員、すなわち休眠美容師の採用について言えば、オペレーションや教育の面がしっかりしていないと成立しないということです。事業の展開と並行して、内部のシステム構築や改善にも常に着手しています。

    次に、シニアのお客様層について感じていることは、そのリピーターの多さです。髪は1カ月で1センチほど伸びます。ですので、フルサービスのサロンの価格で定期的にカラーをメンテナンスすればその経済的負担は決して小さくはありません。結果として白髪染めは2~3カ月に一度の割合になってしまいます。

    その点、チョキペタであればリーズナブルな価格で白髪染めを提供していますので、1カ月に一度通っていただけます。年間のコストで比較してみると、チョキペタで毎月ちょっとずつメンテナンスすることと、フルサービスのサロンで数カ月おきに染めることとでは大差はありません。そのようなメリットにお気づきのお客様が、繰り返しでご利用くださっていると思います。

     

    Q. チョキペタの店舗展開は、立地面においても特徴的ですね。

    はい。チョキペタは通常の美容室のような予約の必要がなく、行きたいときに普段着で気軽に立ち寄り、白髪染めやメンテナンスカットをしていただけることが特徴のひとつです。ですので、スーパーマーケットやショッピングセンターの中など、「お買い物のついでに髪をメンテナンス」という導線が見込める場所に意識的に出店しています。

    更に、ショッピングセンターやモール内の店舗は、生鮮食品を並べている場所の近くなどに積極的に出店しています。「気取らない身近な美容室」であり続けたいというのがチョキペタの願いです。

     

    ショッピングセンターの中でも、意識的に買い物導線上に店舗を構えるチョキペタ(写真は埼玉・ヤオコー南桜井店)

    ショッピングセンターの中でも、意識的に買い物導線上に店舗を構えるチョキペタ (写真は埼玉・ヤオコー南桜井店)

     

     

    店舗によっては行列ができていることもありますが、順番待ちのための券が発券される機械が導入されています。自分の順番を確認して先に買い物を済ませ、いい頃合いに店舗に戻ってカットすることができます。また、ご近所にお住まいならば順番を確認した上で、一旦自宅に戻ってから再度ご来店いただく方もいらっしゃいます。

     

    Q. では、現在の事業活動の中で課題と考えていることはありますか?

    店舗数を増やすことも大事ですし、同時に重要視しているのは中身の充実です。新規出店を行うためには、店舗の運営を担う管理職の人材が必要になりますが、その候補は豊富にいるわけではありません。従って新規出店に当たっては、現場スタッフの中から新規店舗の中心的存在となって運営を行えるような人材を見出し、そして育成することが課題になります。

    そのためには教育が重要です。教育に力を入れて人材育成を促進した上で店舗数を増やしていく、その両輪の足並みがそろっている必要があります。

     

    Q. 課題と考えておられる人材育成は、どのように取り組んでおられますか。

    新規採用の美容師の方への教育研修のあり方については様々な工夫をしています。休眠美容師は現場から離れていた期間が長く、高齢の方もいらっしゃいます。ですので、現場での勘を取り戻す、もしくは各種機器の操作方法を理解するまでの時間には差異があります。

    例えば、機器類の使用法などをマスターするための導入研修は、以前は一人に対して3時間かかっていました。そこでテキストや口頭で伝えるのみでなく、写真や動画を活用したオンデマンド教材を社員向けに提供するようにしました。これなら繰り返し見ることで復習も、反復学習も可能です。これらの動画は、解説やテロップを入れたりして社員が作成しています。

    また、各店舗で優れた技術などがあれば、その動画を作成して横展開するという取り組みも行っています。このように技術教育コンテンツは本部のみで作成するだけでなく、現場からも積極的に提出してもらっています。このことによって現場スタッフのモチベーションが高まりますし、自分の職場やチョキペタをよくしたいというマインド醸成にも繋がっているようです。

     

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    チョキペタでは教育研修の一環として動画を活用したオンデマンド教材の開発にチカラを入れている (写真は「オートシャンプー使用マニュアル」(左)と「トラブル対応マニュアル」(右)の動画の一部)

     

    さらに、店長やエリアマネージャーのような管理職も外部から採用するのではなく、現場スタッフからキャリアアップする方式で登用するようにしています。ちゃんと現場経験のあるスタッフが管理職になって、今度はスタッフとともに現場を良くしていこうとする気運づくりを大切にしたいからです。結果として60歳を過ぎた方が3店舗の管理を担当する事例もあります。

    本部の人間が常に現場に出て店舗をケアしていては、いつまで経っても自主性のある店舗運営に繋がりません。現場で起こる問題は、あくまで現場にいる管理職が解決できるような組織作りができるようにすべきですし、そういう組織でないと人材も伸びないと考えています。

    一方で本部スタッフはエリアマネージャークラスとミーティングを通じて管理者人材の育成を行うと共に、店舗管理者を集めたミーティングも積極的に実施して積極的な意思疎通も図っています。

     

    Q. 求人はどのように行ってますか?

    主に求人サイトや求人誌を利用しています。しかしながら、以前は休眠美容師層にチョキペタが認知されていない状況でした。

    そこで知名度を上げるために、昨年(2018年)、テレビCMを打ったことがあります。CM素材は求人の要素も含まれていますが、あくまでお客様向けの内容です。またチョキペタのPRとしてテレビ番組にも出演しています。その際、若手営業社員のほかに60歳代の従業員が出演し、シニア世代の方が実際に働いている姿を視覚的に訴求しました。これらの施策の効果もあってか求人への応募数はこの半年で倍増しています。

     

    Q. 職場環境づくりにおいても様々の工夫をなさっているとお聞きしました。

    従業員の多くは元休眠美容師であって、小さいお子さんや高齢の親御さんがご自宅におられるような環境です。そのため、シフト調整を細やかに行い、週1回の方もおられますし、極端な例では月1回もいます。それでもチョキペタで働きたいと思ってくださるのですから会社としてはこの思いを大切にしたい。
    ですから各スタッフの将来的に希望する勤務形態なども相談しつつ、それぞれの従業員の生活パターンに合わせてシフトを組むように心がけています。

    また、チョキペタは「ホワイトカラー宣言」をしました。これは美容室の業界では先駆的と思います。従業員には有給休暇を積極的に取得してもらっています。働く人のキモチを第一に考えて、美容業界を変えていきたいと考えています。

     

    Q. 今後、FC展開などは検討されていませんか?

    フランチャイズ経営は今のところは考えていません。理由としては、私どもは企業としてまだFC展開の域には達していないと考えているからです。
    前述いたしましたが、まずは足元の直営店の経営と技術教育をしっかり固めたいと考えております。現在、若年層の人口が減少していく流れの中で、美容業界全体は完全なるオーバーストア状態(店舗が過剰な状態)にあります。

     

    理美容市場の市場規模はここ数年微減傾向にある(矢野経済研究所調査データより)

    理美容市場の市場規模はここ数年微減傾向にある(矢野経済研究所調査データより)

     

    一方で「シニアに特化した美容」という業態の存在について世の中の多くの人が気づいていない気がします。少子高齢社会を迎えた我が国において、私たちは重要な役割を担っているはずです。従ってこの業態がもっと広がっていくべきですし、実際に伸長していくことでしょう。

     

    理美容市場が伸び悩む一方で、創業以降確実に業績を伸ばすチョキペタ (2019年分については計画値)

    理美容市場が伸び悩む一方で、創業以降確実に業績を伸ばすチョキペタ
    (2019年分については計画値)

     

    そのためにも、当社はフロントランナーとして開拓者の役割を担い更に直営店舗を増やして、世の中から認知を得ていくことが使命だと思います。そして、その後、私たちに追随する人たちもどんどん出てきて欲しいと思います。

     

    Q. 最後に、今後の活動についてお考えをお聞かせください。

    美容業界内においては、まだ注目を集めるところまで至っていないこの業態ではありますが、前述したようにショッピングセンターやモールからはチョキペタの取り組みに親和性を感じて頂いていますし、集客力の相乗効果なども期待されています。今後は更に他業種との協業も検討して、更なる新しい取り組みへ挑戦していきます。

    また、高齢者の方はとかく外出する機会が減り家に籠りがちです。月に一回、リーズナブルな価格できれいにしてもらえる美容室に通うことでシニア世代の外出を促せば、同世代の方や店の人と交流を持つこともできるようになります。チョキペタにシニア世代が集まってきていただくことで、シニア世代の健康維持にも寄与できるのではないか。そうすれば、チョキペタ流の社会貢献になると考えています。

    「人生をいつまでも美しくありたいと考えている人たちには、ぜひチョキペタにお越しいただきたい」そんな思いで、今後も事業に取り組んで参ります。

     

     



    カット&カラー チョキペタ ChokiPeta 公式ホームページ
    http://www.chokipeta.com/

     


    <<<第29回 国際メディカルタイチ協会

     

     
     
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    多様な商品ときめ細やかなラインナップで
    顧客のニーズに呼応
    我が国のシニアマーケティングの先駆者でもある
    通販事業のリーディングカンパニー

    企画本部 第1企画室 室長 田村大介 氏
    マーケティング本部 マーケティング室 室長代理 高橋頼将 氏

     

    創業地である埼玉県上尾市に本社を置く株式会社ベルーナ(以下「ベルーナ」)は、主婦層をメインターゲットとして衣料品や生活雑貨、家具類から健康食品も含め幅広いジャンルで通信販売事業を展開するリーディングカンパニーですが、視点を変えれば国内でいち早くシニアマーケティングに着手し成功を収めた企業でもあります。
    今回はこのベルーナの本社を訪問し、起業時から続く総合通販事業の様々な取り組みについて、企画本部・第1企画室・室長の田村大介氏とマーケティング本部・マーケティング室・室長代理の高橋頼将氏にお話をお伺いしました。

     

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    2019年10月取材 


    Q. まずは現在の会員様のデモグラフィからお伺いできますでしょうか。

    まず当社の商品をご利用いただいているお客様の属性についてご紹介したいと思います。

    弊社のお客様は8割が女性で占められており、その中でも60代の方々がボリュームゾーンです。
    (会員登録をしてくださっている)お客様は、日本の60代女性の約27%に及ぶことがわかっています。
    更に昨今は70代の会員様が増加傾向にあり、60代と拮抗してきています。
    それに対して20代から40代の世代はまだまだ少ないので、このゾーンを伸長させていくことも課題の一つですね。

     

    会員構成比(男女別)

    会員構成比(男女別)

    会員構成比(人口ピラミッドとの比較・女性のみ・単位:1,000人) ※総務省統計局データを元にベルーナにて作成

    会員構成比(人口ピラミッドとの比較・女性のみ・単位:1,000人)
    ※総務省統計局データを元にベルーナにて作成

     
    Q. 地域別の特徴はありますでしょうか?

    統計局から発行されている人口データと比較して、弊社会員の地域分布の構成比には、それほど大きな違いはないと思います。
    しかし、あえて特徴を挙げるとするならば、北海道・東北地方では会員の比率が高いと言えますね。
    これらの地域には、お住まいの方の生活圏にあまりお店が多くなく、いわゆる「買い物難民」の方も多く存在していると言えるでしょう。その結果、通信販売をご利用いただいているのではないかと分析しています。

     

    会員構成比(地域別)

    会員構成比(地域別)

     
    Q. ベルーナさんには多様なカタログがありますが、それぞれの媒体のブランド展開についてお聞かせください。

    まず、ファッションブランドについてご説明申し上げますが、ミセス系カタログである「BELLUNA(ベルーナ)」をはじめ、「ルフラン」、「Ranan(ラナン)」、「GeeRA(ジーラ)」といった年代別のカタログをご用意しています。また「BELLUNA」と「Ranan」は店舗も展開しています。

    年代別にブランドを整理すると、20~40代の「GeeRA」、30~50代の「Ranan」、40〜60代の「BELLUNA」、50〜70代の「ルフラン」をそれぞれ割り当てています。
    しかし、これはあくまで現状のブランドラインナップに過ぎず、ことファッションに関しては、ブランドを年齢に固定するような一筋縄の施策ではニーズに適合しきれません。
    ブランドもお客様とともに年齢を重ねていきますので、ブランドそのものがお客様のニーズに合わせて変わっていく必要もあります。「新陳代謝に対応したブランディング」とも表現できますね。

     

    年代別にターゲティングされているベルーナ内の各種ブランド(ベルーナオフィシャルサイトより)

    年代別にターゲティングされているベルーナ内の各種ブランド(ベルーナオフィシャルサイトより)

     

    さらに、各世代において(そのブランドでは呼応しきれない)新しいニーズが発生することもあります。
    その場合は、ニーズにフィットした新ブランドを臨機応変に立ち上げ、育成していくような展開も必要でしょう。例えば、弊社が今年6月にローンチした若年層向けのオンラインモール「RyuRyumall」は、若年層のオンライン購入需要の高まりを背景にスタートした新事業です。

     

    若年層向けブランド「RyuRyumall」のトップページ

    若年層向けブランド「RyuRyumall」のトップページ

     

    Q. 時代的にECが主流になる中、シニアマーケットにおけるカタログ通販の強みとは何ですか?

    インターネット購入の特徴として顧客単価が低いことが挙げられます。ネット販売では競合も多く、品質や価格を比較してより安いものを購入されたり、あらかじめ決まっている欲しい商品だけ購入されたりするケースも多いため、単価が伸びにくい傾向があります。いわゆる「比較購買」「目的買い」ですね。

    対してカタログは、家の中でお客様がパラパラとページをめくってじっくり見るという、「1対1の時間」をプロデュースできます。付箋を付けて商品を見比べたり、色んな商品の購入を悩んだりするというような有機的な時間をご提供できることがカタログ販売の強みであり、ネット販売との差別化ポイントかと思います。

     

    Q. 昨今は御社でもネット通販の占める割合が大きくなっていると思いますが、そのことによる変化はありますか?

    インターネット時代以前の通販は、お客様の獲得手段として新聞の折り込みチラシが主流でした。
    新聞の購読者も若く、40代をターゲットの中心と捉えていた時代です。
    あれから20年が経ち、今では折り込みチラシを中心にご利用いただいているお客様は60代にシフトしています。このことがまさに「お客様とともにブランドが年齢を重ねてきた」という感覚にあたります。

    一方、現在40代のお客様は、嗜好も接触媒体も以前とは大きく変化しました。
    ご提供するブランドや商品はもちろん、活用するメディアも世代別に考慮する必要が出てきましたね。

     

    Q. 折り込みチラシの話が上がりましたが、昨今の広告媒体選定についてもう少し具体的に教えてください。

    ここ数年で新規獲得数に最も繋がっているのはインターネット広告で、その次が折り込みチラシです。
    広告活動全体の中でもこの2つの媒体が占める割合が最も大きいのですが、その他としては新聞への広告掲載も行っていますし、スーパーやドラッグストアに設置してあるフリーペーパーへも出稿しています。
    またテレビCMも行っていますが、こちらはイメージCMの他、インフォマーシャルなども利用しています。
    いずれにせよ、生活者にダイレクトにリーチ可能なメディアを中心にプランニングしているのが特徴的だと思います。

     

    Q. インターネット広告とシニアマーケティングの親和性について、どのような所感をお持ちですか?

    現時点では、インターネット広告はあくまで若年層をターゲットにしているのが実情です。
    65歳以上の層におけるネット販売購入利用は1割前後で、総合通販事業全体でもインターネットは2割程度です。ただし、若年層向けの「GeeRA」を切り離して考えると約半数のお客様にインターネットからご注文いただいています。また「RyuRyumall」を切り離してから、ベルーナの自社ECサイトでも少しずつですが変化の波は感じています。自社ECサイトの利用者は40~50代が中心で、一般的なイメージよりは高い年齢層と言えるでしょう。その利用者数は伸長傾向にあり、お客様に併せてユーザビリティを高めていくことで、今後さらに伸びていくと予想しています。

     

    Q. シニア層においては多くの既存顧客をお持ちですが、新規のお客様はいらっしゃいますか?

    シニア層の会員数増加に伴い、継続メディアからの新規顧客率は年々減速していますが、それでも新聞広告や折り込みチラシを実施すると、一定数の新規のお客様がいらっしゃいます。
    また、すでにベルーナのご利用経験があり、しばらくの間購入されていなかったという、いわゆる「休眠顧客」の方々が再び購入してくださるケースもあります。

    ご利用いただくきっかけは「たまたま」というお客様が意外と多いです。
    例えば、これまではご自身で近隣のお店に買いに出かけていた方が、「足が悪くなった」などの事情で通販を利用することになり、ベルーナというブランドの認知に加えて、偶然良い商品があったから利用したというケース。

    お客様の状況やニーズはタイミングにより変化しますので、常に様々なニーズを想定して準備し、必要なときに思い出される存在でありたいですね。

     

    Q. さきほど「買い物難民」という話題がありましたが、居住地域によらずお店に行くことが難しくなって通販を利用しているという顧客層は多くいらっしゃいますか?

    全体に対する比率は不明ですが、一定数はいらっしゃいます。
    ただ、完全に動けなくなった方よりも「以前と比べて出かけることが減ってきた」という方々が中心ですね。
    弊社の商品は、シニア向けであっても「オシャレを楽しみたい」というニーズに応えられるよう、ファッション性やトレンド感のあるラインナップを意識しています。ただし、最先端で奇抜なものではなく、ターゲットに合わせた程よい加減が重要ではないかと思います。

     

    カタログの実物を使ってわかりやすく説明くださる田村氏と高橋氏

    カタログの実物を使ってわかりやすく説明くださる田村氏と高橋氏


    Q. 御社ではシニアマーケティングを行うにあたって、シニアの属性をどのように分類していらっしゃいますか?

    弊社では、シニア内をさらにカテゴライズするという考え方は採用しておりません。社内のミーティングなどで「アクティブシニア」という言葉を使うことはありますが、本来、通販事業は、どなたにでも商品をお届けできることが特徴ですので、あえてアクティブシニアに特化する必要はありません。そのため商品企画も多岐に渡っており、あらゆる会員の皆様にご利用いただけることを目指しています。

    もちろんカタログごとの顧客のペルソナは設定していますが、顧客の身体的な自由度や快活度などを指標にした「アクティブシニア向け」、「非アクティブシニア向け」という分類はしていません。
    まずは徹底的に情報収集を行って商品を企画・開発し、売れればニーズがあったと判断してペルソナに反映していくイメージです。商品や結果を見ながらブランドやセグメント属性を固めていく感覚ですね。

     

    Q.売れ行きを見守る中で意外な売れ筋や印象的な反応はありましたか?

    最近で言えば、「アンパンマンのぬいぐるみ」を非常に多くご購入いただけたことですかね(笑)。
    当初、社内ではこの商品がそれほど売れるとは予想していませんでしたが、実際は「お孫さんへのプレゼント」という需要で予想外に売れました。
    やはりシニアのお客様の財布が緩むのはお孫さんの存在であると再確認した出来事でしたね。

    また、前述したとおり、お客様の男女比は2:8で女性が多いのですが、実は男性向けの商品も結構売れています。それも日常ユースの商品が中心です。
    これは女性(奥さん)が男性(旦那さん)のために購入する、代理購買にあたります。

     

    Q. シニアの顧客へ商品を提供するにあたって心がけていることがあれば教えてください。

    シニア層は商品を見る目が肥えていますので、ファッションと言ってもえど単純に「可愛い」「オシャレ」というだけの商品は選んでいただけません。例えばミセスファッションでは、ゆったりとしたアームホールや、胸元が開き過ぎないネックラインなど、シニアならではというお悩みを上手にカバーしてくれるデザインが好まれます。気を遣わず楽に着られて、疲れないアイテムは一層選ばれやすいですね。

    また、肌への刺激が少ない天然素材をはじめ、ピーリング対策生地や汗ジミカット機能など、素材の扱いやすさや機能を重視される方も多いです。さらに、サイズについては5Lまで揃えることを基本として、多いものでは10Lくらいまで扱うなど、巨大な物流倉庫を持つ通販だからこそ、店舗ではフォローしきれないような豊富なラインナップを実現できます。

     

    バリエーションの豊富さに圧倒的な強みを持つベルーナの通販事業

    バリエーションの豊富さに圧倒的な強みを持つベルーナの通販事業

     

    Q. 今後目指していく事業展開についてお考えをお聞かせください。

    大きくは3つあります。
    まず1つ目は、まだまだ開拓・拡大の余地のある60~70代向けのラインナップ強化と新規獲得に改めて取り組んでいきたいと考えています。そのためのメディアプランニングとして、テレビやラジオなどを積極的に活用し、できる限り多くのお客様と接触できるよう手段を拡げる準備をしています。
    昨今はとかくデジタルマーケティングに着目されがちで、40代以下はスマートフォンの使用によりテレビを見る機会が減っていますが、実は60代以上ではテレビの視聴量は減っていないのです。
    事実、ベルーナグループでは食品、化粧品、健康食品などを(テレビの)インフォマーシャルという形でプロモーションしており、お客様からの反応も良いと感じています。

     

    インフォマーシャル01_おせち

    インフォマーシャル02_ワイン

    インフォマーシャル03_日本酒

    インフォマーシャルのイメージ

     

    2つ目は、「ベルーナらしさ」の復活です。
    これまで、シニア層をターゲットとした市場において、情報が少ないながらも様々な分析を行い、商品展開にフィードバックして参りました。
    そうしてデータに基づく開発を続けてきた結果、次第に弊社の商品ラインナップが一般市場と変わらなくなってきてしまった面があり、弊社ならではの価値提供について再考しています。データを活用しながらも、よりリアルなニーズに呼応できるような商品企画が必要ですね。

    例えば、弊社のビジネスの元となった「頒布会型ビジネスモデル」の復活が挙げられます。
    頒布会というのは、会員の皆さんが毎月一定額をお支払いいただくことで月々商品をお届けするというシステムです。現在の「サブスク」に近いですね。
    お客様の中に「コレクションを好む」という趣向があることから生まれた仕組みですが、ただ購入するだけでなく「集める楽しさ」「選ぶ楽しさ」という付加価値を提供できるビジネスモデルです。

    3点目は、通信販売であることの優位性に着目したオリジナル商品展開です。
    例えば、加齢による軽い尿漏れに悩む男性は、これを解決してくれる商品を取り扱う店舗が少なかったり、商品があっても恥ずかしさから店舗で購入できなかったりする場合があります。しかし、店員さんとの対面を必要としない通信販売であれば、購入しやすいかもしれません。これからも時流に合わせて新しい挑戦をし続け、「ベルーナだけ」「今だけ」しか買えないような価値ある商品を提供できるよう努めてまいります。

     

    Q. 最後に、今後のシニアマーケットの展望について、どのように考えておられますか。

    高齢化真っ只中にある我が国においては、加齢を原因とする悩みを解消する商品の需要は高まっていきます。

    お悩みを年齢や現象によってきめ細かく捉え、応えられるような品揃えを多数ご用意して、それをお求めやすい価格でご提供する。それこそが弊社の使命であり、またビジネスチャンスであるとも考えています。今後も、客思考・客密着の商品開発でお客様の生活と幸せの向上に貢献できるよう取り組んでまいります。

    笑いも交え丁寧にインタビューに応じてくださった田村氏と高橋氏

    笑いも交え丁寧にインタビューに応じてくださった田村氏と高橋氏

     



    株式会社ベルーナ https://www.belluna.co.jp/
    ベルーナ 通販サイト https://belluna.jp/
    RyuRyumall 通販サイト https://ryuryumall.jp/

     


    <<<第31回 株式会社C&P

     

     
     
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    人生100年時代へ新しい提案。
    太極拳をベースにプログラムされた
    予防医療メソッド「メディカルタイチ」

     

    一般社団法人 国際メディカルタイチ協会 理事
    株式会社アスリートフードマイスター 取締役
    フードディスカバリー株式会社 スポーツ&ヘルスケア事業部 事業部長
    安藤 由美子 氏

     

    野菜の知識を深めそのおいしさや楽しさを広める「野菜ソムリエ」や、アスリートが能力を最大限に発揮するために食事の面からサポートする「アスリートフードマイスター」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないだろうか。

    食と健康の良い関係を世の中に広めることを目的として、これらの資格制度を確立してきたフードディスカバリー株式会社が、新しい“食と健康の良い関係”を始めた。
    それが「メディカルタイチ」である。「メディカル」は医療、そして「タイチ」とは英語で太極拳のこと。

    今回は、中国から伝わる「太極拳」と「食」と「健康」の新しい関係を系統的な人材育成カリキュラムとして提供している、国際メディカルタイチ協会についてお話を伺った。

    2019年4月取材

    国際メディカルタイチ協会 安藤由美子氏

     


    Q. まず、メディカルタイチとは何か、そしてどのような背景から設立されてきたのか、経緯をお聞かせください。

    私どもの活動は、2001年に「野菜ソムリエ」という資格を立ち上げ、その講習会などを体系化したところがルーツになります。
    そしてその後も一貫して食の素晴らしさを広く世の中に広めるための仕組み作りをしてきました。

     

    野菜ソムリエプロ 土師さん

    メディカルタイチ協会の礎になったのが「野菜ソムリエ」資格の体系化
    (写真は野菜ソムリエプロの土師さん)

     

    次に生まれたのが、「アスリードフードマイスター」という資格制度です。
    アスリートがその能力を最大限に発揮するために、食事の面からベストなサポートを提供するための食の知識を備えるための資格です。
    現役トップアスリートだけでなく、アマチュアアスリートや一般生活者の方々にもご受講頂き、健康的なライフスタイルの一環として生活の中で実践して頂いています。

     

    アスリートフードマイスター取得者の皆さん

    年々認知が高まり資格取得者が増えているアスリートフードマイスター
    (写真はアスリートフードマイスター資格取得者の皆さん)

     

    これら一連の活動の中で、私たちが常に念頭に置いているのは、健康にとって重要な三つの要素、「食」、「運動」、「睡眠」の三つになります。
    健康であるため、あり続けるためにこの三要素こそが不可欠である、私たちはそう考えています。

    ところが、最近では30代の会社員の多くが就業時間中、つまり8時間近くも、座ったままであると言われています。体を動かさない状態が長く続くとどうなるか。
    体というのは、使われない部位があれば、それを不要だと判断し、どんどん筋肉がやせ細り、毛細血管が減少してしまいます。
    このような健康課題は、日本の現代社会に大きく広がっています。

     

    日本のオフィスワーカーは疲れている

    デスクワークが中心であることに起因した健康問題は増加傾向にある

     

    課題の解決策のひとつとして挙げられるのは、毎日少しでも体を動かすことであり、運動することから遠ざかっている人たちを減らすことです。

     

    Q. そのための太極拳(Taichi)であり、メディカルタイチということですね?

    そうなんです。

    ところで、太極拳にはどのようなイメージをお持ちですか?
    広く知られているイメージとしては、
    「広場で大勢の人が集まって、静かな動きを皆で合わせて行うもの」
    であるとか、そのビジュアルからの印象も手伝って、
    「シニア世代を中心としたもので、60歳になったら始めるもの」
    などというものではないでしょうか。

    意外と知られていませんが、まず太極拳というのは1959年に蒋介石総統文化使節として派遣された樹金老師により「武術」として中国から伝えられ、徐々に日本国内に拡がっていきました。
    現在では市民レベルまでしっかりと定着したのですが、意外と知られていないのが太極拳が「競技スポーツの一種」であるということです。
    国内では国体の一競技として採用されており、毎年全国大会も催されています。大会には若い世代も参加しており、その中には世界的に活躍されている選手もいます。
    つまり、太極拳は「スポーツ」であり、「競技」としても成熟している種目なのです。

     

    競技として既に成熟した位置づけを確立している太極拳

    競技として既に成熟した位置づけを確立している太極拳
    (写真は現役日本代表選手(2017年世界武術太極拳選手権銅メダリスト)で
    メディカルタイチ認定インストラクターの齋藤志保選手)

     

    この太極拳の中から、医学的根拠にもとづき健康の維持・増進に良いと考えられる動きを取りだし、取り組みやすくアレンジしたものが「メディカルタイチ」です。
    その「メディカルタイチ」の普及のために2016年に国際メディカルタイチ協会が設立されました。
    タイチという名称は、太極拳が英語で「Taichi = タイチ」であることに由来します。

     

    太極拳を取り組みやすくアレンジした「メディカルタイチ」

    太極拳を取り組みやすくアレンジした「メディカルタイチ」

     

    2017年には、メディカルタイチを学び、普段の生活の中で普及していただく普及員と指導者を育成する資格制度を創設しました。

     

    Q. メディカルタイチの資格制度について、今の活動の様子も併せてご紹介してください。

    メディカルタイチを始めるためには、まずメディカルタイチというものが身近な運動として認知してもらうため、「太極拳(Taichi)と健康の関係」や、「効果が期待できる動き方」、そしてそれに関連した「食生活」などを学び、そして何よりメディカルタイチを生活に活かしていただけることが大切だと思っています。

    国際メディカルタイチ協会では、東京、神奈川、千葉、大阪にスタジオを設置しており、講習会を開催しています。
    講習会では、野菜ソムリエやアスリートフードマイスターで培ったノウハウを活用し、太極拳の動作一つ一つが健康にどのような効果をもたらすかを系統的に学んでいただくためのカリキュラムを用意しております。
    内容は、太極拳が有する医学的効果に着目し、各医療系団体の先生方にご指導のもと作成しています。

    受講された方には資格が授与されるのですが、その資格体系としては、メディカルタイチ3級、2級、そして講師としての資格も含むインストラクター2級と、インストラクター1級のコースを設置しております。
    コースの最後には修了試験があり、これに合格した方へ資格を授与する形になります。

     

    メディカルタイチ資格体系図

    メディカルタイチの資格体系

     

    資格制度を作ってから今までに500人ほど、全体の受講者の約9割が資格を取得されました。
    その一方で、資格を取得することだけを目的とするのではなく、「純粋にメディカルタイチという運動を楽しみたい・学びたい」という目的で講座を受講する方もおられるようです。

     

     

    Q. シニアにとって、メディカルタイチの有用性はどこにありますか?

    シニアの健康維持において、メディカルタイチがとてもマッチしていることです。

    健康の維持・増進のためには食、運動、睡眠という三つの要素を日々の生活の中にバランス良く取り入れることが重要であることは冒頭にご説明した通りですが、シニアにとっては急に激しい運動を始めることはかえって体を壊してしまう要因にもなりかねませんし、そもそもけがや病気のために激しく体を動かすことができない方々もいらっしゃいます。

    そういう方々にとっての運動の入り口として、メディカルタイチを始めてもらいたいと思っています。

    例えば、老人ホームや介護施設などの入居者の皆さんにもぜひメディカルタイチを活用していただき、一人より二人、三人、そして大勢の人が集まって一緒に体を動かしていただければ幸せホルモンも分泌され、より健康的な体作りができます。

     

    太極拳を取り組みやすくアレンジした「メディカルタイチ」

    シニアの健康維持のためには、楽しく大勢で運動することが効果的

     

     

     介護施設向けの動きの参考動画
    (株)locus「ふくくる」介護施設向け動画配信サービスダイジェストより

     

     

    Q. では、メディカルタイチを進めて行くにあたって、苦労されていることや、課題と考えていることはありますか?

    それはやはり(「メディカルタイチ」という言葉に対する)知名度です。

    太極拳と東洋食薬を組み合わせて健康的な生活をサポートするための生活スタイルの一つ、それがメディカルタイチなのですが、まだまだ認知されていません。
    その原因は、協会と資格制度の歴史が浅いことに加え、「タイチ(Taichi)」と聞いて太極拳のことだと直感的にわかりにくいことにあると思います。ここは、私たちが資格取得者の方々と更に普及活動を進める努力が必要なところです。

     

    メディカルタイチ資格認定者の皆さん

     メディカルタイチの資格認定者数は徐々に増えている
    (写真上段中央は、2015年世界武術太極拳大会銀メダリストで、
    メディカルタイチ認定インストラクター2015年の市来崎大祐氏)

     

    Q. 最後に、今後の活動についてお考えをお聞かせください。

    これまでご紹介してきたように、日常生活において運動が足りていない人や、激しく体を動かすことが難しい人が、気軽に健康的に体を動かすことのできる一つの選択として、メディカルタイチを広めていきたいと考えています。

    メディカルタイチを普及させる形として、ヨガの事例が一つのヒントになると考えています。
    インドが発祥で宗教的なイメージを伴ったヨガは、かつては取っつきにくい印象が持たれていた時期もありました。
    しかし近年になり、健康的でスタイリッシュな新しい形のヨガが米国から日本に入り、これが若い女性に支持されました。
    今では各地にヨガスタジオがあり、ホットヨガやピラティスといった様々な発展形を伴いながら支持を広げているのは周知の通りです。

     

    若い女性を中心に人気の高いヨガ

    メディカルタイチの認知度向上のためベンチマークすべきは「ヨガ」

     

    一方で、タイチ、すなわち太極拳は、元々は武術であったこともありポージングが男性的です。
    そのため、ヨガに比べると男性にとても馴染みやすいのではないかと考えています。シニア世代に関わらず、その1段階前のロコモ世代を含め、現代日本の健康課題である男性社会人の運動不足を解消する方法として、医学的な効果を考慮して考えられたメディカルタイチは非常にマッチすると思います。

     

    武術にルーツを持つことに起因して、男性的なポージングが多いタイチ

    武術にルーツを持つことに起因して、男性的なポージングが多いタイチ
    (写真はラグビートップリーグ日野レッドドルフィンズ 村田選手)

     

    また、無理なく体を動かすことができることが特徴のメディカルタイチは、シニア世代や難病やけがなどで激しい体操やトレーニングをすることが難しい方々にとっても、日々の生活習慣として少しの運動を取り入れるきっかけになり得る存在だと思います。

    ですので、もっと多くのシニア世代の皆さんにも、私たち国際メディカルタイチ協会の開催する講習会に来ていただき、食と運動をバランス良く組み合わせたメディカルタイチを学んでいただければと願っています。

     

     

    一般社団法人 国際メディカルタイチ協会

    太極拳エクササイズ専門スタジオ “Taichi Studio”


     
     
     
     

    matsumoto-catsle

    超高齢社会化が進行する我が国においては、「介護保険」の存在が国民生活にとって不可欠な存在となっている。しかしその介護保険が国や地方自治体の財政を逼迫させる一因になっていることもまた事実である。

    そんな状況に画期的な手法で風穴を開けようと奮闘する自治体が長野県松本市である。
    松本市は、2016年度から要介護認定を必要としない地域支援事業における総合事業を開始させ、その結果認定者の伸び幅は2017年度以降横ばい傾向を見込めている。

    その中核にあるのが「松本ヘルスバレー」構想である。それは一体どのような施策であろうか。
    今回、自らを「健康寿命延伸都市」と標榜する松本市の担当者に話を聞いた。

    取材にご協力いただいた方

    松本市商工観光部 小林氏、丸山氏

    • 松本市商工観光部 健康産業・企業立地担当 小林浩之部長(左)
    • 松本市商工観光部 健康産業・企業立地課 丸山克彦係長(右)

    ※2018年10月取材時


    第1章 「松本ヘルスバレー構想」誕生の背景

    松本市商工観光部の小林氏と丸山氏
    インタビューに応えていただいた、松本市商工観光部の小林氏と丸山氏


    市民の健康を産業面から支える「松本ヘルスバレー構想」

    2017年4月1日現在、我が国の総人口は1億2,676万1千人であり、そのうち65歳以上の高齢者人口は過去最高の3,489万8千人、高齢化率は27.5%に達している。
    また、2015年には「団塊の世代」が高齢期を迎え、2025年にはこの層が75歳以上の後期高齢者になる。
    これに伴い、2000年度から開始している介護保険制度においても、第一号被保険者数および要支援・要介護認定者数は増加の一途を辿っている。
    特に要支援・要介護の認定者数については、制度の開始当初であった2000年には256万2千人であったが、2014年度末には605万8千人に至っており、その数は開始当初の237%にあたる。

    高齢者人口と要支援・要介護の認定者数

    介護保険自体は国民生活にとって不可欠な存在になる一方で、このままでは近い将来、介護保険の存在が財政を逼迫させる一因になることも自明である。

    そんな状況に画期的な手法で風穴を開けようと奮闘する自治体がある。長野県松本市である。
    松本市は、2016年度から要介護認定を必要としない地域支援事業における総合事業を開始させ、その結果認定者の伸び幅は2017年度以降横ばい傾向を見込めている。
    自らを「健康寿命延伸都市」と標榜する松本市が推進する施策、それこそが市民の健康を産業面から支えるという「松本ヘルスバレー」構想だ。

     

    「日本の平均的都市」松本市を取り巻く環境

    松本市は長野県中信地方の中心都市であり、人口は長野市(37.7万人)に次ぐ24.1万人を擁す旧城下町である(※2016年時点)。また、周辺人口を合わせるとおよそ45万人に至る。

    一方、市域面積は、2005年以降の周辺町村との合併を経て978.47平方キロメートル(県内1位)に至っており、これは東京23区と横浜市を足した面積に匹敵する。
    この広域な面積を誇る同市には、人口集中区域に当たる中心市街地、その周辺にあたる人口密集地域、更に人口が少ない郊外地域の三つに大別される。

    中心市街地にはドーナツ現象や高齢化世帯の増加といった問題が発生しており、その周辺地域には子育て世帯の増加よる教育環境の混雑や待機児童の問題も発生している。

    また、郊外地域には過疎化の問題もある。
    市全体の老年人口割合は27.2%(長野県は30.7%)で全国平均よりは少し高く、県平均よりは少し低いという状況だが、いずれにせよ高齢化が進行は他の市町村と同様に大きな課題である。
    いわば松本市は、日本国内に存在するあらゆる人口に関する問題を包含している平均的な自治体と定義することができる。

     

    広大な市域を持つ松本の福祉を支えるインフラ

    その松本市が他の市町村と一線を画す従来からの取り組みの一つとして挙げられのが、広域に渡る市域を35の地区に分けたきめ細やかな地域包括ケアの体制である。
    この区割りは国が推奨している中学校区を単位にしたものよりは小さな単位となっている。このことからも、松本市の地域包括ケアに対する取り組みの自主性が垣間見える。

    松本市が行うこうした地域包括支援事業は、国(厚生労働省)が提唱する枠内にとどまらない「地域共生社会」という独自の方針に立脚しており、公民館など総務省系の末端機能や、はたまた産業機能、そして医療に至るまでの全てを横断的に課題解決していこうという考え方の表れである。

    そして、その方針を支える象徴的な存在が「地区福祉ひろば」である。
    市内35地区のそれぞれには、従来の公民館とは別に「地区福祉ひろば」という独自の施設が存在する。
    これは「健康づくりのための公民館」と位置付けることができ、ここでは市民向けの運動イベントや健康づくりのための講座などが開催されている。

    地域住民にとっては「交流サロン」、行政にとっては「地域福祉の拠点」とも言える施設であるが、特筆すべきはこの施設の運営は、基本的に地域住民の自主性に託されているという点である。
    また、市内各所には他の市町村の支所・出張所にあたる「地域づくりセンター」があり、市役所と地域づくりセンター、そして地区福祉ひろばがまさに三位一体となることで様々な課題解決に取り組んでいる。
    これが広大な市域面積を有す松本市の福祉行政を支えるインフラである。

     

    「三ガク都のまち」を牽引する医療人市長

    松本市を紹介するキーワードは、「3つのガク」である。それは、

    • 山岳のまち「岳」都(上高地)
    • 音楽のまち「楽」都(セイジ・オザワ 松本フェスティバル)
    • 学問のまち「学」都(重要文化財:旧開智学校 信州大学本部)

    を表すのだが、この「三ガク都のまち」を圧倒的なリーダーシップで牽引するのが、現職の市長である菅谷昭氏である。
    その菅谷市長は、医療人というもう一つの顔を持つ。そう、市長は医師なのだ。

    菅谷昭市長

    医療人という経歴を持つ、菅谷市長

    医師の首長という事例は他にもあるが、その中でも菅谷市長は少々特殊な経験を積んできている。
    それは菅谷市長が、チェルノブイリ原発事故が発生した際に現地で医療活動を行ったという経歴に起因している。
    大学病院において甲状腺外科の専門医であった菅谷氏が、1986年4月にチェルノブイリ原子力発電所事故が発生した際に、現地の子どもたちに甲状腺がんが多発しているという情報を耳にした。そして大学を辞職。自費で現地に赴き、退職金が尽きるまでの5年間に渡り無料で医療活動を行ったという。
    帰国後は一旦大学に戻るが、チェルノブイリでの経験が発端となり、更には自分の人生観も相まって、県の衛生部長へと転身。そして60歳で松本市長選挙に出馬し当選、松本市長に就任するに至った。

    就任当初から「これからは量の時代ではなく、質の時代である」という考え方を標榜する菅谷市長。そんな市長をよく知る周囲の人は、市長の人物像を「政治的なノウハウではなく、自分の信念で動くタイプ」と評す。そしてその言葉の端々からは市長の中にある「圧倒的なリーダーシップ」も同時に伝わってくる。

     

    「健康寿命延伸都市・松本」

    松本市周辺には信州大学や松本歯科大学、そして夏川草介氏の小説「神様のカルテ」のモデルであり、小平奈緒さん(平昌オリンピック・女子スピードスケートの金メダリスト)が所属することでも有名な相澤病院などもある、医療環境と医師人材に恵まれたエリアである。

    そんな松本市が、成熟型社会の都市モデルとして2008年より標榜しているのが「健康寿命延伸都市・松本」の創造というスローガンである。
    松本市政は早い段階から「健康寿命」というワードに着眼しており、総合計画や基本計画の中でもこのワードが重要な位置づけとして取り扱われている。
    また松本市な全ての基本政策は「健康」という言葉を交えて表現されている点も特徴的である。
    具体的には、「人の健康」、「生活の健康」、「地域の健康」、「環境の健康」、「経済の健康」、そして「教育・文化の健康」の六つであるが、これはWHOが提唱する「社会的健康」という理念が背景にあるという。
    このような「健康」に主眼を置いた市政が推進される背景には、前述した医療人としての菅谷市長の存在とリーダーシップがある、

    菅谷市長の健康に対する理念には、「量から質への転換」という思いが込められている。
    当選1期目は、自身が掲げた公約はありつつまずは前市長の活動を踏襲し継続性を担保しながら政策を進めた時期であった。
    その上で、「子育て支援」、「健康づくり」、そして「危機管理」の3つを標榜し、これを「3Kプラン」と銘打った。この時点で「健康づくり」はテーマとして掲げられてはいたが、あくまで3つのプランの一環という位置づけであった。
    そして2期目を迎えたときに、まさに「健康寿命」というキーワードが政策の中心に据えられた。
    その時の市長から発せられたのが「長野県は平均寿命こそ長いが、これからは健康寿命の時代」という言葉であった。

    松本市のある長野県といえば、長寿の県として広く認知されている。
    平成27年度に厚生労働省が発表した「都道府県別生命表」によると、

    • 全国の男性の平均寿命が80.77歳
    • 全国の女性の平均寿命が87.01歳

    であるのに対し、

    • 長野県の男性の平均寿命が81.75歳で全国2位(1位は滋賀県で81.78歳)
    • 長野県の女性の平均寿命が87.67歳で全国1位

    となっている。

    しかし、菅谷市長の視線の先にあるのは平均寿命ではない。
    平均寿命は「生きる量」を表す指標といえるが、これからの時代は自分がやりたいことに従い、自分の暮らしを決めていくことに価値を見出す、つまり「生きる質」が重要なのだと市長は言う。
    市民が自身の生きる質を高め、その質を維持しつつ一日も長く生きることに寄与する、それが市長の考える市政の骨子である。

    こうした市長の理念が最初に具現化されたのは、2011年7月に設置された「松本地域健康産業推進協議会」である。
    これは「松本ヘルスバレー構想」のプラットフォームに当たる組織だが、ではその松本ヘルスバレー構想とは一体何を目指すものなのであろうか。


    第2章 : 市民の健康づくりを事業化する、行政のアクロバット施策

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  • 映画「老後の資金がありません!」

    取材レポート

    映画監督 前田 哲氏 

     

    前作『こんな夜更けにバナナかよ』で「介助」というシリアスな題材にもかかわらず笑いを交えて描いた前田監督が、「老後」というこれもシリアスな問題を取り上げ、再び笑いで包んで届けてくれます。

    新作『老後の資金がありません!』にまつわる裏話から「老後問題」等を通して透けて見える日本の現状にも言及していただきました。

     

    rougo_maeda_director

     


     

    Q.映画『老後の資金がありません!』の制作に至った経緯を教えてください。

    TBSのプロデュサーから直接映画制作のお声をかけていただき、簡単なプロットを拝見しただけでしたが、面白いと思って関わらせていただきました。キャスティングについてはすでに天海祐希さん主演で決まっていましたが、私も天海さんがピッタリだと感じました。

    その後プロデューサーとシナリオライターと一緒に原作(垣谷美雨著)と照らし合わせながらの脚本作りに取り組み、映画的にどういう風に膨らませていくか足し算引き算しながら1年ほどかけて一昨年の春過ぎに決定稿を仕上げました。

     

    Q.老後問題について今回の作品以前に考えられていたこと、思っていたことがありましたか?

    「老後2000万円問題」や麻生財務大臣の発言、それ以前にあった「年金不払い問題」などによって国の政策に対する不安や懐疑がありました。特に老後の問題は私の父母が高齢ですのでとても身につまされました。

    普段から「子供と老人に優しくない国は亡んでいく」と思っていますので、映画を通してみなさんがもっと政治や行政に関わるキッカケとなり、社会を少しでも良くする方向に動けばと考えていました。

     

    Q.「老後2000万円問題」では報道によって不安が煽られた側面があったように思うのですが、今作を拝見して「老後なんて工夫次第じゃないのかな」と肯定的な気持ちになりました。

    メディアは少し不安を煽り過ぎたかもしれません。老後資金の問題について調べてみても4000万円ほど必要だという説や、私のようなフリーランスだと9000万円必要だという説もあって、どのようなレベルの生活を選択するかによって千差万別かと思います。そんな千差万別の中から作品の中には“シェアハウス”というそこに住む老若男女がお互い助け合う生活を選択するという設定を加えました。

    図らずもこのコロナ禍で人間にとってコミュニケーションの大切さがあぶり出されたと思うのですが、かつての共同体のようにお互いが尊重して譲り合うということがどんどん失われ、不寛容になっている・・・ルールも大事ですが、もう少し大らかに過ごしても良いのではないでしょうか。

    だから今後の生活の選択肢のひとつにそういう思いを込めましたし、草笛光子さんが演じる主人公の義母の象徴的なセリフ、「わがままに生きた方が勝ちよ」というのは、それぞれの違いを認め合った上でそれぞれの自由を尊重して上手く共生していく、そうした世の中になって欲しいという私の思いでもあります。

    本当は国や自治体がそういう事をもう少し手厚くみるべきだと思うのですが、今はそういった事が疎かにされているように感じています。

     

    rougo_main_wideⓒ2021映画「老後の資金がありません!」製作委員会

     

    Q.『こんな夜更けにバナナかよ』もそうでしたが、シリアスな問題を笑いで包んで作るにあたって留意されたことは何でしょう?

    辛いモノを辛いまま描いても仕方がありません。『こんな夜更けにバナナかよ』では「介助」「障がい者」というシビアな題材を取り上げましたが、それをストレートに表現するのは自分が観ても辛いし苦手なため、私は作りたくありません。ファンタジーではありませんが、「感情はリアルに、設定は少し、3cmか5cm浮いている世界」という作り方をいつも心掛けています。

    コメディに拘っている訳ではありませんが、人間は生きていく上で希望や笑いが必要だと思いますから軽妙洒脱に、エンタテインメントな映画として描きたいと考えています。笑うことで人は元気になりますし、免疫力も高まると言われていますから。

     

    Q.制作にあたって様々なリサーチをされたと思いますがいかがでしょうか?

    私はフリーランスなので会社勤めの方と感覚が違うということもあって、知り合いの昔の同級生までかなり広範囲にリサーチしました。また主人公の夫役である建築会社の部長クラスの年収などお金に関してもきっちりと調べました。経済評論家の萩原博子さんの本も参考にしましたし、ご本人にも出演していただきました。設定も家族構成から家の立地、会社の規模、出演者それぞれの役の履歴書まで細かく作った上でどこまで映画上に反映するかのアウトプットをコントロールしました。

    リサーチして実際の状況を知った上でどう“ウソ”をつくか・・・事実としてのノンフィクションを知った上でどうやって映画としてのフィクションに落とし込むか、ということです。

     

    Q.監督はシニアの線引きをどこに置いていらっしゃいますか?

    以前は60歳くらいと思っていましたが、今は70歳くらいをイメージしています。

    今は私の周りにも元気なシニアの方々が多いです。草笛さんは撮影当時86歳でしたが、ヨガのシーンなど「CGですか?」と質問されるほどの動きをされています。草笛さんは誰よりも若々しく柔軟だし、いつも新しい企画を追いかけていらっしゃって、天海さんをはじめ我々はとてもリスペクトしています。共演していただいた毒蝮三太夫さんも非常にお元気でしたし、その娘役で共演の柴田理恵さんが「私たちより80代の人たちの方が元気で恐れ入りました。」とおっしゃっていたのが印象的です。

    世間ではよく「老害」と言いますが、それは前例を踏襲するだけで慣習の名のもとに居座っている人たちのことであって、新しいことにどんどん挑戦しようという人たちはいくつになっても“青春”しているということではないでしょうか。

     

    Q.監督自身は以前から老後問題を意識されていたとのことですが、今回の制作を通じて意識など変わったことがありますか?

    草笛さんと出会って、新しい事に挑戦される姿勢にすごく刺激を受けました。その上で映画としては「介助」や「障がい者」そして「老後」を取り上げたので次は「介護」だと再認識しました。

    「介護」≒「老後」ということで『老後の資金がありません!」と同じようですが、私の“振り幅”としてもう少しダークなモノを考えています。5月に公開していた『ファーザー』というアンソニー・ホプキンスがアカデミー賞を獲得した映画もそうですが、「介護」に関してはどんな形にせよ映画にしたいと模索しています。

    実際私の父は軽い認知症で、意思疎通はできますが先月あった事も覚えていません。そういったことを悲観していても人生つまらないですし、父が私のことを忘れても私が父のことを覚えていれば良い訳で、そのように少しでも見方を変えられるような映画を作りたいと思っています。どこまで映画の力があるか分かりませんが、漢方薬のようにじんわり効いていけば良いと思っています。

     

    Q.老後問題に関して企業に何か期待されることがありますか?

    やはり一番は、定年制度を止めた方が良いということです。人は精神年齢や肉体年齢などそれぞれ違いますから、その違いを活かすべきなのではないでしょうか。年功序列も必要ないと考えています。映画のキャスティングやスタッフィングもそうですが、バランスが重要ということです。組織の中でいかに各人を上手く配置・活用するか、それがトップ・リーダーの差配の素養だと思います。

    有名な話ですが、落合博光さんが中日ドラゴンズの監督に就任され、「ドラフトも何もしなくて、現状の戦力で優勝できる」と言われた時、選手たちは「我々は(優勝する)力があるんだ」って思ったはずです。そして実際にドラゴンズは優勝しました。

    評価の低い選手を単に交換するのではなく、彼らのモチベーションを高めること、スキルアップをさせることはリーダーがちゃんと見極めてやっていくことではないでしょうか。翻って、今はまったく間違ったリーダーを選んでいる日本というのは沈没しそうです。そのリーダーを選んでいるのは我々ですから我々にハネ返ってきているといえるでしょう。

    企業にも国にも求めることはリーダーの人選です。リーダーは一番厳しいポジションだと思います。「山は登れば登るほど風が強くなる」と例えられるように、上に行けば行くほど厳しく律しなければならないのに、単にそのポジションに行きたいだけの人が多いのではないでしょうか。挙句にコネや忖度などおかしなことが横行して・・・それが当たり前のような環境で育っていく今の子供たちを見ていますと、非常に情け無く思います。

    小学生が見てもおかしな事をしている人(政治家)は替えるべきだと思います。みなさん諦めているようですが、たった10%投票率が上がるだけで政治は変えられます。今40%くらいの投票率を10%上げると全部の政治家の首をすげ替えられます。実を言うと「選挙に行こう!」といった映画を撮りたいという思いがあるくらいです。

     

    ありがとうございました。新作映画の裏話から日本の現状に関しての思いまで前田監督にお話しいただきました。
    シニア世代、これからシニアを迎える世代にある意味エールを送ってくださる前田監督の新作『老後の資金がありません!』は10月30日封切となります。この機会に映画館に足を運んではいかがでしょうか。

     

    rougo_mainⓒ2021映画「老後の資金がありません!」製作委員会 

    映画「老後の資金がありません!」

    【公式サイト】 https://rougo-noshikin.jp/

    【公式twitter】 twitter.com/rougo_noshikin

    【公式facebook】 facebook.com/rougonoshikin/

     


     

     

    <<<『日本栄養支援配食事業協議会』設立総会

      

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    日本栄養支援配食事業協議会

    (Japan Nutrition Support Food Delivery Conference)

    設立総会 取材レポート

     


    高齢化が急速に進んでいる日本において、高齢者への適切な食事供給が課題となっている。

    その中で配食事業を営む企業の内、計26社が連携し『日本栄養支援配食事業協議会(英表記:Japan Nutrition Support Food Delivery Conference)』を2018年5月7日(月)に設立した。

    同日の設立総会では、設立目的と「日本栄養支援配食事業協議会(以下、NSD)」に対する国や行政の期待する社会的役割などが紹介された。

    現代の高齢者の食事による栄養摂取状況とそれに対する行政・企業の動向を取材した。

     

    NSD設立の背景

    近年、急速な高齢化の進展に伴い嚥下や咀嚼が困難な高齢者に向けた専用食品や提供サービスが数多く開発され、少しずつ手の届くものになってきた。しかし、健常な高齢者も含めたひとりひとりの栄養摂取状況をみると、まだまだ高齢者の多くが「低栄養状態」であるという実態が明らかになってきた。そこで厚生労働省は医療などの措置面だけではなく、日常の食事面から健康のベースをしっかりと作ることが極めて重要であると発信し始めたのだ。

    高齢者に対し「低栄養状態」を防ぐ食事摂取の必要性と手法を指導していくには、今までのような医師・栄養士などの疾患改善を主にするスペシャリストだけではなく、日常的に食事を提供する配食事業を営む法人企業全体にも同義が求められる時代になってきたと言えるだろう。

     

    NSD設立の目的

    NSDはこうした社会背景に呼応し、配食事業企業が連携して超高齢社会における国民の健康維持・増進に貢献するための食事のあり方について検討するとともに、様々なガイドラインの素案作りや企業の社会的役割などを議論し、行政機関や企業との調整や啓蒙、生活者への発信などをすることを目的に当該協会は設立された。

    差し当って、すでに厚生労働省が定めている「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理に関するガイドライン」を、国民そして配食業界全体に対して啓蒙と理解促進を図っていく活動がNSDには期待されている。

     

     

    ※日本栄養支援配食事業協議会幹事メンバーはこちら

    会長   株式会社ヘルシーネットワーク      黒田 賢氏

    副会長  株式会社はーと&はあと ライフサポート 宮崎 吉昭氏

    事務局長 トーアス株式会社            岡本 篤志氏

    理事   キッセイ薬品工業株式会社        小池 雅志氏

    理事   株式会社シニアライフクリエイト     清水 勝氏

    理事   タイヘイ株式会社            大重 尚道氏

    理事   日清医療食品株式会社          大東 正人氏

    理事   株式会社ニチレイフーズ         大川 真一氏

    理事   株式会社武蔵野フーズ          山本 恭士氏

    理事   ワタミ株式会社             小松 一茂氏

     

    ※その他参加企業はこちら

    日東ベスト株式会社、国文グループ本社株式会社、シルバーライフ株式会社、ヨシケイ開発株式会社、株式会社トーカン、ドクターフーヅ株式会社、モルツウェル株式会社、株式会社パレット、ひまわりメニューサービス株式会社、株式会社ファンデリー、株式会社ベネッセパレット、株式会社ベルーナ、株式会社ジョイント、株式会社ソーシャルクリエーション、栗木食品株式会社、グローバルキッチン株式会社

     

    設立総会の第2部では、厚生労働省健康局健康課栄養指導室 室長補佐の塩澤 信良氏より日本栄養支援配食事業協議会に期待される役割が語られた。

    2

     

    「配食事業者1社が今後生活者から求められる栄養相談・食材・商品・献立作りなどのあらゆるニーズにすべて対応していくのは恐らく難しい。栄養指導に沿った内容から1つずつできることから進めていくのが良いのではないか。物理的に社内の栄養士だけでは対応できない場合には自治体の健康指導部門にはほぼ100%の確率で栄養士が常駐している為、積極的に相談・活用をしてほしい。」

    配食事業者が今後求められる自らの社会的役割を認識し達成するためには、自社だけでなくあらゆる機関とコンタクトを取っていく事が重要との事だ。そして、NSDにおいても同業他企業との連携基盤として活用可能であったり、外部からの相談対応機能を持った協議会になることへも期待していた。

     

    現在、多くの企業が高齢者に向けた食品を販売しているが、企業と生活者の相互理解が進んでいるとは言いがたい現状がある。今後相互理解を深めていく為の1つの情報発信元として配食業者への期待度は高い。NSCが機能することによってこれらを推進することができれば、高齢者への適切な食事供給の課題解決はもとより、「超長寿国日本」の新たなる食文化育成に寄与するものではないだろうか。

     


    3

     

    日本栄養支援配食事業協議会

    http://nutrition-support.moon.bindcloud.jp/

     


     

     

    <<<京王シニア応援フェスタ 取材レポート

    映画「老後の資金がありません!」前田 哲監督 取材レポート>>>

      

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    京王シニア応援フェスタ取材レポート

    京王フェアウェルサポート株式会社  長谷川氏
    京王電鉄株式会社 事業創造部(兼務)

     

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    2018年3月13日に開催された『京王シニア応援フェスタ』を取材して参りました。
    アクティブシニア向けの多種多様なセミナーや相談ブースが来場者でにぎわったイベントの様子について、「京王メモリアル」の名称で葬儀会館(セレモニーホール)を運営している京王フェアウェルサポート株式会社・長谷川氏のインタビューを通じてご紹介させて頂きます。

     


    Q.取り組みに至った経緯を教えてください

    まず京王メモリアルでは、イベントやセミナーを定期的に開催しております。
    その狙いとしまして、葬儀社の広告やチラシで伝わらない部分を伝えられたらと思っています。
    一般的に葬儀社に対して敷居が高いと感じたり、しつこく営業されるのではないかとご不安を抱いたりする方が多くいらっしゃいます。
    スーパーやコンビニと違ってお客様と接する機会が少ないものですから、イメージが先行してしまうのが現状です。
    日常的な接点が少ないからこそ、葬儀については不安な事も多いはずです。もっと気軽にご相談いただけたらとの思いから、イベントを開催し、直接スタッフと接していただく場を設けるようにしています。
    思っていたよりずっと接しやすいな、親切だな、とプラスの印象を持っていただければ、何かあったときに、イベントで会ったあの人たちなら安心できるな、と思い出していただくことができると考えています。
    こういった経緯からイベントをより多く開催したいと考えているのですが、葬儀をテーマにしてもお客様の層は限られてきますし、マンパワー的にも限界があります。
    そこで規模を広げ、より多くの人を巻き込んだイベントの開催を考えました。

    それが「京王シニア応援フェスタ」になります。
    アクティブシニアに向けてシニアライフを応援します、という形にすると、幅広い分野を扱うことが出来ますし、多くの企業と力を合わせることが出来ます。
    京王グループは様々な事業を展開していますが、各々の担当者がそれぞれの得意分野をひとつに融合する機会は少ないため、グループの担当者の連携強化の意味合いもあります。
    また京王グループだけではなく多くの方々にご協力をお願いし、より多くのお客様にお越し頂けるようなイベントを開催することになりました。

     

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    Q.イベントのテーマを教えてください

    テーマは「多摩市をはじめとする京王沿線にお住いのシニアの皆さんに、より元気で快適に過ごしていただくためのヒントを提供する」となっております。
    「より元気で快適に」という言葉には二つの方向性がありまして、ひとつは「より人生を楽しむ方向」、もうひとつは「不安を解消する方向」となります。

    「より人生を楽しむ方向」は、普段の生活にプラスになる情報を提供することが目的です。
    健康をテーマにした講演や、メイクアップのデモンストレーションやポートレートの撮影、旅行のご提案等があります。
    「不安を解消する方向」は、普段の生活からマイナスを減らすことが目的です。
    自宅の中を片づけて住みやすい空間を作る家事代行や生前整理をはじめ、不動産・葬儀の事前準備・相続・介護施設探しといった悩みに関して、それぞれの相談ブースで対応させていただきます。
    更に今回は「知的」の要素も取り入れ、国境なき医師団の方々にお越しいただきました。
    この講演が、社会参加や社会貢献活動のきっかけになっていただければ幸いです。

     

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    Q.お客様の反応はいかがでしたか?

    お天気にも恵まれまして、初めての開催にも関わらず、想定していたよりも多くのお客様にお越しいただくことが出来ました。
    時間帯によってばらつきはあるものの、満席になるセミナーもありました。

    <お客様アンケート結果>
    【年齢層】
    60代~80代の方に多くご来場いただきました
    【性別】
    女性のご来場者数の方が多くいらっしゃいました
    【参加形態】
    お一人でご参加いただいた方が多くいらっしゃいました
    【目当てのブース】
    各セミナー・ブースに対して万遍なく回答いただきました。
    (一番回答数が多かったものは健康をテーマとした講演)
    【今後について】
    健康やシニア向け体操、介護、空き家、医療をテーマとした セミナーやイベントを開催してほしいとの声をいただきました

     

    Q.オススメのプログラムはありますか?

    全部です(笑)
    「パーソナルカラー&簡単チーク術」セミナーは満席になりまして、参加された女性が身を乗り出して話を聞かれていました。
    隣のブースにプロの方がカラー診断をし、実際にチークをいれる実践コーナーもご用意させていただきましたので、お話を聞いた方の多くはそこに足を運んでいただいて、実際に自分にはどんなメイクが似合うのかを確かめていました。

    ポートレートコーナーも盛況でした。
    カラー診断をしてもらった女性の方はもちろん、男性も大勢いらっしゃいました。
    プロに撮影してもらうため、皆さん背筋が伸びて笑顔がより一層輝いていらっしゃいました。

    他にも生前整理についてのセミナー「今からのお片付け」や不動産ブース「あなたの家が年金になる」、「夫婦の老後の生き方を考える(不動産編)」も「そろそろ考えなきゃと思って・・・」と仰るお客様が多くいらしていました。

     

     

    Q.京王グループとしてこれからシニアに対してどう向き合っていくのでしょうか

    これまで京王グループは、沿線の生活サービスを充実させようと取り組んできました。
    ここ数年は、子育て世代の保育園問題への取り組みや、シニアにフォーカスした多摩エリアでの移動販売、介護施設、葬儀、納骨堂の運営といったサービスの拡充をしてきました。
    価値観の多様化に合わせて多面的なサービスが望まれています。
    京王グループとしてこれからより快適に、より便利に、より豊かな生活を応援するという方針でサービスを拡充させていくことを考えています。
    京王グループの特徴は、お客様に対して誠実であり続ける、という姿勢で、これからもお客様に安心して生活できるようなお手伝いができればと思っております。

     

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    京王フェアウェルサポート株式会社
    代表取締役社長 長谷川尚美様
    (京王電鉄株式会社 事業創造部事業担当課長 兼務)

     

    イベント当日のお忙しいなか取材にご協力頂きましてありがとうございました。今後のイベント開催も楽しみにしております。

     

     


     

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    日本栄養支援配食事業協議会設立総会 取材レポート>>>

      

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    ヤマハ耳トレ声トレ体験イベント
    取材レポート

    株式会社ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス 國井氏

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    今回は、2018年3月6日にヤマハ銀座スタジオで開催された「2時間で『耳と声』を楽しく鍛える体験イベント」を取材して参りました。「耳」と「声」をどのようにトレーニングするのか、実際に体験してきましたので、株式会社ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス國井氏のインタビューを通じてご紹介させて頂きます。

     


    Q.イベントの概要について教えて下さい

    当社出版書籍『1分で「聞こえ」が変わる耳トレ!【CD付】』と『声が20歳若返るトレーニング』の発売記念イベントです。耳トレ著者の小松正史、声トレ著者の上野実咲による体験型イベントセミナーになっています。
    耳トレは、音を聞きながら行う簡単トレーニングで、耳の感度をあげる体験ができます。声トレは、割りばしやストローなど身の回りの道具を使ったトレーニングで、すぐに効果を実感できるメディアでも大人気の「上野式メソッド」が体験できます。

     

     Q.イベントを開催するきっかけについて教えて下さい

    今まで当社で出版してきた書籍は、独習者向けの音楽実用書や読み物が多く、それらのユーザーは30代から50代くらいの年齢層の方が多かったのですが、もう少し上の層、つまりシニア層にもアプローチしていきたいと考えていました。
    その為に当社が出来る事は何か?を考えた結果、音楽とも結びつきが強く、かつシニアの関心が高い「耳」と「声」に着目し、トレーニング本を出版しました。この2冊はそれぞれ単発ものとして出していますが、より多くのユーザーに認知させるにはどうしたらよいか、という事を社内で考えた結果、「2冊をカップリングしたシニア向けのイベントをやろう」という結論に至り、今回イベントを開催する事になりました。また、イベント自体も、決して難しい事を学ぶのではなく、手軽に体験できるような内容にしたかったのです。

     

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    声トレの様子

     

    Q.イベント参加者の反応はいかがでしたか?

    昨年末から様々な媒体を活用してイベントの告知を行ったのですが、今までなかった顧客層からのお問い合わせが増えました。
    耳が悪い方からのお電話でのお問い合わせも多い為、お話が伝わりづらかったり、対応に時間がかかってしまったりしたこともありますが、シニアの方々と触れ合う貴重な経験にもなりました。
    また、皆さん本当に真剣で、イベント当日も13:00開始でしたが、開始の30分前にはほぼ満席になり、期待されている事が伝わりました。

     

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    熱心に話を聞いている参加者

     

    また、日常で大きく困ってはいないけど音が聞こえづらい、声を出しづらいなどちょっとしたコンプレックスをお持ちの方も多いようでした。もちろん当社としてもそのような方々に届いて欲しいという思いで出版したので、イベントで実際に皆様の声が聞けて良かったです。 

    当社では、楽器店で少人数のイベントを開催する事は多いのですが、内容は「ピアノの先生向け」など限られたものでした。今回のように、幅広い層を集客したのは初めての試みでしたが、80名ほどの方にご参加者頂き、出席率も良く満席となりました。

     

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    耳・声のトレーニング本

    声が20歳若返るトレーニング
    声が20歳若返るトレーニング
    1分で「聞こえ」が変わる耳トレ! 【CD付】
    1分で「聞こえ」が変わる耳トレ! 【CD付】

     

    Q.今回のイベントで新たな気づき、発見はありましたか?

    皆さんトレーニングなどの体験型イベントが好きなんだな、と改めて感じました。今回は入門的な内容だったので、耳や声を鍛える大切さに気づいていただくきっかけ作りのようなイベントでしたが、シニアの皆様は勉強家で真面目な方が多いと実感しました。大人になるにつれて、勉強意識が高まるようなので、その思いに応えられるようなイベントを今後も行っていきたいと思っています。
    また、今回は80名規模でしたが、定期的にもう少し少人数で、かつ参加者同士が交流できるようなイベントも開催してみたいです。
    シニアの方は数ヵ月先まで予定が埋まっている事が多いと聞きます。定期的なイベントを事前に告知する事で、予定もたてやすくなると考えています。
    ご来場の方に満足していただき、さらに読者の輪が広がるような仕組みを作って、いずれ展開していきたいと思っています。

     

    Q.課題はありますでしょうか

    本屋さんの棚で考えたときに、当社が強みを発揮できるのは音楽書の棚です。しかし、今回のような健康本は棚が別になるため、そのあたりも戦略を考えなければなりません。もうひとつは、イベントをその場だけで終わらせるのではなく、新たな顧客や読者拡大につなげることです。
    また、今回はシニア当事者だけでなく、親が認知症の不安を抱えている40~50代くらいの子供世代にも情報を届けました。シニア世代の子供や家族にうまくアプローチする事も重要だと考えているので、もっとうまく訴求していきたいです。
    今回のイベントにも、90代の方とお子さんが一緒にご参加頂きましたが、このようなイベントが、シニアの方々が抱えている問題点を、家族で考えられるようなきっかけになればうれしいです。

     

    Q.今後の展開について教えて下さい

    声を出したり、音楽を聴いたり、楽器を演奏したりすることは間違いなく体にも精神的にも良い事です。音楽をやめていたけど再開したい、昔は楽器をやっていた、自宅にもピアノがあるなどのシニアの方も多いと思います。是非気軽にチャレンジして頂きたいです。今後は音楽を、「楽しむためのツール」としてはもちろん、「健康に生活するためのツール」としてもご活用いただけるような書籍作りやイベントを展開したいと考えています。

     

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    ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
    出版部 國井氏

     

    イベント当日のお忙しいなか取材にご協力頂きましてありがとうございました。今後のイベント開催も楽しみにしております。

     



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     無添加×飽くなき開発力で
    支持を受けるマチュア世代向け化粧品
    ビューティーブーケ

    マーケティング本部化粧品事業部
    商品企画第一グループ課長     土井 幸永子氏

     

    創業以来「無添加」というに強いこだわりを持ち続け「化粧品」、「サプリメント」そして「発芽玄米」などのそれぞれの業態分野で長く市場を牽引している株式会社ファンケル。

    今回はその中でも、マチュア世代(※)向け化粧品「ビューティブーケ」にスポットを当てお話をお伺いしました。(※成熟した世代の意)                             

                                          2018年11月取材

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     Q. ビューティーブーケの企画から開発までの経緯についてお聞かせください。

    「ビューティブーケ」は2016年10月に発売したマチュア世代向けの化粧品です。

    ファンケルの商品は概ねオールターゲットで開発していますが、加齢に伴った体の衰えや変化を原因にして引き起こされる使い辛さにまで配慮して作られたのがこのビューティブーケです。

    容器の開封のしやすさや使用順序がわからなくなってしまう点などを意識して開発しました。

     

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    Q. 商品開発への拘り、そして強みはどこにありますか?

    まず、ファンケルのいわば代名詞ともいえる「無添加」。ここには強い拘りを持っています。その一つの研究成果として、防腐剤であるパラベンは老化を加速させるという結果を出しています。また原料の開発にも力を入れています。ビューティーブーケは、当社で積極的に行っている発酵の研究技術を活かし、当社の発芽玄米商品である発芽米を発酵させて、マチュア世代に効果的な成分を抽出するに至りました。

     

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    Q. この商品のターゲット層について、御社では「マチュア世代」という表現を使っていますが、その意図とペルソナについてお聞かせください。

    シニアという言葉には70歳以上の方、そして仕事を含めて引退して「美容」よりも「健康」を意識した生き方にシフトしているイメージがありました。

    ビューティブーケは、「美容」と「健康」の両方に意識が高い60歳以上の女性をターゲットとして設定したかった。そこで、この層を「マチュア世代」というワードで定義することにしました。

    ターゲットを決定した後、この層についての定量的な調査を行いました。

    また、実際にマチュア世代の方と行動を共にして定性的な調査を行いました。

    マチュア世代の方と触れ合ってみると、例えばフラダンスやハイキングなどアクティブな趣味をお持ちの方が多いことに気づかされました。

    また当然のごとく多くの経験値や知見も有しており、化粧品選びに関しても「本当にいいもの」をお求めになるという傾向が見えてきました。

     


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    Q. シニア・マーケティングを進める中で、他社の活動を参考にした部分はありますか?

    他社さんのシニア向けの商品については、実際にいくつかを購入してみましたし、それ以外にもシニア向け通販サイトが実践するご案内の手法、そしてシニアの方の目の動きなどを考慮したUI(ユーザインタフェース)なども参考にしました。

    特に、家電用品の説明書から得るものは多くありました。マチュア世代に当社の商品を使っていただくに当たり、いかに説明書を間違えなく使えるご案内にするか、受け入れ易い表現にするかという点で参考にした部分が多くありました。

     

     

    Q. 昨年(2018年)10月10日に、新商品「薬用 美白エイジングケアクリーム」が発売されましたが、こちらの開発経緯などをお聞かせください。

     

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    こちらは「金のいぶき」という発芽米を発酵させ、原材料として使っております。従来配合している発芽米発酵液よりさらに効果が高く、エイジングケア、美白効果、シミ予防に更なる効果を発揮します。

    また使いやすさの点でも新しい配慮を行いました。

    「薬用 美白エイジングケアクリーム」の開発に当たっては、従来の「ビューティブーケ」のユーザに集まって頂きヒアリング調査を行いました。

    そこで、「一般的なスパチュラ(クリームをすくい取るためのヘラ)は小さい」というご意見を得ることができました。スパチュラは透明なものが多く、下に落としてしまった際に、どこに落としたからがわかり辛いというご指摘でした。

    そこで、スパチュラ(掲載写真右下)を大きくしてつまみやすくし、他の色と識別しやすい色にしました。更に、内蓋のつまみを大きくして、従来のジャータイプの容器よりももっと開け易い容器にしました。

     


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    Q. 「薬用 美白エイジングケアクリーム」の売れ行きはいかがですか?

    ありがたいことに、本当に多くの反響をいただいており、現在は販売数に対し生産が追い付かないほどです。

     

    Q. 最後に今後マチュア世代(シニア世代)に対し、どのようなアプローチをお考えですか?

    これから更に高齢化が進んでいくことは自明ですので、当社としても更なる注力を行っていきます。

    今後は「マチュア世代向けのライフスタイルブランド」として位置づけ、広く美に対するお手伝いの提案をしていきたいと考えています。

     

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    ビューティーブーケ公式サイト

    株式会社ファンケル


    第29回 国際メディカルタイチ協会>>>

     

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    日本製への拘りと独自の販路開拓によって育成されたブランド「快歩主義」第1回


    執行役員 / 営業・商品本部戦略ブランド販売部 
    快歩主義グループ ブランドマネージャー
    穴井 政春氏

    創業以来120年以上に渡って、高品質の靴を作り続けてきたアサヒシューズ株式会社。確かな技術と信頼の背景には、国内工場製造への深い拘りがありました。
    そして、今シニア市場で話題の商品「快歩主義」は、健康・快適シューズ市場においてNo.1のブランド(※)に成長しています。(※2012年シューズポスト紙調べ)

    今回は、この「快歩主義」ブランドの育成と販路拡大を含め、アサヒシューズのシニアマーケティングへの取り組みについて深くお話をお伺いします。

    2018年5月取材

     

     


    はじめに

    【シニアライフ総研(以下、SLS)】今回はシニア用の靴市場において、自社ブランドである「快歩主義」が大きな支持を得ているアサヒシューズさんにお話をお聞きします。
    お話くださるのが同社営業セクションを経て現在はブランドマネージャーを努めていらっしゃる穴井さんです。

     

    【穴井】まずは、弊社に興味を持っていただいて光栄に思います。

     

    【SLS】本日は、本社のある福岡県久留米市からわざわざお越しいただき(※)、本当にありがとうございます。

    (※編集部注 : インタビューは、東京・有楽町にあるアサヒシューズ様ショールームにて実施)

     

    【穴井】弊社は新幹線とJR在来線の久留米駅近くの、電車からもよく見える川沿いに本社と自社工場があります。
    主たるシューズメーカーにおいては、国内で自社工場を有する会社は少なくなっていて、国内工場があったとしてもアッパーと呼ばれる靴の上部の縫製は海外で行い、靴底との接着だけ国内で行う工場が多く、弊社のようにアッパーの縫製も自社や久留米市近隣の協力工場で行っている会社は珍しいと思います。
    靴には様々な種類がありますが、弊社は高齢者向けのブランドとして「快歩主義」というブランドを企業の主要ブランドと位置付けています。

    お陰様で、65歳以上の市場においては、ナイキやプーマをご存じない方でも「アサヒシューズ」や「快歩主義」の認知が徐々に高まっていることを実感しています。
    私からは営業という立場から、高齢者マーケットへの取り組みについて「熱く」お話したいと思います(笑)。

     

    【SLS】ぜひ「熱く」よろしくお願いいたします(笑)。

     

    「快歩主義」の商品特性

    【SLS】まず、「快歩主義」の商品特性についてお聞かせください。

    快歩主義 定番商品


    【穴井】「快歩主義」定番商品のメーカー希望小売価格は5,900円です。
    他社さんからはこれに競合する商品が3,900円程度で売られているようです。そう考えると決して安くはないのですが、弊社は「快歩主義」発売以来この価格を維持しております。
    なぜなら商品の品質に絶対的な自信を持っているからです。

    商品の差別化ポイントはゴム底にあります。
    ゴムというのは本来重いものなのですが、「快歩主義」に使用されているゴムは圧倒的に軽いのです。

    khs2 (※快歩主義の最軽量商品の重量は約130g)


    実は、ゴム底製造の歴史こそが、弊社の歴史と言っても過言ではありません。

    弊社は足袋の生産から始まり、その後、地下足袋へと移行してきました。久留米は近隣に三池炭鉱、田川炭鉱など炭鉱が多く、炭鉱夫のために地下足袋を作って最初に特許登録したのが弊社です。これがゴム加工を始めたきっかけとなるのですが、ここから長年に渡りゴム加工技術の研鑽を積み重ねてきました。
    靴のデザイン部分は流行やライフスタイルに合わせて変動しますが、ゴム底加工の技術だけはそれぞれの会社に脈々と受け継がれてきたノウハウがあり、簡単には真似できないはずです。

    靴底(裏側)を見ていただければすぐにわかっていただけます。
    「快歩主義」は靴底の全面にゴムを使用しており、これが履き心地の良さを生んでいます。
    他社さんの製品は、そのほとんどが軽量化のために発泡させた合成樹脂を使用し、滑り止めとして部分的にゴムを使っている商品が多いはずです。

     

    【SLS】更には、各方面の専門家の助力があったとお伺いしておりますが…。

     

    【穴井】「快歩主義」には基本設計として「正常歩行機能(フットオンコントローラーシステム)」が採用されています。加齢により骨格構造や歩行が変化してくことに対応する機能で、特許登録もしております。

    快歩主義が足に優しい5つのポイント


    この技術は、1999年に松波総合病院リハビリテーション科(当時)の酒向先生(理学療法士)との出会いから始まります。更には整形外科医の先生方の協力も得ながら研究開発を行って誕生しました。軽量化を実現するため靴底にはエクスパンセル(ガスを入れたプラスチック球状発泡剤)を採用し、ゴムへの配合率や焙造条件(温度や時間など)を独自に研究し、量産を実現しました。
    また、デザイン面については、面ファスナー部分を素材メーカーと共同で開発し、医療機関で検証を行いました。
    消費者は厳しい視点を持っています。健康に関わる付加価値を持った商品というのは、メーカーの独りよがりでは売れません。やはり、専門家の知識や助言という裏付けが絶対的に必要です。

     


    次回 : 「シニアマーケットへの事始め~会社更生法適用時代を経て」~「自社工場を武器にするための経営戦略」


    アサヒシューズ株式会社


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  • 警備業界最大手が超高齢化社会に取り組む
    セコム・マイホームコンシェルジュ

    SMARTプロジェクト プロジェクトリーダー 勝亦真一氏
    SMARTプロジェクト セコム暮らしのパートナー久我山 主任 奥村政彦氏
    コーポレート広報部 部長 井踏博明氏
    コーポレート広報部 中川翔平氏

     

    警備業界の最大手のセコム株式会社。
    超高齢社会に対し、様々な取り組みを行っています。
    今回のインタビューでは、セコムグループの中で、医療や介護、セキュリティなどのサービス体制が充実している東京都久我山地域で生まれた「セコム・マイホームコンシェルジュ」についてお話をお伺いしました。

    2018年2月取材


    Q.「セコム・マイホームコンシェルジュ」の提供を開始した経緯を教えてください

     弊社は警備会社として知られていますが、セキュリティだけでなくメディカルや防災など幅広く事業を展開しております。
    各事業の力を活用して、超高齢社会における社会課題に対して出来ることを探るために2014年にSMARTプロジェクトを立ち上げ、まずご高齢者の困りごとを調査することにしました。
    弊社でも、これまでの経験から、ある程度の知見は持っており、行政やリサーチ会社による、超高齢社会の課題調査を参考にしていましたが、実態の正確な把握が必要だと判断し、自分たちで実際に調査することにしました。
    そうして、超高齢社会の課題を発掘するために、高齢者のお困りごとに対応する相談窓口「セコム暮らしのパートナー久我山」を開設いたしました。

     

    「セコム暮らしのパートナー久我山」では、「なんでもお声掛けください」と実際に困りごとを受け付けて、ご自宅に出向き、状況確認・解決までの対応を行い、10か月で550件の困りごとのお手伝いをすることができました。
    実際に困りごとを集計してみると、我々の想定と異なり、セキュリティやメディカルに関するものは、それほど多くはなく、日常のあらゆる場面で問題が発生していることがわかりました。

     

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    日常の困りごとへの対応の中で、超高齢社会の課題の源が見えてきました。
    心身の衰えによって、高齢者自身で出来ないことが増える中、時代の急激な流れで世の中が複雑になり、やるべきことが増えてもどうすればいいのかわからない、誰に聞けばいいのかもわからない。
    ちょっとしたことの積み重ねで暮らしの不自由さを感じ、不安を抱える方が非常に多くいらっしゃいました。

     

    そんな日常的な不安を抱えている方々に、これからの見通しを尋ねてみると、施設への入居を検討しているけれど、本当は自宅での生活を望んでいるとの回答が得られました。簡単なお手伝いをしてくれたり、ちょっとした相談に乗ってくれたりする人さえいれば、まだまだ自宅で過ごせるような方々が大勢いらっしゃいます。
    そのような経緯があり、自宅生活のお手伝いができるサービスをやってみようと、「セコム暮らしのパートナー久我山」で得た知見を活かした「セコム・マイホームコンシェルジュ」が生まれました。

     

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    Q.「セコム・マイホームコンシェルジュ」のサービス内容を教えてください

    「セコム・マイホームコンシェルジュ」は、暮らしのお困りごとに対応する拠点「セコム暮らしのパートナー久我山」を中心とした地域限定のサービスです。
    いつまでも住み慣れた自宅で暮らしたいと思われる高齢者の方々を対象に「いつでも」「あらゆること」に「セコム暮らしのパートナー久我山」がワンストップで対応します。
    24時間365日、日常生活上の相談受付、解決方法の提案・情報提供を行います。携帯電話の使い方のレクチャーや電球交換といった軽作業を行うだけでなく、医療、介護、リフォームといった専門職への取り次ぎ・手配も対応しております。また、「セコム・ホームセキュリティ」をベースにした見守り、駆け付けサービスはもちろん、その方にあった形でのお役立ち情報の配信、定期的な暮らしの状況確認、遠方にお住まいのご家族への対応レポート配信なども行っております。

     

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    Q.取り組みの中で苦労されたことを教えてください

     サービスの内容をなかなか理解してもらえないことです。
    「セコム暮らしのパートナー久我山」を設立して間もない頃、1,000件程のサービスを案内させていただきましたが、まったく電話が鳴りませんでした。
    我々としても想定内の状況であったため、すぐに訪問によるサービスの説明に励みました。
    サービスの内容を理解してもらえなかったり、「本当になんでもやってくれるのか?」と、いわゆる「便利屋」のサービスとの違いを説明することに苦労しました。

     

    「セコム・マイホームコンシェルジュ」は、富裕層向けのサービスだと思われてしまうことがあります。しかし、我々の考えでは、事業継続の為に相応の対価をいただく事、また対価に見合ったサービスの提供が重要だと考えています。
    地域包括支援センターや介護保険をベースにした事業所では、「パソコンを教えて欲しい」、「重い荷物を運んで欲しい」といった、介護保険では対応できないことを頼まれることが多々あると聞きます。
    そういった部分を我々が対応することで、役割分担も可能だと考えています。一方で、自治体側は、特定の民間企業のサービスを推しづらい立場でもあり、そこに難しさも存在します。

     

    Q.サービス提供を通じて、シニアに対する認識の変化はございましたか

    サービス提供開始前は、70代前後で要支援や要介護認定前の方がサービスの対象の中心になると想定していました。
    しかし実際には、サービスご利用者の平均年齢が約82歳で、そのうち半数程度の方が介護保険を利用していらっしゃいます。
    ケアプランのスケジュール外で急に必要になった時や病院への付き添い、介護保険でカバーしきれない部分といったことに我々の価値を考えていただけているのだと認識しました。
    また、「セコム・マイホームコンシェルジュ」を提供するために、前提としている「セコム・ホームセキュリティ」については、防犯はもちろんですが、高齢者にとっては見守りのニーズにも応えていると感じます。

     

    Q.シニア層の特徴として気づいたことはありますか

     ご自身の困っている状況を自分からはなかなか発信しないことが大きな特徴だと思います。
    もちろん活発に発信する方もいらっしゃいますが、自分からお願いしたり、何かを聞いたりすることを嫌う方も多くいらっしゃいます。
    何かを頼んでも断られたり、たらい回しにされたりすると大きなストレスを感じるものですが、そうなると人に聞かない、誰にも頼らない、我慢しようと考えてしまいます。
    その事に起因して、人間関係の希薄化も進み、情報を得る機会が減ってしまいます。
    そのため、認知症予防体操や相談会といった高齢者向けの様々な地域の取組みや民間サービスの情報が、本当に必要な方に届かなくなるといった問題も生まれています。
    そういった方々に対して、我々も微力ながらセミナーを開催したり、訪問先でイベントを薦めたりと情報提供をしております。

     

     

    Q.社員教育に関して何か特別な取り組みを行っていますか

     セコムグループの医療介護スタッフに研修をしてもらったり、外部セミナーに出来る限り参加することで、高齢者の生活に関わる基本的な知識や技術を身に付けています。
    また、「セコム・マイホームコンシェルジュ」の会員様のケアプランに関わるサービス担当者会議に参加することもあります。会議で得た専門知識をスタッフで共有するだけでなく、ケアマネージャーさんの把握できていないところを我々が情報提供することでお互いを補うこともあります。
    加えて、一般的な生活者の目線は失うことのないように気をつけています。
    サービスの特性上、幅広く対応する必要性がある我々が専門家になってしまうと、客観的、かつ俯瞰的な見方を出来なくなってしまう可能性があるからです。
    我々の役割はあくまで専門家とお客様をおつなぎすること、つまりハブの役割を果たすことだと考えています。

     

    Q.現状の課題を教えてください

    エリア展開が課題の一つです。
    ありがたいことにエリア展開のご要望をいただいていますが、事業性や人材の確保などの課題があるので検討中です。

     

    Q.今後のお取り組み予定を教えてください

    自治体や他企業とのより密な連携を取る必要があると思っています。

    地域包括支援センターでは、要介護認定を受けた方を中心にサービスを行いますが、我々はその前の段階で関わりをもつことが必要だと考えています。地域の一つのチャネルとして、高齢者に対して有益な情報を提供したり、他企業のサービスをコーディネートすることで、健康的な生活につなげることが出来れば、介護保険のお世話になることが先延ばしとなり、社会保障費の抑制にもつながります。

    また、ICTやAIを活用したサービスの本格的な運用を考えています。
    現在は、トライアル的に他企業のサービスとも連携しながら、コミュニケーションロボットやスマートスピーカー等のコミュニケーションツールを使った取り組みをしており、「今日は暑いから外出は控えましょうね」「薬をちゃんと飲みましょうね」とお客様の生活維持に必要なお声掛けをさせていただいています。
    現在「セコム暮らしのパートナー久我山」には9名の従業員がいますが、多くのご利用者に均質に声をかけることは、困難な状況になりつつあります。
    そこでICTを使って、均一に、信頼性の高いコミュニケーションの提供が出来ないかを検討しており、会話を中心とした、有効で、タイムリーなコミュニケーションが実現できれば様々な課題の解決に役立つのではと考えています。
    会話することが、高齢者にとっては外部の刺激として認知症予防になりますし、口の運動として嚥下機能低下予防にもなると考えられます。
    また詐欺の電話がかかってきたときも、「その電話は詐欺かもしれないから気を付けてね」とAIを活用して呼びかけすることもできます。
    このような高度なコミュニケーションを同時に、多数のお客様に行うことができる可能性があります。

    また、会話だけでなく情報提供にも役立てることが出来ます。
    近隣との関係が希薄になる中で、人同士の直接のコミュニケーションが少なくなってきている最近の流れからも、ICTを活用した声掛けであれば、抵抗感なく受け入れていただけるかもしれません。
    ICTによってコミュニケーションの質を高めることができると考えられますし、その人に適した情報提供を、コストをかけずに行うことも可能になると考えられます。

    現在、ICT活用はトライアルの段階です。
    活用実績を1件でも増やし、知見を積み重ねていけば、自治体の協力が得られるようになり、効率性と体制確保のバランスを取ることで、事業性の問題も解決できるかもしれません。
    将来的にはエリアを展開し、多くの方のお役に立ちたいという想いがあります。

     

    セコム株式会社 公式ホームページ

    https://www.secom.co.jp/


                  
     
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    グランド・ジェネレーション
    (G.G)世代に向けた眼鏡店


    イオンリテール株式会社ファーマシー商品部
    外部出店ユニットG Glass-Upグループ マネージャー 今川 匡氏

    国内メガネ市場は、2011年以降5年連続でプラス成長を続けています。誰しも加齢とともに目の衰えは避けられないもの。シニア層をグランド・ジェネレーションと位置づけるイオンリテール(株)が運営するメガネ店「 Glass-Up(グラスアップ)」について、お話をお伺いしました。

                                       2017年10月取材

    Glass-Up(グラスアップ)Glass-Upグループ マネージャー 今川 匠氏

     


    Q.御社の考えるシニアの定義とは何でしょうか?

    イオングループでは「アジアシフト」「都市シフト」「シニアシフト」「デジタルシフト」という4本の経営戦略を掲げておりますが、シニア層へアプローチしていく取り組みが「シニアシフト」になります。 その中で、55歳以上のアクティブなシニア層の呼称を「グランド・ジェネレーション(G.G)」としました。

    取り組みとしては、シニア向けブランドの立ち上げ、シニア向けの店舗改装、また55歳以上のお客様が入会できる「GGカード」の発行などです。 ただ最近では元気なシニアな方がとても多いので、イオングループ社内では「65歳以上のお客様」をアクティブシニアとしてマーチャンダイジング上は設定しております。

     

    Q.シニアのとらえ方、特徴とはどのようなものでしょうか?

    個人消費の約半数は60歳以上だと言われています。また、日本の個人金融資産が1800兆円となり、そのうちの約6割がシニア層といった話がありますが、結局シニアがメインストリームと化していると私は思っています。 ですから、その層を狙っていくのは、至極当然のことだと思っています。


    Glass-Upグループ マネージャー 今川 匠氏

    イオンは総合スーパーをやっているので、お店や地域によってはもうシニア層がメインになっている店もございますし、その中の眼鏡屋さんとしては、いわゆるシニア層はもうど真ん中ですよね。 シニアの方は、長く生きてこられたので、今まで色々な経験を経たり、感じてきたりされたというのがあって、個人の多様性がすごく出やすい、というのが、俗にいうシニアの特徴だと思います。 健康状態というのもあるでしょうが、ばらつきが大きいですね。資産形成をしてこられたり、様々なライフスタイルにチャレンジされてきたりというのもまた、シニアの特徴だと思います。

    この辺りが若い人たちとの違いで、シニアの方は、すごく多様性があるので、お客様の嗜好に合わせてどういったスタイルがあっているかマッピングを行っていますが、すごくバラバラになります。

    その為、多彩なバリエーションに無造作に当てはめるのではなく、ストーリー性を持って接客していかないとご満足していただけない。多様性に柔軟に答えていかないといけないのが若い人と違うところだと思います。

    また、物事をよく理解されているというか「このカテゴリーの商品は銀座まで行って買わなくてもいいんじゃない?」「こういうのは近場でも買えるよね?」という判断があったり、やはり近隣であることのメリットが良くお分かりになっておられる方が多いので、比較的地域に密着したビジネスの有効性が高まると考えています。

     

    Q.「グラスアップ」の事業内容について教えてください。

    65歳の方をメインターゲットとした眼鏡店でありますので、お客様がより楽しんで満足して買い物されることを考えています。

    メガネ店「 Glass-Up(グラスアップ)」

    お店の立地によって、コンセプトを少しずつ変えています。こちらの店舗は、路面店で都心に位置しているので、品揃えも接客もそれに合うようにしています。 総合スーパーの中にある店舗は、もっと簡素でフレンドリーで価格帯の低いものを扱っていたりはします「メインターゲットが65歳」というところは変わりありません。

     

    Q.競合や類似サービスとの違いはいかがでしょうか?

    「丁寧に接客すること」が当たり前ですが、とても大事だと思っています。  シニアになってくると、メガネを掛けざるを得なくなってきますが、メガネで顔の印象はすごく変わるので、お客さま個々人、ご自身の魅力をもっと引き出してあげられるようなフレームをご提案することを心掛けております。

    接客をさしていただいて感じるのは、65歳を過ぎると男性の場合、見た目のデザイン以上にレンズやフレームの機能性にとくに注目される方が多いという傾向に対して、女性の場合は、見た目のデザインや、ご自身にお似合いになられるかということに対して、より一層気を使う方が大変多いと感じます。

    また、初めは、メインはシニア市場だからこのような手法で運営しようとか考えていましたけど、どちらかというとそれぞれの方が「素直に欲しいものを買う」傾向があるので、その方々が望まれるご提供方法で接客するようにしています。そのほうが業績も良くなりますね。(笑)

     

    Q.商品開発で苦労したことはどのような点でしょうか?

    これは、グラスアップのオリジナルフレームなのですが「ガルウイングフレーム」といって「世界初のレンズ跳ね上げ可動方式」を採用しています。


    ガルウイングフレーム

    片手で簡単に跳ね上げることができるようになっています。アクションが面白いだけではなく、従来の跳ね上げフレームと違い、レンズ面を触ることなくレンズを上下させることができます。 こちらのフレーム枠は老眼の人向けなのですが、「ブロー」と呼ばれる形状で、最近の若い人に人気の形です。いつまでもオシャレでカッコよく老眼を楽しんでもらいたいと考えて作りました。

    眼鏡店がオリジナルフレームを作るのは珍しくないのですが、オリジナルの開発方針を「老眼世代が使いやすく、不満を解決すること」を中心に考えてやってるところは少ないと思います。

     

    Q.地域に対してどのような展開を考えていますか?

    冒頭にお話しした通り、グループ戦略として、「アジアシフト」「都市シフト」「シニアシフト」「デジタルシフト」の4シフトを掲げていますが、「シニアシフト」、「都市シフト」を考えると、東京近郊と大阪近郊の店を出来れば増やしたいと思っています。

    しっかりとした接客で常連客を増やすためには、車で来るようなSCとは違い、どうしても商圏エリアが狭くなってしまいます。となるとビジネスとして成り立たせるためには、人口密度の高い所で展開していかないといけないと考えています。

     

    Q.スタッフ教育・育成についてどのようなことを行っていますか?

    マニュアルはたくさん作っています。それをチェックする仕組みもあって、達成基準をクリアしていくという仕組みになっています。お店によっては、未経験者を含めたパートの方もいます。機器の取り扱いなど難しいものもあるので、マニュアルには力を入れて分かり易く作っています。

    社内には「メガネアドバイザー」という検定資格もありますし、初心者の方を早期育成し、実際に戦力として販売に従事できるようになる、というところが我々の強みだと思います。 マニュアルは、検査、加工だけではなく、最近はさらに接客を重視したものに改訂を進めています。特にシニア層のお客様は接客対応を大事にされる方が多いので、そこを強化しようと考えています。

    イオンは、ずっとセルフサービスで育ってきた会社なので、接客が重要なのはわかっているのですが、なかなか難しい部分でもあります。競合他社から見れば普通のことかもしれませんが、しっかり先行企業様からも学び続けて行きたいと考えております。

     

    Q.メガネ市場の今後の展開と将来像をどのように考えていらっしゃいますか?

    この事業を始めた時からずっと言っていたのは、40歳以上の人は割合としてだけじゃなく、数として増えていく、という事です。老眼の人も間違いなく増えるので、老眼のメガネ需要も増えていきますよね。

    また、年代によってメガネの値段は上がっていくんです。 理由は2つあって、レンズが遠近両用になって高機能なレンズじゃないとよく見えなくなるのと、フレームに関してはちょっといいメガネをしたい、という欲求が上がってきます。 例えば、65歳を超えて、絶対メガネをかけたくないと思っていた女性が、実際にメガネをかけざるをえなくなった時には「だったら、すごく美しくなるメガネがしたい」となるわけです。

    そういった方が今後も増えるので、メガネのニーズはここ5年、10年は成長市場でありましたが、これからももっと伸びるのは間違いないと思います。

    商品は多様化しているので、ネットでも検索できるのですが、「そういうのは好きじゃない」というシニアのお客様も多いと思います。「お店から自分に合うメガネを勧めてほしい」という方も多いので、その気持ちをしっかり読み取って、お客様に最適なご提案をすることが大事にしています。

     

     

    メガネ 補聴器 レンズ交換 Glass-Up(グラスアップ)
    https://www.glass-up.com/

     


               
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    お客様の声から生まれた
    シニアのための婚活サイト


    株式会社エクシオジャパン 取締役 宮島 秀樹氏
    株式会社エクシオジャパン 広報部 婚活アドバイザー 北川 志穂氏

    婚活サイト動員数NO.1企業*のエクシオジャパン。人間はいくつになっても恋愛はしたいもの。お客様の声からシニアに特化した婚活サイト「シニア婚活」についてお話をお伺いしました。*東京工商リサーチ調べ

                                       2017年3月取材

     

    エクシオジャパン

     


    Q.“シニア婚活”の事業内容と経緯を教えてください。

    50歳以上の方向けに婚活パーティーを開催しています。当初、若者向け婚活パーティーを開催していたなかで、シニア層の方々からシニア向けの婚活パーティーを開催して欲しいとの声が集まりまして、2008年より首都圏で開催したのが始まりです。初めは首都圏のみでの開催でしたが、地方の方々から各地での開催を求める声が挙がり現在では月に1、2回程度47都道府県で開催しています。

    パーティーの流れは、男女約15人ずつで集まって頂き、1対1の会話を約5分間ローテーションで行います。全員の異性の方と話して頂き、カップルになっても良いかなと思う方の番号を書きマッチングすればカップル成立となります。

    当社の若者向け婚活パーティーは約150のカテゴリ分けをしており、年収、年齢や趣味などで分けていますが、シニア向け婚活パーティーは、あまりカテゴライズしてしまうと母数が少なくなってしまうので特にカテゴライズはせず、男女共に参加条件として「独身、社会人(収入がある)の方」としています。

    シニア婚活は、ネットからのお申し込みがほとんどですが、ネットが得意でない方には婚活のスケジュールを郵送し電話での予約にも対応しております。サイトは登録制ではないのでお申し込みは都度、ご自身で調べてご連絡をいただいています。お友達に誘われて参加する方も多く、また、ご自身のお子様の薦めで参加される方も増えています。

    最近では“シニア婚活”という言葉自体が世間でもよう耳にするようになりましたが、実際に、シニア婚活を取り上げる番組も増えてきており、テレビ番組の取材を受ける件数も増えてきています。


    2


    Q.御社の考えるシニアの定義とは何でしょうか?

    当社の考える定義は、シニア婚活でお申し込みができる”社会人で独身”の50歳以上の男女になりますね。メインのターゲットとして今後、獲得していきたいのは60歳〜70歳の男女です。特に年齢の制限は設けてないので80歳の方でも”社会人で独身”であればご参加頂いています。

     

    Q. ターゲットがシニアだからこそ、工夫していることは何かありますか?

    そうですね、サイトや配布物の文字のフォントは若い方より大きくしています。またパーティーの説明やアナウンスも、よりはっきり、ゆっくりと話すことを心がけております。一連の流れもシニア婚活はわかりやすくしています。


    Q. シニアマーケットをどのように捉えていますか?

    今後も更に発展していく可能性のあるマーケットだと考えています。まだまだシニア婚活は認知度が足りないので、どのように認知してもらい活用してもらうかが重要になると考えています。ただ、プロモーションは媒体選定など非常に難しいと感じています。

    行政や福祉センターの行っている婚活サイトとの差別化をどのようにしていくかが課題です。やはり行政の行っているものは安心感がありますので…。

     

    Q.競合他社との違いや強み差別化はいかがでしょうか?

    ④そうですね。バスツアーやクッキングなどパーティーにバリエーションが豊富なのも差別化のひとつです。バスツアー婚活は、地域によってですが2ヶ月に1回の頻度で行っています。日帰り旅行のバスツアーに婚活の要素を組み込んでいるのですが、約半日になるので通常の婚活パーティーより長く一緒にいることが出来ます。1対1での会話もありますが昼食を一緒に取って頂いたり、例えばイチゴ狩りに一緒に参加して頂いたりと通常の婚活パーティーより仲を深めることが出来ます。
    ありがたいことに婚活パーティーの中では、弊社が総動員数NO.1*の称号を頂いております。また、全国47都道府県で開催しておりますので基盤となるオペレーションが徹底されていることも強みのひとつです。全国で同じマニュアル、進行で統一しているので、「何処の会場でも安心して参加できます」というお声も実際に多く頂いております。

    競合他社ではありませんが関連業界との違いも明確にしています。交流会やサークルなどでは集まった仲間の中で恋愛に発展していくかと思いますが、当社の場合は“恋をしたい”という思いを大切にしています。

    人間いくつになっても“恋をしたい”と思うもの、友だち作りではなく“恋をしたい”と思う方々が集まっていることも差別化している内のひとつです。実際に参加されるお客様の中には将来を見据え、いずれ引越しの予定があるので現在住んでいるエリアとは違うエリアでパーティーに参加する方もいます。*東京工商リサーチ調べ

     

    Q. スタッフの教育で気をつけられていることはありますか?

    お客様により安心して婚活パーティーに参加して頂くために、全国で同一レベルのサービスを提供するということを徹底しております。アルバイトから社員まで、入社時にパーティー進行役のオペレーション(A4用紙で約10枚)を、一語一句間違えずに暗記するというテストがございます。何度か間違えると入社できません。こういったテストで同一のサービスを常に提供できるようにしています。

     

     

    Q. どのような婚活パーティーが人気ですか?

    やはり婚活バスツアーが一番人気ですね。四季を感じられるバスツアーでは会話も弾みますし、パワースポットで今後の縁結びの祈願など婚活に適したバスツアーを企画しています。お相手の方と会話をしながら目的地へ向かうので、距離感を縮めやすくカップル率も高くなっています。また、会話に困ってしまう方でも、行先があることで話題作りにそれほど困らずに会話を楽しめます。単独の参加者が8割と圧倒的に多いですが、グループで来られた場合でも固まらないよう、なるべくこちらでグループを分け、男女2名2名で散策などもしてもらっています。通常のパーティーよりもカジュアルなスタイルで参加して頂ける分、実際に「最初は戸惑いましたが、次第に楽しくなって、ツアーが終わるころには誘った友人に感謝するほど。楽しい時間を一緒に過ごしてくれた女性と、今は連絡を取り合う仲になりました。」(50代男性)というお声も頂いています。

     
     
    Q. 今後の展開として、将来像をどのように考えていらっしゃいますか?

    先ほども簡単お話ししましたが、シニア婚活は、まだまだ認知度が足りないなと感じています。60代~80代の方にもっと認知して頂き、現在用意しているパーティーは15対15ですが、25対25とより参加者を増やしていければと考えています。

    また、バスツアーやクッキングなど婚活パーティーのバリエーションをもっと増やしていきたいと思います。

     

     

     

    「婚活パーティーエクシオ」 ホームページ
    https://www.exeo-japan.co.jp/
     
    「シニア婚活」 ホームページ
    http://www.senior-mariage.com/
     
    株式会社エクシオジャパン ホームページ
    http://www.exeojapan.com/

     


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    少子高齢化社会からうまれた、
    より多くの人が使えることを目指した
    三菱電機のユニバーサルデザイン
    「らく楽アシスト」


    リビング・デジタルメディア技術部 坂田理彦博士
     リビング・デジタルメディア事業本部 家電映情事業部 香内由美子氏

    “より多くの人が使いやすい”と感じる家電商品の開発に力を入れている三菱電機。今、全商品がユニバーサルデザインになることをめざし、会社の本部方針として取り組んでいます。大手家電メーカーとして第一線を走るだけでなく、三菱電機がどのようにして高齢者対策も含めたユニバーサルデザインを牽引する会社になったのか、何故ユニバーサルデザインに力を入れてきたのか、どのような取り組みをされているのかなど、幅広くお話を伺いしました。

                                       2017年2月取材

     

    三菱電機株式会社

     


    Q. ユニバーサルデザインをどう定義していますか

    当社ではユニバーサルデザインを“らく楽アシスト”と呼んでいます。「らく楽アシスト」では、子どもから高齢者、また身体の不自由な人までできるだけ多くの人があん心して、らくに、楽しく使えるデザインを通じて「暮らしのクオリティ向上」を目指しています。また現在、「あしたを、暮らしやすく。SMART QUALITY」をブランド戦略に掲げ、少子高齢化など社会全体の課題と向き合いながら、できるだけ多くの方が使えることを基本にして製品を作っています。

    らくアシピラミッド_コンセプトブック

    “らく楽アシスト”の視点は大きく分けて3つあります。

    1点目は「Easy to Use=らくに使える」。これは一般的にいわれるユニバーサルデザイン、身体への負担を減らし使いやすさをアシストします。

    2点目は「Safe to Use=あん心して使える」。三菱電機の安全基準は非常に高く、通常の法規制よりも当社の安全基準のほうが厳しい場合が多々あります。

    これら「Easy to Use」、「Safe to Use」の二つの視点はマイナスをゼロにする取り組みですが、3点目はゼロをプラスにする取り組み「Fun to Use=楽しく使える」です。これは、製品を使うことで、使うことの楽しさをアシスト、使う時の心地よさをアシスト、また使う人のレベルアップをアシストする視点です。先程の「Easy to Use」、「Safe to Use」は従来から着々と実施している取組みであり、ある程度満足している製品が多いため、今後はこの「Fun to Use=楽しく使える」の視点をできるだけ多く盛込みたいと思っています。

    「Fun to Use=楽しく使える」の中でも最も必要性を感じている視点は“使う人のレベルアップをアシスト”です。人と製品の理想的な関係は、使い込んでいくうちに、人も製品も学習し、賢くなったり、レベルアップすることだと考えています。

    例えば、料理は段取りを必要とするパラレル作業で、高度な認知活動と捉える事ができます。つまり、複数の献立を朝食や夕食の時間までに同時に仕上げる必要があります。作業工程や効率を考える事で頭を使い認知能力の維持に役立ちますし、キッチンを動き回る事で身体能力の維持にも役立ちます。

    安全でかんたんに使いこなせる調理製品であれば、高齢者でも料理をし続けることを促すことが出来ますし、料理が不得意な若い主婦でも、かんたんに料理が出来れば、いつもと同じシンプルな料理からちょっと手の込んだ料理へトライしようという意欲を促すことができ、自然にレシピのレパートリーが増え、調理上手になるかもしれません。

    当社のIHクッキングヒーター,レンジグリル,ジャー炊飯器,冷蔵庫等のキッチン製品は、安全性はもちろん、操作が簡単で誰でも迷わず料理を行うことが出来、ユーザー自身の料理の腕もレベルアップすることを目指しています。

     

     

    Q. 「らく楽アシスト」導入の歴史をお伺いしても良いでしょうか

    世界的には1970年代に“バリアフリー”、80年代にかけては誰でも使える“ユニバーサルデザイン”が提唱されてきました。当社でも研究所や個々の製品開発の中では同様の時期から取り組んできましたが、本部方針として組織的なユニバーサルデザイン活動を開始したのは2005年にブランド戦略「ユニ&エコ」を立ち上げたときからです。

    当初は超高齢化社会に対応するため、高齢者配慮に重点を置いていましたが、2008年にブランド戦略を「ユニ&エコチェンジ!」に変更したタイミングで少子高齢化の視点から、対象を「子どもから高齢者の方々」に広げました。2010年からは三菱ユニバーサルデザインの名称を「らく楽アシスト」として活動を強化しています。

     

     

    Q. 社内での教育やスタッフ育成で取り組まれていることはありますか

     

    札幌市立大学での社外講義風景

    札幌市立大学での社外講義風景


    社内では、年に数回、基礎講座(e-ラーニング)が開催されユニバーサルデザインの基本事項やデザインのコツを共有し、製品の使いやすさの向上を目指しています。

    そのほか高齢者や車いすの疑似体験、ユーザー評価の実践講座などもあり、三菱電機グループ全社員を対象にしています。実際に私(坂田)が講師として登壇していたこともあります。

    また、社外の大学や専門学校から特別講師としてお招き頂き、ユニバーサルデザイン及び三菱ユニバーサルデザイン「らく楽アシスト」の取り組みなどを講義することで、将来の日本のデザイナーを育成するお手伝いにも努めています。

     

     

    Q. ユニバーサルデザインで考えるシニアの定義は何ですか

    一般的にシニア(高齢者)は65歳以上と言われますが、らく楽アシストでは”60歳の方が定年退職をして10年後にも使える商品を提供しよう”ということを目指しています。その為、ユニバーサルデザインの社内ガイドラインの基準値は70歳以上に設定しています。

     

     

    Q. シニアに対する取り組みは何かされていますか

    そうですね。1人、2人世帯が増え、高齢者の人口が増えていることから、そういった方々を対象にした商品の情報を改めて発信する必要があると考え、当社の生活お役立ちサイト「Club Mitsubishi Electric」上で“三菱大人家電”を立ち上げました。ターゲットとしては高齢者の方を含む大人世代(予備軍も含めた50歳以上の方)で考えています。

    三菱大人家電は、大人世代の方々が家電量販店で自身に合う商品を見つけ出すことは難しいのではないか、よりスムーズに商品を訴求できるキッカケはないのかと考え2015年8月から発信を始めました。サイト内では、三菱電機の家電の中から厳選した10製品を掲載し、よくある高齢の方からのお悩み相談を紹介しています。

    実際に当社のお客さま相談センターにも高齢の方からの声が増えています。一例ですが「夫婦2人。現在1合~1.5合でお米を炊いているがおいしく炊けない。三菱のものでおいしく炊けるものを教えてください。(80代男性)」 「コンロをガスからIHに買い換えたいがどの製品を選んだら良いかわからないので教えてください。(70代女性)」等、実際にこのような相談が入ってきています。

    “これからの暮らしにちょうどいい大きさ。カンタンに操作できて、使い勝手に優れたもの。そして、上質な暮らしにふさわしい暮らしを快適にしてくれる機能が充実したもの。”をモットーに長年家電を見てきた方々に対し三菱の家電を使うことで暮らしを豊かにしてもらいたいと思っております。そのような思いから三菱大人家電を提案しています。

     

    らく楽アシスト

     

     

    Q. 今後「らく楽アシスト」をどう展開していきたいと考えていますか

    日本の少子高齢化は深刻であり、世界は日本の対応を見ていると思います。少子高齢化のソリューションを提供するのは日本の使命であり、電機メーカーの中では当社がリーディングカンパニーとして引っ張っていくべきと思っています。そのために今後もできるだけ多くの人に使いやすく、やさしい商品の開発を愚直に継続、強化していくつもりです。

    商品力、市場における認知力ともにまだまだですが、近い将来、電気屋さんでお客様から「どの商品が使いやすいですか?」と聞かれたときに、店員さんがすぐに「三菱電機」を想起していただくよう、今後も活動を続けるつもりです。

    そして、少子高齢化対応において三菱電機が世界のリーディングカンパニーになることを目指します。

     

     

    三菱電機株式会社
    http://www.mitsubishielectric.co.jp/

    SMART QUALITY(スマートクオリティ)CONCEPT(らく楽アシスト)
    http://www.mitsubishielectric.co.jp/sq/assist/rakuraku/

    生活お役立ちサイト「Club Mitsubishi Electric」
    http://www.mitsubishielectric.co.jp/club-me/

     

     


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    乳幼児用紙おむつの研究開発から生まれた
    高齢者向け歩行解析装置

    開発研究第2セクター パーソナルヘルスケア研究所 仁木佳文氏 須藤元喜氏

    乳幼児から高齢者まで膨大な歩行データを収集し、研究を重ねてきたパーソナルヘルスケア研究所。今回は、わずかな距離を歩行するだけで個人の歩行の特徴が測定出来る装置「ヘルスウォーク」と、高齢者の歩行を支援する「ホコタッチ」、そして高齢者が積極的に外出するきっかけとなっている「ホコタッチスポット」についてお話をお伺い致しました。

                                       2016年10月取材

     

    シニアマーケット シニア向け商品

     


    Q1. シニア向け歩行解析装置を開発した経緯について教えて下さい

    当社は乳幼児用紙おむつの開発を通して、数多くの乳幼児の歩行パターンを研究してきましたが、その歩行解析のノウハウを高齢者にも当てはめる事が出来ないだろうか、また、高齢者の歩行を支援する方向にも使えないだろうかと考え、歩行パターンが解析できるシステムを開発する事になりました。

     しかしながら、歩行の特徴は様々で、平均値などのデータをまとめていくことは決して容易ではありません。その為、まずはより多くの歩行データを収集する為、乳幼児から高齢者まで一万人以上の歩行データを収集し、それらの分析を進めていくことにしました。

     分析を進めていく中で、高齢者の歩行を細かく解析していくと、健康維持の為には、歩数や歩行時間(量)だけではなく、歩行速度や歩き方(質)も重要であるという事が、だんだんとわかってきました。

     また、歩行パターンの解析データは、ただ数値化したものではなく、高齢者がわかりやすいように「可視化」できるように開発を進め、高齢者の歩行の量と質を向上させることを目的とした、わかりやすい独自の歩行支援プログラムが開発され、「ヘルスウォーク」が誕生したのです。

     

    シニアマーケット シニア向け商品

     

    このヘルスウォークは、各地の商業施設や高齢者施設などで実施している測定会でご利用頂く事が出来ますので、まずは多くの方に興味を持っていただき、歩行に対して関心をもってもらえたらと思っています。また、普段の高齢者の生活の中でも、手軽に歩行を計測出来るようにしたいと考えていましたので、コンパクトサイズの「ホコタッチ」という健康サービスも開始致しました。

    シニアマーケット シニア向け商品

    ホコタッチは、独自の分析手法から日常生活における歩数、歩行速度、そして生活に応じた「歩行生活年齢」などの指標を提示してくれる特徴がありますが、これらの結果は「ホコタッチスポット(データの読み取り場所)」で、専用シートを印刷して結果を確認する事が出来るのです。また、装着して普段歩いていると歩行計内にどんどんデータが蓄積されていくのですが、ホコタッチスポットでの最終通信時から30日以上経過すると画面にTOUCHと表示され、歩数が非表示となりますので、ホコタッチスポットに行くタイミングをお知らせしてくれます。

    一見、不便に思われるかもしれませんが、わざわざホコタッチスポットに出向かなければならない機能やWEBやスマホを使わないようにしているのは、実は当初から考えていた事です。このような設定により、高齢者が外出するきっかけとなりますし、皆さんがホコタッチスポットに集まることにより高齢者同士のコミュニケーションがうまれるのです。

    ちなみに、ホコタッチスポットは、パソコンとプリンタが設置可能な屋内であればどんな場所でも大丈夫です。ホコタッチユーザーは、ホコタッチを専用リーダーにかざすだけで簡単に結果シートが出力できますので、高齢者にも大変使いやすくなっています。



    Q2. 研究開発の際、特にご苦労された点について教えて下さい

    乳幼児の歩行は「成長」に向かっている段階なので、比較的データを解析しやすいのですが、高齢者の歩行は、今までの生活や体の老化などが原因となり、バリエーションがより増えてしまう為、解析するのが非常に困難でした。また、データを取得する段階でも、高齢者が転倒しないか、怪我をしないかなど、お一人お一人をケアしながら、十分に注意をして作業を進めていく必要がありました。

    更に、取得したデータをどのような特徴としてフィードバックするか、指標に対して高齢者にどのように説明すればわかりやすいのか、なども苦労した点です。

    例えば、膝に痛みがある高齢者は多いのですが、それが普段の歩行とどのように関係しているのか、今後はどのようにすれば良いのかなど、出てきた数字を元に説明し、アドバイスをする事は決して簡単な事ではありませんでした。しかし、歩行データにはどのような意味があるのかなどの価値観を伝えて理解してもらう事が大切ですので、出来る限りお一人お一人丁寧に対応致しました。


    Q3. 導入実績などを教えて下さい

    愛知県高浜市で行われている取り組みをご紹介したいと思います。高浜市は人口が約47,000人で、2013年度から「健康自生地」という仕組みをスタートさせています。何歳になっても自分らしく生きがいをもって、可能な限り介護を必要としない暮らしを続けてもらうために、家に閉じこもらずに自ら出かけたくなる場所、仲間と触れ合える居場所を「健康自生地」と設定して、このような場所を市内に増やす取り組みを積極的に行っているのです。

    健康自生地は、商店や飲食店、公共施設など高齢者同士のコミュニケーションが取れる場所にしていますが、そこではポイントがもらえるアクティビティを実施したり、賞品が当たる抽選会など楽しいイベントを開催したりしています。

    現在、日本国内では多くの自治体が高齢化の問題と直面していますが、高浜市では積極的にその問題に取り組んでいるのです。

    そして、この高浜市で2015年9月から国立研究開発法人国立長寿医療研究センター島田裕之予防老年学研究部長と花王と高浜市の協働プロジェクトを開催し、採血検査や体組成、筋力に加えて、認知機能の測定及び歩行機能の計測を行っています。
    特に、歩行機能に関しては、ヘルスウォークを使って計測、解析を行っており、高齢者が積極的に外出して歩くことをサポートする仕組みを提供しています。

    また、健康自生地にはホコタッチスポットを設置して、歩行計を持っている高齢者が、より積極的に健康自生地に出かけられるようにしました。その為、高齢者の外出機会が増えて、多くの方が意識的に歩くようになり、また飲食店などの健康自生地には高齢者の来店客が増え、町全体が活性化しています。

    このように、ホコタッチは歩行の質を高めるだけでなく、高齢者の社会参加を後押しして、心身両面から認知症や介護の予防に役立たっており、更には町の活性化にも寄与させて頂けることは大変喜ばしく思っています。今後もこのような場所を全国各地に広げていきたいと考えています。


    Q4. ご利用者の反応はいかがでしょうか

    高浜市などの自治体以外にも、ヘルスウォークによる歩行測定会は全国各地で行っていますが、毎回とても好評です。測定結果で歩行年齢などが表示されますので、「若くなるにはどうすれば良いの?」「もっと健康になりたい」などという前向きなご質問も多くあります。
    また、測定会は不定期で開催しているのですが、測定後に参加者の方から「次はどこで開催するのですか?」などと興味をもってもらうことも多々あります。

    ホコタッチのご利用者も、ホコタッチスポットでは人とのつながりが自然とうまれますし、歩行という楽しみが増えて、ホコタッチが共通の話題になっている事も多いようです。また、普通の活動計だとそのまま継続して使えると思いますが、ホコタッチの場合、定期的にホコタッチスポットに行かなければなりませんので、それが外出するきっかけとなり、ご利用者からも「ホコタッチスポットでの対話が嬉しい」、「積極的に歩く事が増えた」などという反応もあります。また、ニックネームで順位が表示されますので、楽しみながら健康にも興味をもってもらい頑張っている高齢者が多くいらっしゃいます。

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    ホコタッチの結果シートでは、歩行速度や歩数などの活動結果がわかりやすく数値で表示され、更に総合的にそれらを4段階で評価します。その他、活動カレンダーや活動タイプが印字されますので、日常歩行の振り返りができます。ご利用者からも「ホコタッチシートがわかりやすい」、「自分にあった歩数や速度がわかった」などの声もあり、高く評価して頂いています。

     

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    Q5. 今後の事業展開について教えて下さい

    今後も全国各地での歩行測定会を通じて、多くの高齢者に歩行への興味をもってもらいたいと思っています。また、より多くの高齢者施設や高齢者が集まる場所に導入し、各自治体や企業にも積極的に活用してもらいたいと思っています。

    更に、海外の方にもご利用頂けるような機能も今後は必要だと考えています。日本と海外では、体型だけでなく、歩く環境や歩き方なども違いますので、クリアしなければならない問題や未知な部分など課題も多くありますが、是非チャレンジしていきたいと思います。

    また、歩行装置そのものをより簡便化する事も必要だと考えています。例えば、今は靴を脱ぐ必要があるのですが、靴を脱がなくても計測できるようにすることや、歩行したら瞬時に結果が出るなど、より気軽に計測できるようにしたいです。また、簡便化とは逆の発想になってしまいますが、より深いデータをフィードバックしていくことも重要だと考えています。

    更には、何か楽しみながら歩行が出来るような仕組みも取り入れて、より多くの高齢者に興味をもってもらい、意識的に歩くことにより高齢者の外出機会が増え、コミュニティが更に活発になるようにサポートしていきたいです。

     

     

    花王株式会社
    http://www.kao.com/jp/

    食と健康ナビTOP
    http://health-food-bev.kao.com/

    歩行測定記事
    http://health-food-bev.kao.com/movablebody/1016/

     

     


     
     
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