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第21回 株式会社留学ジャーナル

50代以上の留学プログラム
『大人の留学』

代表取締役副社長 加藤 ゆかり氏

創業から45年もの間、国内最大級の約20万人もの留学生に選ばれ続けている留学エージェント「留学ジャーナル」。2016年には、アジア最優秀留学エージェント(ST Star Agency Asia)に選ばれ、雑誌『留学ジャーナル』の発行を始めとして、留学に関する様々なサービスを展開していますが、今回は、シニア向けの留学プログラム『大人の留学』についてお話をお聞きしました。

2016年11月取材

 

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Q. シニアマーケットに取り組むきっかけと貴社が考えるシニアの定義について教えて下さい

年配のお客様から「私の年齢で留学出来るプログラムはありますか?」などのお問合せは、以前からたくさん頂いておりました。どうしても、留学は「学生が行くもの」というイメージが強かったからだと思いますが、留学を「旅行の延長」くらいに考えてもらいたいと思い、どの年齢でもチャレンジできるものにしようと取り組みを始めました。また、媒体の進歩もあり、シニアにアプローチしやすくなっている事もきっかけの一つとなりました。

取り組み始めた当初は、「45歳以上」をアクティブシニアと定義していたのですが、その年齢だとまだまだ若い方が多く、シニアとは呼べないと感じました。一方、海外の語学学校では、30歳以上・40歳以上・50歳以上の限定クラスというように、年齢制限を設けているプログラムがあり、その中でも一般的にシニア向け留学プログラムとして提供されているのが「50歳以上のプログラム」です。その為、現在では50歳以上の方をシニアと定義し、パンフレットやホームページなどでご紹介していますが、実際は年齢を強く意識しているわけではなく、どの年齢でもどんどん留学にチャレンジしてもらいたいと考えています。

Q. シニア向け留学プログラム「大人の留学」の特徴を教えて下さい

シニアのお問合せは、以前からありましたが、その際は、通常の留学プログラムをご紹介していました。しかし、もっと多くの方に、そしてシニアの方でも気軽に留学するきっかけをご提供したいと考え、シニア向けの留学プログラムを「大人の留学」と名付けてリリースしました。ホームページやパンフレットなども、デザインを落ち着いたテイストにし、更に「大人」と表現することにより、留学を身近に感じて頂きやすくなったようで、お問合せ件数も大変増えています。

中でも、海外の語学学校に通いながら、現地の一般家庭にホームステイするプログラムは、若い方と同様にシニアにも人気があります。また、留学先では「イギリス」が人気です。文化を学びたいとか、若い頃に憧れた風景や音楽を肌で感じたいとか、交通の便など動きやすさのご希望条件を考えますと、こちらからもイギリスをおすすめする事が多くなります。また、最近では「マルタ島」もとても人気があります。メディアでも度々紹介されていますし、地中海のリゾート暮らしに憧れる方も多いようです。

今の50代、60代のみなさんが学生の頃は、英語の授業が普通にあったと思います。学生時代にどの位英語を勉強してきたかにもよるのですが、最終学歴が大卒というシニアも多いので、基本的な英語を勉強してきた方であれば、3ヶ月も海外で生活をしたら、それほど生活に困らなくなると思います。是非多くの方に「大人の留学」にチャレンジしてもらいたいと願っています。

 

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Q. シニアの対応で気を付けている部分などはございますか

年齢に関わらず、「常にお客様目線にたって考え、対応する」という事を一番大切にしています。留学は、決して安い金額のものではありませんので、期待もそれなりに高くなります。その期待にしっかりと応えられるように、お客様の目線で物事を考え行動しています。ただ、シニアの方から見ると、自分の子供や孫のようなスタッフが関わる場合もあるわけですから、丁寧な言葉づかいや接遇などができるように、営業スタッフのみならず、他の全スタッフにも研修を行っています。



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また、旅行の場合は、滞在するホテルがオーシャンビューだとか、交通の便が良いとか、選んだ条件がその方の希望通りであるかどうかは明確です。しかし、ホームステイとなると、人と人の相性もあり、Aさんが良いと評価したホームステイ先をBさんが悪く評価するなど望む条件に完璧に沿うかどうかは難しい部分があります。ホテルのように、部屋を変えればいいという単純なものではありません。また、ホームステイもお金を支払って泊めていただいているとはいえ、見知らぬ外国人を滞在させてくれていることに感謝の気持ちを持つことも大切です。

異文化の中で、思い通りにならないことも経験していただくのが「留学」ですから、留学プログラムの内容に関しては、誤解の無いようご理解いただけるように丁寧に説明をしています。その為、シニアのお客様への対応は、ある程度経験を積んだ留学カウンセラーが担当するようにしています。


Q. シニアマーケットをどのように捉えていますか

留学は、一生のキャリアの中の一過程であり、一生の中でいつ行っても良いと考えてiいます。自分の人生を豊かにする、子供の頃のあこがれや夢を実現するということがシニア留学の目的にはあると私たちは思っています。実際に、留学したシニアのお客様は、ビジネスで必要というよりも、自分の学生時代には資金的制約があり行けなかった、もしくは、行けないと思い込んでいた方々が多いです。大人になって今度は、仕事や家庭が忙しくなって時間がなくなった。そうした方々がシニア世代になり、時間とお金に余裕が出てきた今、「自分でも留学に行けるんだ」と興味をもつようになったり、海外に住んでみたいと考えたりするなど、潜在的なマーケットはかなり大きいと思っています。


Q. 競合や類似サービスとの違いはございますか

お客様が考えている「自分の海外体験像」のイメージに近いものを、いかに現実として提供できるかが重要ですの
で、その為に必要な情報量、リサーチ力、海外ネットワークなどを持っているのが他社との違いかと思います。そのあたりは、提案力が勝負だと思っていますし、その点にも自信があります。

また、雑誌『留学ジャーナル』は雑誌として存在するので、商品ラインナップのパンフレットとは異なり、よりリアルな部分をお伝えすることができていると思います。また、雑誌として書店に並んでいるので、英語の勉強をしたいと思って書店に行った時や図書館で『留学ジャーナル』を手に取ってもらえれば、シニア世代を含めた留学生の体験談なども載っていますから、留学に興味をもって頂きやすいと思います。その為、媒体を持っているということが一番の強みだと思っております。

 

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Q. 今後の展開をどのように考えていますか

当社の親会社は、英会話のイーオンですが、趣味で英会話を習っているようなシニアの方々に、一つの経験として海外留学にもチャレンジして頂けたら嬉しいです。外国の方と日常的にお話しをしたり、外国で様々な体験をしたりして、綺麗な英語だけではなく多様な文化なども学んで頂きたいと思っています。

また、シニアの方々が「留学を経験して良かった」と思って頂ければ、その子供や孫世代にも留学の魅力が伝わっていくと思います。早い時期に留学という選択肢がある事を分かっていたり、その成果が分かっていたりすると、もっと若い時代に行けたらより豊かな人生につながったのではないか、と感じると思います。

シニアの方が、留学に行って終わりではなくて、留学の魅力を次の世代に伝えてくれるように、プログラムやサービスの質を更に向上していきたいと思います。

 

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株式会社 留学ジャーナルホームページ
http://www.ryugaku.co.jp/


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0歳から一生涯の健康づくりに貢献する

執行役員 介護予防事業部長 相川正男氏  
介護予防事業部シニアマネージャー 大東俊彦氏 
経営企画室マネージャー 平山智志氏


スポーツ健康産業のパイオニアである「セントラルスポーツ株式会社」。1969年に「世界に通用する選手を育てる」という目標を掲げて開校された水泳教室と体操教室に端を発する「スクール事業」からその歴史はスタートしました。その後も「フィットネス事業」、「レジャー関連事業」と様々な事業を展開してきましたが、今回はスポーツクラブのパイオニアだからできる「介護予防サポート事業」に関してお話しをお聞きしました。

2016年10月取材

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Q.介護予防サポート事業を始めた経緯と内容について教えて下さい

当社として「介護予防事業部」を立ち上げる以前より、民間の老人ホームから「インストラクターを派遣してくれないか」というお声はいただいており、できる限り対応していました。その後、2005 年に(地独)東京都健康長寿医療センターから「介護予防運動指導員」の育成事業に協力してもらえないかと、当社にお声がかかったことがきっかけとなり、この事業を開始する事になりました。

当時、当社のフィットネスクラブの会員様で高齢の方の割合がどんどん増えてきたことで、「高齢者の運動指導に対する知識をもっと深めたい」というスタッフが多くいたこと、また、デイサービスや高齢者施設で働いている介護福祉士やヘルパーの方々で「科学的根拠に基づく適切な運動指導のノウハウを学びたい」という方も多くいたことから、まずはこのような人達に資格を取ってもらおうと考え、「介護予防運動指導員養成講座」を開催し、介護予防スタッフのための教育や人材育成に力を入れていきました。

現在、介護予防運動指導員は全国に約3 万人になりますが、その内当社主催の養成講座卒業生は約6千人います。また、毎年全体で約2 千人が資格を取得されていますが、その内約700~800 人が当社で養成した資格取得者となります。ただ、当社では資格取得だけが目的ではなく、実際に現場で働いてもらうことを意識していますので、資格を取得したら当社にお仕事登録をしてもらい、定期的に研修を行った上で、介護予防運動指導員として活躍して頂いています。

実際に、地方自治体で実施される介護予防事業には、現地に近い登録スタッフが教室の運営を担当したり、最寄りに当社のクラブがあればそのクラブに所属する有資格者を出張させています。また、老人ホームなどで実施しているプログラムでは、食堂などに椅子を並べて、車いすの方や認知症の方も含めてみんなで運動などのアクティビティをしています。普段はほとんど反応のない認知症の方が、体をピクっと動かすこともあり、施設の方やご家族の方に大変喜ばれています。

今では、その施設も200 以上になりますが、今後は老人ホームだけでなく、デイサービスやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などにも広げていきたいと考えています。

 

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Q.「シニア」をどのように定義されていますか

当社はフィットネスクラブに所属する会員様の年齢構成を10 歳刻みで管理しているということもあり、便宜上「60 歳以上」を「シニア」と設定しています。ただ、実際のところは年齢だけで一律に「シニア」と定義してしまうのは適切ではないと思います。高齢者の中でも体力がある方や無い方、また虚弱な方など体力面でも個人差がありますし、運動するにあたっての目的も様々です。あくまでもその方々の「ニーズ」にあったプログラムをご提供することを大切にしています。

近年、フィットネスクラブの会員様の年齢構成を見ると、最近では50 歳以上、60 歳以上の方の割合が増えてきています。こうした状況下、「60歳以上」と一律にくくるのではなく、アクティブな方には若い方と同じようなプログラムを、体力に自信がない方には、無理のないソフトなプログラムをご用意するなど、ひとりひとりのニーズにお応えできるサービスをご提供しなければならないと考えています。

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高齢者の体力をピラミッドで分けますと、スポーツクラブに通う程元気で健康意識が高い「体力エリート高齢者」が一番上にくるのですが、全体的な割合ではごく一部で、その下の、元気ではあるけれど体力低下が懸念される「一次予防」の方の割合がかなり多いのが現状です。またその下には、介護予備軍となる「二次予防」に該当する虚弱な高齢者、更に支援や介護が必要な「介護認定者」と区分されますが、介護予防事業部としては、地域支援事業などを通じて介護予備軍を元気にしていくこと、ボトムアップしていくことが重要だと考え取り組んでいます。

 
Q.シニアマーケットをどのように捉えていますか。また、シニアに対する貴社としての今後のお取り組み予定があれば教えて下さい

高齢者全体の約80%は元気な方々なのですが、その内の3~5%程度しかスポーツクラブなどの運動施設に通っていないのが現状です。その為、潜在的には高齢者のマーケットはまだまだ拡大の余地があると考えています。最近は、ヨガスタジオや小規模ジムなど、比較的小規模な専門型クラブが増えていますが、当社はフィットネスクラブとしての役割だけではなく、高齢者の方々の社交場の一つとして、総合型クラブならではの特徴を強みとしていきたいと考えています。つまり、ただ運動の場を提供するのではなく、メンバー間で仲間づくりをしてもらい「クラブライフ」を楽しんでもらいたいのです。

例えば、スポーツ以外でも英会話教室、パソコン教室など楽しいアクティビティを通じて高齢者の方に集まってもらえる場を積極的に提供しているクラブもあります。運動による「身体の健康」はもちろんのこと、「心の健康」にも貢献できる場を創造していきたいと考えています。

 

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また、当社は旅行業の資格ももっているのですが、同じクラブに通う仲間と行く日帰りのウォーキングツアーなどは大変人気があります。気軽に参加できて、楽しみながらしっかり体も動かせるので、高齢者の方でも楽しんで頂けるツアーの一つです。

また、毎年12月に開催される「ホノルルマラソンツアー」は27 年間も継続している恒例行事となっており、毎年約800 人の参加があるビックイベントです。フルマラソンというとハードルが高そうなイメージがありますが、実はシニアの方の参加も非常に多いのが特徴です。「一生に一度はフルマラソンを走ってみたい」という想いを持っている方は少なくありません。私たちは、そうした方々の想いを後押しし、感動のゴールへと導くトレーニングをサポートしていきます。ここでもやはり、参加者の皆さんが同じ目標を共有する「仲間」と出会い、一緒にゴールを目指していくことで、時にはつらいトレーニングも乗り越えられるのです。

フルマラソン完走という大きな目標を達成し、仲間と感動を共有しているシニアの方々の姿は、私たちが目指す「0歳から一生涯の健康づくりに貢献する」という企業理念を具現化したものだと思います。

 

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その他、水泳は当社の得意分野ですが、「マスターズ水泳大会」を全国各地で開催しており、こちらも1000人以上の方が参加するビックイベントで毎回盛り上がっています。運動は、そのもの自体、スキルの向上や体力アップなどの達成感がありますが、それに加えて仲間が増えたり、仲間と楽しんだり、モチベーションを維持する為にも定期的なイベント開催はとても大事だと考えています。

 

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Q.地域に根ざした介護予防事業の今後の展開について

体力測定など気軽に参加できるイベントを通じて、まずは運動や健康に興味をもってもらうことが重要だと考えています。また、効果測定をして数値化する、つまり「見える化」することが大切だと思っています。トレーニングは基本的には単調で面白味にかけるものととらえられがちです。その為、様々なデータを元に参加者をサポートし、参加者にあったプログラムをスクリーニングして提供し、運動を継続してもらうことが重要です。

当社はさいたま新都心にデイサービスも運営していますが、ご利用者の多くの方はインターネットなど最近のものにも興味があり意欲も高い方が多いです。例えば、スマホやタブレットを使っての認知機能向上プログラムも大変好評です。さらに、地域に密着した様々なイベントを企画、開催し、高齢者に興味を持ってもらい、より多くの方に健康に対する興味をもってもらえるように努力していきたいと考えています。

また、できれば介護予防事業の参加者が、その後当社クラブにも足を運んでもらえれば、同じような高齢者の方がたくさんいますから、「自分にも出来るかな」という気持ちになってもらい、運動を継続してもらえたら嬉しいです。

 

シニア マーケット

 

Q.プログラム開発で苦労したことや、他社サービスとの違いなどがあれば教えて下さい

当社は1982年に民間で初めてスポーツ科学の研究所をつくり、科学的トレーニングをはじめ、長期にわたってデータ取りや測定などを行ってきました。自社で開発した運動プログラムの効果測定も研究所で検証をおこなっており、安全で効率的で楽しく実施できるプログラムを提供するように努力しています。

また、会員やインストラクターとのコミュニケーションの取りやすさも当社の特徴です。フィットネスクラブに入会する際は、ほとんどの方が個人でお申込みされますが、その後グループエクササイズなどに参加し、会員やインストラクターとのコミュニケーションを深めていく方が多いので、クラブ側が会員のコミュニケーションを取りやすくする事も大切です。参加率の高い会員は、継続してご利用頂ける可能性も高く、会員からの紹介入会も増える事につながりますので、当社ではどこよりもコミュニテイーづくりを大事にしています。

 

シニア マーケット

 
Q.高齢者施設指定管理受託事業について教えて下さい

港区の高齢者施設を複数管理しています。介護予防としては23 区内で初めての施設である港区立介護予防総合センター「ラクっちゃ」では、様々な企業と組んで高齢者向けのプログラムを行っています。

例えば、このセンターには調理施設があり、独居の男性高齢者を主な対象者とした料理教室なども大変好評です。この料理教室では、ただ調理を行うだけではなく、材料の準備なども必要がありますので、段取りを考える事により、認知症予防にもつながります。

また、スポーツクラブで行っているプログラムを高齢者向けにアレンジして提供したり、新しいプログラムを開発するために、多業種との共同研究も行っています。実際に効果が出たプログラムは、他の地域にも広げていく予定です。

 

セントラルスポーツ株式会社ホームページ
http://www.central.co.jp/


 
 

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IoTを活用したシニアの
ライフスタイル向上のための
新たな補聴器サービス

株式会社nessaJapan (ネッサ ジャパン)

シニア向け商品
シンガポールに本社を置くnessaの⽇本法⼈として本年5⽉にスタートした株式会社 nessa Japan。最新のテクノロジーによって、新しい「きこえの体験」を提供するサービスを2016年8⽉より⽇本国内にて初めてスタート。2016年7月15日開催のプレスカンファレンスで発表されたサービス概要についてご紹介いたします。

2016年7月 取材


nessa Japanについて

 nessaは2015年10月にシンガポールで設立した補聴器のグローバルカンパニーです。単なる補聴器販売会社としてではなく、ネットワーク端末を介したコンシェルジュサービスと、「きこえ」のライフスタイルを豊かにする付加価値をパッケージ化して提供しています。
 現在、シンガポールをビジネス拠点として、2016年5月から日本法人としてスタートすることになりました。
 また、今後はマレーシアでも展開する予定です。
 日本総人口の約11%、約1,400万人が聴覚困難であると言われています。しかしながら、補聴器を使用しているのはそのうちの約13%にとどまっており、多くの高齢者の方々が不自由な生活を強いられています。この現状こそが、我々が日本マーケットに進出する大きな理由です。
 高齢者の生活を良くすることの一つ、「きこえ」に対するサポートをすることが、我々の使命であると考え、IoTの技術を用いて、遠隔操作を基盤にしたオンラインサポートをコアコンピタンスとして、今後1年間で約12億を投資し、12月までにシェア1%を目指して参ります。

シニア向け商品

 
 
日本における難聴者と補聴器難の現状

 高齢者の方々は、耳が聞えないことで社会とのつながりが希薄になるという現状があります。
 日本で300人の方に「聴力が衰えることで起こったことを教えてください。」と聞いたところ、51%の人が「声が聞こえにくいことで、人と話しづらく感じた」と答えています。また、28%の方が「職場での会話が聞き取れず、話についていけなくなった」、「テレビやラジオなどの音量を注意された」と答えています。このことから、聴力低下により、様々な不安を抱えている人が多くいることが分かります。
 また、アメリカの老人病学会によると、コミュニケーションができる人とできない人とでは、社会的な関わりに大きな差があり、コミュニケーションが少ないと不安定になり、社会的な関わりが少なくなるそうです。更に、補聴器を使用して聴覚が回復すると、認知低下を防げるとも言われています。

 

シニア向け商品 アンケート

 
  補聴器に対するイメージを聞いたところ、43.3%が高額である、24.7%がボリューム調整やメンテナンスが面倒、23.3%が補聴器を使用することで、本当に聞えるようになるのか不安だと答えており、補聴器の使用に際して大きな壁があることが分かります。

 
シニア向け商品 アンケート
 
 これらのことから、我々は、高齢者と補聴器の間にある壁を取り除き、ローコスト化を実現し、難聴がある高齢者に、より快適な生活をしていただきたいと考えています。
 
nessaのIoT技術を活用したサービスの特長

 単なる補聴器販売会社ではないということをお話しましたが、我々のサービスの特徴は大きく3つあります。
 1つめは、高性能な補聴器を提供しているということです。我々が提供している補聴器は、Apple社と共同開発しており、ワイヤレス通信が可能なスマート補聴器として、iPhoneやiPad等のiOSや、テレビ等の機器との連動が可能です。また、デンマーク製で、世界各国での販売・利用実績があります。世界トップクラスの小サイズで、デザイン性も高く、着け心地も非常に良く設計されています。
 2つめの特徴として、無制限でオンラインサポートをご提供しています。コールセンターにきこえの専門スタッフを配備していますので、高齢者に対しても親切なオンラインサポートを無制限でご利用いただけます。更に、遠隔操作によってお客様は、家にいながらにして補聴器の調整設定を受けることが可能です。
 我々のサービスにお申込みいただくと、世界初の「ホームリモートボックス」をご自宅にお届けいたします。このボックスの中には、4G/LTEのSIMカードが内蔵されていますので、補聴器とネットワーク接続することで遠隔操作を行うことが可能です。この遠隔操作によってフィッティングから、随時調整を行います。つまり、このボックスがご自宅と我々のコールセンターをつなぐ基地になるということです。

シニア向け商品 リモートボックス


 もう1つはライフスタイルの付加価値のご提供です。我々は店舗販売ではなく、無店舗販売を基本としているため、エコシステムという考え方のもと、そこでうまれる利潤はできる限りお客様にフィードバックさせていただきたいと考えています。具体的には、補聴器と共にパッケージされた3つのコースからお客様にお選びいただけます。

1. iPadコンシェルジュ

 iPadmini4を補聴器と一緒にお届けします。お届けするボックスにはwifiが内蔵されていますので、iPadminiからLINEやskypeの他、インターネットを活用したい高齢者の方々に対してのテクニカルなサポートも行います。

シニア向け商品 iPadコンシェルジュ

2. ライフスタイルコンシェルジュ

 耳が聞えるようになった方がより外での生活を楽しんでいただけるよう、ヨガや陶芸体験、ハイキング等、ソウ・エクスペリエンス株式会社と提携した体験型のギフトチケットをお届けします。


シニア向け商品 

 

3. TVコンシェルジュ

 32型テレビとTVストリーマーを合わせてお届けさせていただきます。このストリーマーは、テレビを見る時に使用できるものです。ワイヤレスでテレビから音を直接取り込み、7mの距離までクリアなステレオサウンドでテレビを楽しむことができます。

シニア向け商品 TVコンシェルジュ

 これらのサービスは、まずコールセンターにお申込みのご連絡いただき、聴覚測定を行った上で、「ホームリモートボックス」をお届けするという流れになっていますので、ご自宅にいながらにして全て完結させることができます。
 サービスの販売開始は8月上旬を予定しています。

 

これまでになかった価格設定~月額の会費制

 前述のとおり、補聴器のイメージの1位として「本体代が高い」という大きな壁がありますので、ローコスト化を目指しています。
 具体的にお話すると、片耳・両耳のコースがあり、片耳では月額4,600円、両耳では月額7,900円で3年間提供いたします。3年後は新しい補聴器をご契約いただくか、月額料金を下げてまた契約していただくことになります。
 また、1か月間の無料お試し期間を設けていますので、まずは製品を試していただき、ご納得いただいた上で本契約という流れになります。
 はじめに初期の補償金として2万円頂戴しますが(本契約いただいた場合は販売価格に含まれます)、仮に無料期間中ご納得いただけなかった場合は、全額返金させていただきますので、どなたでも気軽にお試しいただけるかと思います。

 

「ヒアリング・エッグ」を活用した新しい販売方法

 基本的にはオンラインにて販売を予定していますが、高齢者がインターネット上の広告やリスティング広告からサイトへアクセスして購入するのは、慣れていないと思いますので、商業施設をはじめとした様々な場所に、我々が新たに開発した、世界初のリモート聴覚測定カプセルチェア「ヒアリング・エッグ」を設置するキャラバンを予定しています。
 日本においては、耳が聞こえにくく感じた際、まず耳鼻咽喉科で医師の診断を仰ぐ必要がありますが、特に介護施設などにおいては簡単に耳鼻咽喉科に行くことができない人も多くいらっしゃいますので、高齢者が多くいらっしゃるデイケアセンターへの設置導入も検討しています。
 この「ヒアリング・エッグ」を活用し、より多くの方に気軽に聴覚検査をしていただき、ご自身の「きこえ」に対する気づきを創出、解決できればと考えています。

シニア向け商品 エッグ披露 

 この「ヒアリング・エッグ」の中に入っていただくと防音の状態になります。中の方には ヘッドフォンをしていただき、装置の外からiPadを通じて検査音を発信します。聞える音に対してiPadで操作していただくと同時に、ビデオ通話を通じて、専門スタッフから聴力測定の結果や説明を聞くことができます。
 この「ヒアリング・エッグ」を使って、まずはご自身の「きこえ」の現状を知っていただき、補聴器を身近な存在として捉えていただきたいと思います。そして、最終的には我々の補聴器を使用することで「周りの音が聞こえるとこんなにも楽しい!」と多くの方に実感してもらい、高齢者のコミュニケーション活発化の一助になれれば嬉しいです。

 

 

シニア向け商品
nessa Japan株式会社 ホームページ
http://nessa.co.jp/

nessa facebookページ
https://www.facebook.com/nessajapan/

 

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「アクティブシニア」×「健康」 
ヘルシニア取材レポート

株式会社ビジネスガイド社 来間氏  

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2015年2月4 – 6日の3日間に渡り開催された『第79回東京インターナショナル・ギフト・ショーSpring2015』内にて実施された企画展示「ヘルシニア」を取材して参りました。 「アクティブ・シニア」×「Health」ということで、よりアクティブなシニアライフを楽しむために健康をサポートする“コト”や“モノ”を集結させたこの展示を、株式会社ビジネスガイド社・来間氏のインタビューを通じてご紹介いたします。  

 


Q.改めて今回のテーマとコンセプトについてお聞かせください。

「タビシニア」「ウツクシニア」「オイシニア」に続き4回目となる今回の企画。「健康」をテーマとし、今までの集大成の意味を込めて実施に至りました。「シニアマーケットを見据えて」というテーマに特化したコーナーですが、他ではなかなか見られないこともあり、そろそろ来場者様にとっても定番化してきているので、嬉しく思っております。「○○シニアシリーズ」は、シニア向けに開発された商品だけではなく、「シニアにも使ってもらいたい」「シニアにも提案できるのではないか?」という商品を私どもなりの視点で選定し、展開をしてきました。

来場者アンケートを拝見しても「○○がシニアにも活用できるという視点が面白かった」などという声を多数頂いていて、最近はそんな気づきを提供することが楽しみになっていたほどです。展示・デザイン面においては、ブース壁面にあえてスポーツなどアクティブな画像を壁面に配置し、これまで以上にポジティブなデザイン基調にすることを意識してみました。

「シニアだから渋めの色」、「シニアだから落ち着いたトーン」という固定概念から脱し、アグレッシブなシニア像をビジュアライズすることにより、多くのバイヤー様に目をとどめていただく機会が増えることを期待しております。

更に、これまでコンセプチュアルな展示になっていたコーナーのセンター部分にも積極的に商品を並べてみました。展示物は雑貨がメインなのですが中央にこういった大型機器を設置する事で、「シニアの健康」を一瞬でアピール出来ると考えました。こういった配置等のイメージもバイヤーさんの売場展開の参考にもなればいいと思っています。

「健康」というのはシニアにとって出発点であるようなテーマですので、今回の「ヘルシニア」は、ある意味今までのテーマの「和集合」であり「集大成」としての企画でもあります。ですので、展示ラインナップもバラエティに富んでいて楽しんでいただけるはずです 「シニアとは何なのか?」、「シニアの定義はどこにあるのか?」を模索していらっしゃるバイヤー様を始め、シニアマーケティングにご興味のある皆様にとって、何らかのヒントになるのではないかと考えております。

 

Q.それでは今回もオススメ商品のご紹介をお願いします!

オススメ商品はもちろん全商品です!(笑)これも毎年恒例のコメントになりましたね(笑)
その中であえてご紹介しますと… まず「ミストスタンドPG-E600」をご紹介いたします。  

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見た目も大変オシャレなこの商品、実はこの内部に入っている液体のはP’s GUARD(ピーズガード)という弱アルカリ性の安全かつ強力な除菌・消臭剤です。また、この企業の商品ラインナップには、食品添加物として使える食品添加物・殺菌剤「食添・ピーズガード」もあります。 実は最初にこれらの商品のご紹介を受けた際、担当の方が目の前でこの食添・ピーズガードをゴクゴクお飲みになったのです(笑)。当然、私としてはびっくりしたのですが、それだけ安心な商品なのだということを強く印象づけられました。

こちらのピーズガード専用噴霧器「ミストスタンドPG-E600」は、個人宅にはもちろん、病院設置等もオススメしているそうです。同じ液体が小型のスプレーにもなっていて、こちらも便利です。気付けば私も買っていました(笑)。

見た目、使い勝手ともにオールターゲットですが、安全面等から考えると、「あえてシニアにも提案したい」という今回のコンセプトにあっているように思います。  

 

3世代ユースを狙うスキンケア商品-nesno

似た視点でもうひとつご紹介したいのがこちら、スキンケア商品「nesnoシリーズ」です。従来のラインナップにお子様用の商品も追加されました。
スキンケアの商品で、3世代ユースという提案に踏み切ったという点が、とても興味深いですね。「普段使いの商品をお孫さんにも」 という発想で、更にシニア のファンが育成されるブランドへ成長していく気がします。 こちらは、1月に発売されたばかりの新しい商品となります。  

 

 

指先にあまり力が入らない方でも簡単に使えるお箸-所作

そしてもう1点、是非ご注目いただきたい商品がこちらです。指先にあまり力が入らない方でも簡単に使えるお箸「所作」です。機能商品ですが、日本の食卓に非常に馴染むデザインで使っている事に違和感のない、むしろオシャレに感じられる逸品に仕上がっております。木目の風合いが和みますよね。シニアももちろん、外国の方も興味を持たれるのではないでしょうか。

「健康」というテーマですと、身体的なもの、脳トレ的なもの、メンタル面の向上、そういう意味では美や食も含まれてきて、非常に充実したラインナップになったかと思います。  繰り返しになりますが、全体感として「シニアに向けて」というよりも、全世代をターゲットにしながらも、あえてシニアに提案してみるという商品が面白いと思います。  

 

Q.今回の運営を通じて、新たな気づきなどはございましたか?

「ヘルシニア」を開催するにあたり数社さんにヒアリングをさせて頂いたのですが、共通項だったのが、「全世代向け」を軸にしているという事でした。

どこかの年代だけを対象にするのではなく、全世代に向けて発信したいというのが現在の動きのようです。それは商品だけではなく、商品の見せ方も含め、その意識が必要であるようですね。

例えばカゴメさんは、若い方には大きいサイズの野菜ジュース、シニアには飲みきれるくらいの小さいサイズの野菜ジュースを展開しているそうです。  

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また、円谷プロさんは、『3世代に渡って愛されるウルトラマン』を切り口に、ディズニーさんも「大人ディズニー」という打ち出し方もされているそうです。「シニア」の切り口がステレオタイプ的なものになりつつありますが、現状ではこういった見方をされている企業が増えてきているようです。

シニアはお孫さんに何か買ってあげる際、自分でも理解できるもの、愛すべきものを選ぶ傾向がある事も起因しているようです。だからこそシニアの為の売場を展開していく際、お孫さん世代にも喜んでいただけるような展開をする事が大切かもしれませんね。

キャラクターが全世代を横断しているという意味合いでは象徴的なエビデンスなのかもしれません。「続けてきている」という背景が、「風化させないように」という動きに繋がってきているようです。購買力を持っているシニアがキャラクターを通して購買を牽引するという一番のものかもしれませんね。

 

Q.「ヘルシニア」はここまでの集大成ということですが、次回からはどんなコーナー展開に生まれ変わりますか?

次回から開催される-active-japan-アクティブジャパン次回以降はコンセプトを一新し、「日本」をフィーチャーした「ACTIVE JAPAN」という新たなイベントを計画しています。次回から開催される「ACTIVE JAPAN(アクティブジャパン)」) 次回から開催される「ACTIVE JAPAN(アクティブジャパン)」) いわゆる「日本のものづくり」をテーマにしたコーナーですね。

今まではシニアを機能的にサポートするといった商品をピックアップしたイベントだったかと思います。 今度はそういった今までの集大成を受けて、シニアの位置づけを「高くても良いものを買う世代」とし、そのシニアに向けて、技術、デザイン、いよいよ見せ方すらも素晴らしい「日本のものづくり」を多く広めていけるきっかけ作りになるようなコーナーをと考えています。

東京での開催が決まったオリンピックに向けてのバイヤーさんの目線からの「日本のものづくり」といったものも情報として発信できればいいなと思っています。

そして、これからも、伝統的に受け継がれて来た品物を、それが持つ歴史とともに紹介したい。後継者不足等いくつもの問題を抱えながら、それでもいいものを作ってらっしゃる方を紹介したいと思っています。海外でも多く注目されている「日本のものづくり」をもう一度キチンとクローズアップしたいですね。シニアの方々にも、そしてシニアをターゲットと考えていらっしゃるバイヤーさん達にも是非見ていただきたいですね。  

 

ありがとうございました。 次回からは今までと少し違ったテイストの「ACTIVE JAPAN」、こちらも楽しみにしています。  

 



<<<2014年9月3日~5日「オイシニア」取材レポート  2018年3月6日 ヤマハ銀座スタジオ>>>


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「アクティブシニア」×「食」 
オイシニア取材レポート

株式会社ビジネスガイド社 来間氏

2014年9月3 – 5日の3日間に渡り開催された『第78回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2014』内にて実施された企画展示「オイシニア」を取材して参りました。 「アクティブ・シニア」×「食」をコンセプトとし、シニアにとっての「食べる楽しみ+料理する喜び」を追求したこの展示を、株式会社ビジネスガイド社の来間氏にインタビューを通じてご紹介いたします。  

 


Q.改めて今回のテーマとコンセプトについてお聞かせください。

今回のテーマは「アクティブ・シニア」×「食」になっており、コンセプトは「食べる 楽しみ+料理する喜び」です。今までと違い、コップや箸置き・テーブルウェアのような雑貨だけでなく、お菓子やお酒・調味料といった食品などの新しい提案を行っていることが特徴です。ただし、シニア向けのブース展開ではあるものの、もっと広い世代の方にも見て楽しんでいただけるような商品選定を意識しました。そしてバイヤー様の目を通したときに“新しい発見”につなげていただきたいと思っています。

例えば、「フローズンマジック」や「ラクパン」といった商品です。  

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特に「ラクパン」は衣類なので一見食とは無関係に思われますが、食事中にお腹を締め付けずにラクに食べられる、且つデザイン性もあるという商品です。

このように、今回の展示会では「食」というテーマではありつつも、食べることだけではなく「食」にまつわるあらゆるシーンについてもフォーカスを当ててみましたが、シニア向け商品を探し求めてブースを見に来てくれるバイヤー様や店舗のオーナー様に対して、新しい「気づき」を発信していきたいと思っています。

さらにこのブースを通して出品商品の拡販に繋がれば、当社として最も喜ばしい流れになりますね。

 

Q.シニアと言えば和風なものをイメージしがちですが、和洋どちらも広く取り揃えており、ブース全体としてあまりシニア色を強調していないことが見受けできます。

そうですね。先ほど申し上げた通り今回のコーナー運営はいわゆる典型的なシニア色は極力避け、とは言え少し落ち着いた雰囲気を基調としつつ、何より「楽しめる」ことに主眼を置いています。 イメージとしては「ホームパーティー」といったところでしょうか。

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ですので今回は(株)JFCS 様にもご協力いただきコーナーの中央にもテーブルセットやワイン、そして本物の料理などを展示して「食にまつわるシーン」をプレゼンテーションしています。

その上で、「ポットラック忘年会」をテーマに、持ち寄りパーティーをイメージしたフードスタイリング展示を行いました。 他にもシニアシーンでは、お孫さんと一緒に楽しめるものや、お孫さんのために何かを用意するというニーズもことも想定されますね。 単に「食べる」ということだけだけではなく、ライフスタイルも含めた大きな意味合いでの「食」というものを表現できることを意識しました。  

 

Q.コーナー全体として注視力があり、海外の方からも注目が得られているようですね。

ありがとうございます。全体も黒を基調色として目立たせていますし、日本のシニア層に興味がある海外バイヤーの方の目にも留まって欲しいと願っています。また、海外メーカーの方にとっては、このギフト・ショーが「自分たちの商品が日本でどういうルートで売れるのか、どういう見せ方で売るべきなのか」、ということをリサーチする重要な場所になっています。そういった方々に「シニアというターゲット」もあるんだということを再認知していただければ嬉しいですね。

また、目立つという意味では、このブースを西ホールに出展することにも意味があると考えています。西ホールはデザイン性の高いブースや商品が多くあるのが特徴です。従って、デザイン性の高い商品を求めて来場されたバイヤー様の目にも留まり、商売のヒントにしていただければとも考えています。

 

Q.他にも来間さんのおススメ商品があればお教えください。

すべておススメです!(笑)それでもあえて挙げさせていただくとするならば、「NOX プレミアムオーガニックチョコレート」ですね。

この商品は薬剤師が開発に携わったチョコレートで、しかも昨今注目されているハラール認証も受けているんです。パッケージのデザイン性も高くインパクトは抜群ですね。

他にはかつお節削り器、「替刃式鰹節削り器 黒潮L」などもご紹介したいですね。  

20~30代前後の世代には馴染みのない商品かと思うのですが、シニア世代の方にとっては昔懐かしく、特に若い世代へのプレゼントとしても嬉しい商品ですよね。 更にユニークなもので言えば、水耕栽培器「mock 灯菜Akarina」なども面白いと思います。

無農薬野菜を楽しく・手軽に育てることができるだけでなく、照明メーカーの商品なのでインテリアとして、見た目もきれいです。 さらに土を使わないので清潔なのもいいですね。

 

Q.これまで「タビシニア」、「ウツクシニア」、そして「オイシニア」と積み重ねてきた中で、ギフト・シ ョーのコンセプトコーナーとしての存在感も高まっているのではないでしょうか?

はい、嬉しいことにブースに立ち寄っていただくだけでなくアンケートにご協力 くださる方の数も毎回予想を大きく上回っており、シニアマーケットへの関心度の高さが伺えます。

今回は「食」というテーマで展開していますが、今後もシニアというターゲットはまだまだ掘り下げることが可能だと感じています。

次回のテーマは「ヘルシニア」。「アクティブ・シニア」×「Health」ということで、よりアクティブなシニアライフを楽しむために健康をサポートする“コト”や“モノ”を集結させます。シニアの皆さんがもっとアクティブに過ごすために必要なことは何か、それを突き詰めると結局は「健康であること」という命題にたどり着きます。

健康であることはあらゆるシニアマーケティング活動の源泉なのだと思います。 今後は規制緩和も進み、健康食品などの機能性表示の解禁も控えてます。従って、それに備えた商品や取り組みをサポートできるようなコンセプトも検討したいですね。

次回開催はこれまで以上に、皆さんにとって新しい提案となるようなブースにしたいと思ってます。  

 

取材ご協力ありがとうございました。次回開催「ヘルシニア」も楽しみにしております。

 



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「アクティブシニア」×「美」
ウツクシニア出展企業レポート

ウツクシニア全体1
これから急拡大するマーケットであるシニアマーケットですが、シニアは若い世代と違い、それまでの人生の中で蓄積された経験や知識が多く、価値基準が多様化しています。そのため広くシニアに向けたヒット商品の開発が難しいのが現状です。 「ウツクシニア」への出展各社はそれぞれ、広いマーケットではなくニッチなマーケットを対象として、それぞれのライフスタイルや価値観に合わせた、商品開発をしているようです。  

 

中央精工株式会社 「INRO」

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中央精工株式会社は、創業より企業向けの航空機や自動車用の部品を取り扱うBtoBメーカー。長年のノウハウを元に一般向けに「命を守るもの」をコンセプトに商品開発を進め、「INRO」の完成~発売に至った。「INRO」は、狭心症患者に処方されるニトロ錠を持ち歩くため専用に開発された、純チタン製のニトロケース。狭心症患者は、いつ発作が起きるか分からないため、24時間365日ニトロ錠を肌身離さず持ち歩く必要がある。そのため患者は不安がつきまとい、外出しなくなりがちだが、「INRO」を持ち歩くことで少しでも安心してアクティブに生活してほしいという想いがある。類似した他社商品もあるようだが、中央精工株式会社の航空機部品を製造する際の「安心」・安全」に対するノウハウを応用し、「メイドインジャパン」の信頼性を追及している。

ニトロ錠の持ち歩き専用に開発されているため、様々な機能が兼ね備えられている。それは、1回の発作で必要なニトロ錠最大3錠が入るサイズにできているということ。更にチェーン・本体には医療分野や、航空機や潜水艦などにも使用される「チタン」が用いられており、軽くて丈夫なため安心であるということ。実際に商品を持ってみたが、見た目以上に軽く、首から下げていても全く負担にならない。更には、防水設計のためサビにくく、入浴時も身に着けておくことができる。

「INRO」という商品名は、その名の通り「印籠」が由来。この「印籠」は水戸黄門でよく登場するが、本来の意味である「薬を携帯するための入れ物」ということで名づけられた。商品の包装については、白の箱型でシンプルなデザインであり、本社のある静岡県の名産「箪笥」を意識したそう。

中央精工株式会社では、この「INRO」をはじめ、命を守るために貢献し感謝状で溢れるような会社を目指している。  

VivodO ユニバーサルファッション

無題VivodOは、ハンディキャップのある女性がいつまでも美しくいれるようにと開発されたユニバーサルファッションブランド。代表の松木耀子氏は、元々アパレル事業をしていたわけではなく、母親の着替えが不自由になり、介護する側・される側も楽に着脱できる洋服を探したところ見当たらなかったため、自身で作ってみたことが、ブランド立ち上げのきっかけだと語る。

「洋服を着る動作」に着目し、人間工学を取り入れ、理学療法士との検証を繰り返し開発したそうだ。 全体的に窮屈にならないようゆったりとしたパターンで、腕を通しやすいなど細部にわたり配慮がされており、着脱しやすい構造になっている。

更には母親がトイレの時ズボンを下ろされることに非常に抵抗があったことから、それを解消するためスカートタイプにし、スカートの後ろが開き、開いたスカート部分を前に持ってきて、ヘソあたりでボタン留めできるようになっている。松木氏自身の介護生活を活かし、介護する側の着せやすさだけを追求するのではなく、介護される側の気持ちも配慮したデザインである。

介護が必要になると、「おしゃれ」とはほど遠いデザイン・色合いの洋服がほとんどであるが、ivodOの洋服は色も明るく鮮やかで、何より見た目は普通の洋服と変わらない。そのため、介護しやすい洋服であることが見た目で伝わりづらいという課題もあるが、もっと外に出かけ、洋服を通じて明るくポジティブに、そしてアクティブに過ごしてほしいという想いがあるそうだ。

いくつになってもオシャレでいたい女性にとって、洋服は重要なポイント。VivodOのようなブランドが多くでき、色々なバリエーションから選択できるようになると毎日が楽しくなるに違いない。

 

ひまわり株式会社

image (6)株式会社ひまわりの杖「京友禅 雨にも負けず」は「ウツクシニア」にも出展しており、雨の日にも滑りにくい加工等、機能性にも優れているが、高いデザイン性が非常に目を引く。
出展ブース内での展示商品は、日本の伝統工芸とコラボレーションしたものが多く、シニアに好まれそうな和風デザインで、非常にデザイン性が高い。定価10万円の高級杖「陣」は、西陣織が巻きつけられており、グリップには津軽漆塗加工が施されている。
更には杖と同じく西陣織とのコラボレーションによる高級車椅子もあり、毎日持つ・乗るものであるからこその「こだわり」を適える商品が多く見られた。  

ケイ・ホスピア株式会社

image (7)ケイ・ホスピア株式会社の出展ブースでは、国内外の様々なメーカーの商品が展示されていた。そのラインナップは幅広く、中でも世界を代表するドイツ オッセンベルグ社製の杖は、安定性が高く医学的見地から分析~開発されたという。
機能面はもちろんだが、日本メーカーにはないヨーロッパ特性の色づかいが特徴的であり、非常にシンプルで先進性を感じるデザインである。その他にも数多くのバリエーションがあったが、有名キャラクターとのコラボレーションによる杖も。本人は最初ためらいがちだそうだが、孫と一緒に買いに行くと孫の方が気に入ってしまい、ついつい購入してしまう方もいらっしゃるとか。  

株式会社つえ屋

image (8)株式会社つえ屋は、設立から7年の会社だが、杖・ステッキ専門店と商品に特化していることに加え、「京都」を中心とした店舗展開もあるため、歴史ある老舗メーカーと見間違えてしまうほどである。
展示ブースには花柄や着物柄など壁一面に色とりどりの杖が並んでいたが、少ない選択肢の中から自分が使いたくない杖を排除しながら選ぶのではなく、数多くあるラインナップからどれにしようか悩みむ「選ぶ楽しみ」を増やしたいそうだ。  

 

3社それぞれ共通しているのは、「ウツクシニア」の出展商品と同様に、機能性に加えてデザイン性が非常に高いということです。
これまで杖といえば「歩行の補助器具」に過ぎなかっのですが、これからは自分の好きな柄・絵の杖を選び、自分らしさ、こだわりを表現するファッションアイテムの1つになるのかもしれません。
近い将来、アパレルブランドとのコラボレーションや、有名デザイナーによるデザイン性を極めた杖が出現する日も近くないかもしれません。  

 


第8回TASKものづくり大賞 
受賞製品展示コーナーレポート

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第8回TASKものづくり大賞の受賞製品の展示コーナーでは、様々なシニア向けアイディア商品が並んでいました。TASKものづくり大賞とは、東京都台東区(T)、荒川区(A)、墨田区(S)、葛飾区(K)内の企業・個人が応募可能で、素材の持つ良さを大切にし、地域で培われた技術を駆使してつくられた“いいもの”を消費者が“じくり”使う事のできる生活提案商品を募集するというもの。
受賞製品の中から2社取材を行いました。  

 

ホワイトローズ株式会社 「アメフリー」

image (10)単独開発部門 優秀賞に選ばれた、ホワイトローズ株式会社の傘「アメフリー」。「ビニール傘」といえば、今はコンビニやスーパー、更には100円均一でも購入できる、「安い傘」というイメージがあるが、本来は屋外でも顔が見えるように作られたもの。内からの突風を逃がす特殊な構造であるため、強風でも折れにくいという特徴がある。この特殊技術が買われ、「雨の日に見に来てくださるのに、傘に隠れては申し訳ない」と美智子様が園遊会で愛用されたことから、高齢者のファンも急増。更には顔を多くの人に見せるため、選挙前には各政党から演説用にと発注が増えるそうだ。  

 

株式会社冨テック×有限会社森谷製作所 「Choice(チョイス)」

image (11)共同開発部門 奨励賞に選ばれたのは、株式会社トミテック、有限会社森谷製作所の高齢者玄関補助いす「Choice(チョイス)」。
靴を履く際は屈伸運動が必要なため、高齢者にとっては大変な行為。座りながら靴がいつでも履けるようにと、玄関に専用の椅子を常時置いていくわけにもいかない。そんな意見を取り入れたこの商品は、非常に軽量で、片手で広げたり、折り畳むことができる。また畳んだ折り畳み椅子を壁に立てかけてるとよくズリ落ちることがあるが、この商品は畳んでも自立するタイプなので、そんな心配もない。これからはこのような高齢者に特化したアイディア商品が増えるのではないだろうか。  

 


今回の取材を通じて

デザインに敏感なニューシニアたち

今回のギフトショーでシニアマーケットにチャレンジする多くの出展ブースを取材しましたが、各企業の取組みの中で共通の傾向をひとつあげるとするならば、それは「デザイン性の高さ」です。
洋服、メガネ、杖、傘…あらゆるジャンルの商品が機能面でシニアの身体的特徴に対応しているのと同時に、デザイン面では若年層にも支持を得られそうなモダンでエッジの効いたものが多く見られました。この傾向は2014年、今この瞬間のシニアマーケティングを考えるにあたって非常に重要なポイントであると考えられます。

「団塊世代」の次の世代へ 一般的に「シニアと聞いて思い浮かべるイメージは?」と問うた場合、

  • 身体的なハンディキャップを有している
  • デザインより機能性を重視する
  • 自分のことより子供世代・孫世代のことを優先


などといった属性を思い浮かべるのではないでしょうか。

しかし、2010年代、つまり現在のシニア層はこのステレオタイプなイメージとはいささか違う顔を有しているようです。例えば2014年現在で65歳の定年を迎えようとしている、1950年前後生まれの世代の生い立ちを年表形式で振り返ってみましょう。

  • 10代 → 1960年代 ~ 高度経済成長期・三種の神器・モーレツ社員
  • 20代 → 1970年代 ~ オイルショック・戦後レジュームからの脱却・安定成長期
  • 30代 → 1980年代 ~ バブル景気の到来・ジャパン・アズ・ナンバーワン
  • 40代 → 1990年代 ~ バブルの崩壊・構造的不況の始まり
  • 50代 → 2000年代 ~ 失われた20年・リーマンショック
  • 60代 → 2010年代 ~ 東日本大震災・アベノミクス・新しい価値観へ

とかく「シニア」というと「団塊の世代」、そしてその先には「高度成長期のモーレツ社員だった人たち」などという連想をしがちですが、今のシニアは実は既にその下の層が中心になりつつあります。
モーレツ世代が形成した高度成長させた後の市場の中でお金とモノに溢れた環境で「高品位なもの」や「刺激的なもの」に触れ合った世代。
そして同時にお金も使ってきた世代がシニア層に仲間入りしてきているのです。バブル前後の時代に適度に若く適度に財力も有し、よき時代を謳歌し駆け抜けてきたかつての時代の寵児たちは、消費者としても機能性とブランド性を兼ね備えた高品位な商品に囲まれてきた世代であり、眼も超えている人たちです。

そんな彼らが年月を経て、今まさにシニア時代を迎えようとしてるわけですが、彼らの中には若かりし頃から積み重ねてきた感覚が今でもしっかり残存しています。たとえ身体的な衰えに対応するために購入する身の回りの商品であったとしても、できる限りデザイン性や自身らしい個性発揮の要素が併存しているものを選択しようとする傾向があります。

 

「シニア扱いしない」というアプローチ

彼らは「自分をシニアという属性で括られたくない」というインサイトを有した新時代のシニア世代であり、それは冒頭に表したステレオタイプ的なシニア像とは一線を画したメンタリティを有していると捉えるべきでしょう。
子どもも大切にする、孫もかわいい、しかしそれと同時に自身の人生の第2ステージも貪欲に楽しもうと考える新シニア世代。彼らの購買意欲を刺激するためには、まずは彼らを「シニア扱いしない」というスタンスでマーケティングすることが肝要なのだと思われます。

次回ギフトショー(2014年9月初頭開催)では、シニアマーケットと食の関係にフォーカスを当てた新企画「オイシニア」の企画展示が予定されていますが、ウツクシニアと同様に「シニアをシニア扱いしない」という視点で見ると、また面白い切り口になるのではなかろうかと期待しています。

 



2014年9月3日~5日 「オイシニア」取材レポート>>>

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ユニバーサルデザインと
シニアマーケットのニーズ

プレゼンテーション推進部 安達氏 販売統括本部 市川氏 広報部 浅妻氏

ユニットバスやウォシュレットを先進的に日本に導入してきたTOTO。 バリアフリーやユニバーサルデザインについての意識が高く、様々な製品に垣間見えます。 100年近く続くTOTOの歴史の中で、どのようにしてユニバーサルデザインへ取り組むようになったかなど様々なお話を伺ってきました。

2016年4月 取材

シニア ビジネス シニアマーケット


Q1.ユニバーサルデザインに取り組み始めたきっかけは何ですか。

TOTOは約100年前からトイレの便器を製造しております。その長い歴史の中で様々な使用者のニーズを研究し開発に活かしてきました。
携帯電話や文具のように、ひとりひとりが個人で使用するものではなく、子供からお年寄りまでが同じトイレやお風呂を使用するケースがほとんどです。だからこそ一人でも多くの人が使いやすさを感じ、快適に使用できるユニバーサルデザインの開発に取り組んでいます。

まず初めにきっかけのひとつとなったのは、1964年東京オリンピック・パラリンピック開催の時でした。
特にパラリンピックが開催されることで、世界各国から身体に様々なハンデを抱えている方が集まり、バリアフリートイレの問い合わせが増えました。

当時はユニバーサルデザインという言葉は無く、バリアフリーへの取り組みではありますが後にユニバーサルデザインとなる初めの一歩でした。

 

Q2.どのようにしてバリアフリーへの取り組みからユニバーサルデザインという考えに変化していったのですか。

パラリンピックをきっかけにバリアフリーへの取り組みが加速化し、使いやすい空間の設計図などを掲載したバリアフリーブックを1978年に発刊しました。このころ、日本の高齢化は進んでいたものの、ベビーブームということもあって高齢化はあまり深刻な問題として取り上げられることはほとんどありませんでした。
当時の日本は、新しい事業や商品の開発にも力を入れる企業が多くありました。TOTOも例外でなく、新しい製品の開発に取り組んでおりました。

その時にアメリカから輸入したのがウォッシュエアシートという、現在のウォシュレットです。
主に病院向けに医療用や福祉施設用に導入されていました。その後、TVCMによるプロモーションなどの効果もあり、1990年代ウォシュレットが世間に広まっていきました。

1990年代になり、出生率が低下し少子高齢化がささやかれるようになってきました。高齢者の割合が増え、医療費が増えていくことが懸念され、行政の対策として2000年から介護保険が始まることが決定しました。

シニア ビジネス シニアマーケットそれに伴いTOTOでは高齢者向け製品の開発を促進するシルバー研究室を発足し、2000年までの間に様々な製品や仕組みの開発を促進しました。

そこではいま高齢者の市場でどのような製品が求められ、必要とされているのかを調査し、TOTOの製品開発に活かしていました。例えばバスルームの出入り口部分に段差をなくしたのはそのころです。

当時はバスルームの出入り口に段差があることが通常でしたが、段差のない床にすることで、高齢者やお子様がつまずいて転倒することを防いだり、車いすのままでも安全に入室できるようになりました。
発売当初、段差のないフラットな床では、バスルームの外が水浸しになってしまう懸念があり、洗い場全体にグレーチングを設計していました。
しかしそれは掃除をする、介護をする立場の方に負担になってしまいます。今ではグレーチングがなくても排水出来る商品にしました。このように当時から現在に掛けて研究を重ね進化を遂げています。

 

先ほどのお話にもありましたが1990年代には、2000年から住宅のリフォームにも適用される介護保険が始まるとのことで、介護向け製品の開発に力を入れておりました。
どのようなニーズがあるか、どうすれば使いやすい製品になるのかを検証するため、シニアの生活実態を研究するシルバー研究室を発足しました。
そこでは実際にシニアの方の生活動作を観察し、その後、レブリス推進部(シルバーの英字「SILVER」を逆から読んで「REVLIS<レブリス>と名付けました」の一部としてシニア市場でどのような製品が求められているのか、また今後必要とされるのはどのような製品なのかを研究し企画・開発を行っていきました。

2000年代に入るとさらに少子高齢化が進み、「高齢者にやさしい生活は、みんなが楽しい生活だ」として楽&楽計画事業がスタートしました。
高齢者にもハンデがある人にも一人でも多くの人が使いやすいものをつくる、高齢者やハンデのある方向けで無く、だれにでも平等に使いやすいというユニバーサルデザインへの取り組みに変わっていきました。
その取り組みを経て2004年TOTOは会社全体でユニバーサルデザインへの取り組みを行っていくようになりました。
それに伴い90年代にシニアの生活実態などを研究していたシルバー研究室が進化し2006年に「R&Dセンター」が設立されました。


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Q3.TOTOの考えるシニアマーケットとユニバーサルデザインの関係とはどのようなものでしょうか。

 2007年、日本は65歳以上の割合が人口の21%を超え、超少子高齢社会となった日本は2011年から2020年にかけて60万の高齢者向け住宅を建設する計画をスタートしました。その計画のころにつくられたのが、病院・高齢者施設の主にトイレや浴室の施工のプランを集約した「病院・高齢者施設水まわりブック」です。
例えば浴室であれば浴槽と壁の間に介助用のスペースを確保する設計にするプランなど、利用者だけでなくそこで働くひとにも快適な水まわりの提供を現在もし続けています。

今後の高齢者向けの展開としては、住生活基本法に基づき、65歳以上のシニアが居住する住宅のバリアフリー化率を2011年から2020年までの期間で75%まで引き上げる計画があります。
国民の住生活の安定を確保および向上の促進に関する期間計画で、この計画は5年ごとに見直されることになっており、2015年には5年先送りの計画となりました。
この計画でいうバリアフリーの基準は2か所以上の手すり配置と屋内段差解消となっているため、手すりの設置や段差解消の整備に補助金などの支援が始まると考えられます。

しかし、かつての日本と比べ、今の社会でシニアといえど60代や70代でも生活に苦悩するほど健康に支障がなく、シニア向けのツールを好まない割合が増えています。
その一方で65歳以上の人口の割合は年々増えており、加齢による生活の変化に対応するツールの需要はどんどんと増えています。
現在はニーズが無くても、将来のために設置してもデザイン性を損なわない、デザイン性を重視した手すりなども多く展開しています。

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このような現代におけるシニアとのコミュニケーションでTOTOが心がけているのは、未来のために備えた、身体が不自由な方だけではなく、誰にでも使いやすい生活を提供していくことです。

現代のシニアの特徴を捉えた、シニアだけに向けたデザインではなく、誰にでも受け入れられるユニバーサルデザインという考え方はTOTOがこれからもめざしていく未来の形です。

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TOTO株式会社ホームページ
http://www.toto.co.jp/index.htm

 


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<関連記事>


三重県亀山市の旧東海道関宿

日本は世界に冠たる超高齢社会であり、2025年には「団塊の世代」が後期高齢者(75歳以上)となり、介護や福祉分野の需要はますます増え続け、介護予防や介護の問題、単身化や孤独の問題が急増する。

このため厚生労働省においては、2025年を目途に高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進している。

具体的に地域の行政はどのような取り組みをしているのだろうか。地域包括ケアシステムの構築をはじめた三重県亀山市を取材した。

 

取材にご協力いただいた方

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  • 三重県亀山市 健康福祉部 高齢障がい支援室 室長(兼)地域包括支援センター長  古田 秀樹 氏 (左)
  • 三重県亀山市 健康福祉部 高齢者障がい支援室 副室長  藤本 泰子 氏 (中)
  • 三重県亀山市内 田中内科医院 院長 田中 英樹 氏 (右)

※2014年2月取材時


第1章 ケアシステムの全体像

「在宅での看取り」を核とした、三位一体の地域包括ケアシステム

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厚生労働省からは、「団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現する」とある。
そんな中、地方自治体はどのようなオペレーションを実施しているのだろうか。
ここでは、三重県亀山市の取り組みを例に、地方自治体が実際に取り組む地域包括ケアシステムを紹介していく。

2014年2月 取材


「在宅での看取り」を核としたシステム構築

昨今の高齢化により、政府としても社会保障の観点から在宅医療・在宅介護を推し進めており、各県市区町村の行政としての対策も急務となっている。

しかし、今回取材を行った三重県亀山市では、医療費負担を上げる等の対策により、一方的に在宅医療・介護を市民に押し付けるような仕組みづくりをしているわけではない。

あくまでも本人と家族の意志を尊重し、福祉的な措置や手当を加えながら、医療・介護が受けられ、生まれ育った自宅で最期を看取る。つまり、本人及びその家族が喜ぶ、「在宅での看取り」を選択肢のコアにする事を目的にしている。  

「行政」・「医療」・「介護」の三位一体のシステム

まず、「在宅での看取り」の受け皿となる体制づくりとして、行政主導のもと、ケアマネージャー・社会福祉士・保健師を中心とした、「行政」・「医療」・「介護」の三位一体の地域包括ケアシステムの構築を進めている。このシステム構築にあたり、モデルケースとしている他市があるそうだが、そこでは医療連携がメインであり、介護連携がうまくいっていないケースが目立つ。

ではなぜ亀山市は医療と介護の連携にこだわるのか…

それは、急性期病院や回復期病院から退院した後、在宅での生活を円滑に進めるためには、医療保険から介護保険への移行など、医療・介護に関わるスタッフが密接に連携して、シームレスにサービスを受けることができるよう、支援していく必要があるからだ。

また、同様の取り組みを医師会が主導で行う市区町村もあるようだが、亀山市はあくまでも行政が主導である。行政が主導であることにより、市民の声を取り入れやすく、また「在宅での看取り」の啓発活動も行うことができる。

更には、これまで医療業界と介護業界は隔たりがあったが、医療面を支える病院や診療所、介護面の2つの領域において重要な役割を担いハブとなるケアマネジャー、社会福祉士、保健師をキーパーソンとすることにより、連携しやすい環境が作られる。

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具体的な活動としては、2013年3月より、在宅医療・介護に携わる事業社が参加する連携会議が開催されている。そこには、医師や看護師、歯科医師、薬剤師をはじめとする医療従事者、ケアマネージャー・ヘルパー、そして、市が運営する「地域包括支援センター」のケアマネージャー・社会福祉士をはじめとする介護従事者が参加し、各所の役割の明確化~情報共有を行う。

「リビング・ウィル」による本人意思の尊重~市民啓発へ

いくら三位一体の地域包括ネットワークが構築できたとしても、中には最新の医療技術を受けながら病院で最期を迎えたい、施設で最期を迎えたいという市民もいるだろう。

最終目的は「在宅での看取り」ができることであるが、その受け皿となる医療と介護の連携したネットワークを構築しながら、在宅医療・介護を押し付けるのではなく、あくまでも本人・家族の意志を尊重する。そのため多くの市民が「在宅での看取り」を望むよう、また理解を得るための啓発活動が欠かせない。

それにはメディア等を活用した一方的な情報発信ではなく、“最期をどう迎えたいのか”の意思を表明する「リビング・ウィル」というカードを発行している。このカードにより、本人がどう最期を迎えたいか、家族や親戚・知人と共にきちんと終末期について考える機会を市民に与えながら、在宅医療に対する理解が広まることを目指している。

リビングウィルカード リビングウィルカード中面


この三位一体の地域包括システム構築と市民啓発は亀山市だから進められる要因がいくつかある。 以降の章でその理由について紹介していくとする。    

 

第2章 ケアシステムの中枢をなす2つの施設>>>


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  • 福祉車両ウェルキャブの
    「普通のクルマ化」を目指した開発

    製品企画本部 吉田氏 国内商品部 大野氏 広報部 堀野氏

    世界トップクラスの自動車メーカー、トヨタ自動車(株)は福祉車両をWelcab(ウェルキャブ)と呼んでいます。Welfare(福祉)、Well(健康)、Welcome(温かく迎える)+Cabin(客室)  「すべての方に移動する自由を」のコンセプトを基に、お身体の不自由な方や高齢の方はもちろん、介護する方にとっても快適で安全なクルマをご提供できるよう、様々なウェルキャブを開発しているトヨタ自動車。今回は国際福祉機器展にて、2015年12月21日より発売予定の新開発「助手席回転チルトシート車」を中心にトヨタ自動車のウェルキャブ開発への思いを取材いたしました。

    2016年3月 取材

    シニア ビジネス シニアマーケット


    Q.ウェルキャブ新車両「助手席回転チルトシート車」とはどのような車両ですか?

     ウェルキャブには大きく分けて3つの種類があります。
     車いすのまま乗り込むことができる「車いす仕様車」、お身体の不自由な方ご自身の運転をサポートする運転補助装置「フレンドマチック取付専用車」、座席への乗り降りをサポートする機能を装備した車両の3つです。

     「助手席回転チルトシート車」は文字通り助手席が回転し、チルト(傾けること)により乗り降りをサポートする車両です。シートを手動で車両の外側へ回転させ、さらにチルトすることで従来のシートよりも立ち上がる際の体重移動が楽になり、足腰への負担を軽減できます。
     そして介助する方が最も力を使うであろう引き起こす動作がほとんど必要なくなります。介助される方だけでなく介助する方にも優しい車両なのです。

    シニア ビジネス シニアマーケット

     

    Q.助手席回転チルトシート開発にはどのような背景があるのでしょうか?

     本年12月21日より発売予定の新しいウェルキャブ「助手席回転チルトシート車」の開発は、いま日本が抱えている超高齢社会の問題へトヨタ自動車としてどのように取り組んでいくべきか考えるところから始まりました。
     後期高齢者(75歳以上)の人口は、2010年に1,407万人、2025年には2,179万人と15年間で人口は1.5倍になると言われています。介護を必要とする人口が増えるのに対し、支える側の若者は減少し、2010年には1人の後期高齢者を5.4人で支えていたのが、2025年には3人で支えることになり、負担は約2倍になります。
     医療費や介護費の拡大も予測され、このままでは破たんが危惧されるため国は政策の見直しの1つとして、在宅介護を中心とした制度改革を進めようとしています。
     その結果、在宅介護サービスの利用者は2011年の300万人から2025年には約500万人に増え、実に総人口の4%にもなると予想されます。

     こうした状況から、高齢者の在宅介護が増えることで「閉じこもり」の増加が心配されます。在宅高齢者は身体的機能の低下や活動意欲の低下、家族環境の変化などから家に閉じこもりがちになります。日常生活が非活動的になることで廃用症候群を発症、やがて寝たきりになり要介護者に進行しがちです。

     高齢者本人の幸せのためにも、家族の介護負担を減らすためにも「閉じこもり」のない生活が重要です。自動車会社として、より高齢者が外出しやすい車両を提供することで高齢者の閉じこもりを少しでも減らし、いつでも気軽に出かけて欲しいという思いから、「助手席回転チルトシート車」を開発しました。

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    Q.助手席回転チルトシート車はどのような点で「介護負担の少ないクルマ」なのですか?

     まず1つ目に、普通の駐車場スペースで使用できることです。既存の助手席への乗り降りをサポートする車両「助手席リフトアップシート車」は、例えば杖を使う高齢者が立ち上がるとき、頭が車両側面から110cmまで張り出します。
     そのため車いすマークの駐車場以外では十分な幅を確保することができず、使用することができませんでした。
     それに対して新開発の「助手席回転チルトシート車」は乗り降りの際に必要なスペースが、車体から最低45cmと大幅に小さくなったため、一般車両と同じ駐車スペースで使用できるようになりました。福祉車両を使用しているという感覚が薄れるのと同時に“よりたくさんの場所で人目も気にせずに使用できる”ということに繋がったのです。

     そして2つ目に、雨の日にも使用しやすいことです。
     上記でも述べたように車体から最低45cmのスペースのみで乗り降りできるということは、車体から出てくるシートの面積が小さくて済みます。
     乗り降りをサポートする際に介助される方に傘をさしてあげると、シートも雨からカバーすることができます。そうすると人もシートも濡れずに済むのです。
     シートを車内へ戻す時間も、既存の「助手席リフトアップシート車」では40秒かかったところを、新設の「助手席回転チルトシート車」では片手の操作で3秒と大幅に改善され、雨の日にも使いやすい車両が実現しました。

     この2つの点により「介護負担の少ないクルマ」となりました。

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    Q.2014年から取り組まれている「普通のクルマ化」について教えてください

     重ね重ねになりますが、高齢者の人口の割合が増え、在宅介護が進んでいるということは、福祉車両を必要とする方が増えるとも言えます。
     ですが実際に介護をする年数が5年ほどというデータもある中で、介護が必要になった親のために福祉車両を購入しても、介護のために5年使用したのち、残った家族で使用するには使いづらい、短い期間だけのための購入はもったいないなどの理由で購入をあきらめる方もいます。

     ですが、“親孝行をしたいその気持ちを諦めてほしくない”と私たちは考えました。
     健常者のみで使用する際にも使いやすい、福祉車両と一般車両の隔たりを如何に無くした、介護される方にも介護する方にも優しいクルマの実現を試みました。

     まだまだ世の中では福祉車両は特別なもの、大袈裟なものだと思われがちです。
     歳を重ねてきて足腰が少し弱ったくらいで福祉車両なんて…、という声も聞いております。
     そんな方にウェルキャブを福祉車両ではなく、標準車の1グレードとしての捉え方をしてもらえるようになれば、使用することがもっと身近になると思います。

     私たちは“使いやすいクルマとは何か”を研究し改善することが、福祉車両の普及につながると考えています。人にとって使いやすいとは、機能性や用途だけでなく気軽さも重要なことです。

     高齢者の人口の割合が増え、福祉車両の需要が増えれば、福祉車両をもっと気軽に導入できる環境が必要です。 今後もさらに「普通のクルマ化」を進めて、ウェルキャブをもっと気軽に取り入れるマーケットづくりが重要になってくると思います。

    Q.福祉車両の購入を考える際に重要なことのひとつに「価格」があると思いますが、コストへの工夫はされていますか

    シニア ビジネス シニアマーケット まず新設の「助手席回転チルトシート車」は手動で動かすという点で、リモコンで自動作動する「助手席リフトアップシート車」よりもコストが低いです。
     さらに今取り組んでいるのが、ベース車を製作する段階から要件を織込むことです。
     例えば後方の屋根を下げることにより、デザイン性はスポーツカーのようでカッコよくなりますが、下げてしまうと車いすで乗り入れることができなくなってしまいます。
     そこで、初めからデザインに制約をかけ、ベース車の製造ラインを一般車両と同じにすることで、コスト削減ができます。
     その他にも、車いすスロープ車には乗り入れをしやすくするために車体後方の高さを下げる「エアサス」という機能があります。この機能を後付しやすい構造を、一般車両としてのベース車両に取り込むよう、開発を同時に進めています。

     しかし、福祉車両独自の機構に関しましては、数量が増えないことにはこれ以上コストを削減することは難しくなってきています。その点で、より多くの方へウェルキャブを普及させることが課題になります。

     

    Q.今後、シニアに向けてどのような展開をお考えですか?

     車両の開発はもちろんですが、新しい動きとしましては既存車両に取り付けることができるフレンドリー用品に力を入れております。

     主に一般車両に取り付けることで、乗り降りのサポートをしたり、走行中の車内でも安心して乗車いただけるようなアイテムを取り揃えております。
    既存車両へ取り付けするタイプですので費用も抑えられますし、福祉車両の購入までは至らないという方にぜひ体験してみて欲しいです。高齢者の方はカーブや段差を走行する際、体重を支えきれず少しの揺れでも不安に感じる方もいます。そういった不安を解消できるのが新型シエンタから投入した「フレンドリー用品」です。

     例えば「アシストグリップ」は助手席の後方に取り付けたグリップを、セカンドシートへ座った高齢者が掴み、姿勢を維持することができます。そうすることで安全で安心な乗り心地を体感していただけます。
     さらに手すりの替わりにもなるので、車両への乗り降りもサポートすることができます。その他にも楽にシートベルトを装着できるアイテムや、車体の揺れから上体を抑えるためにシートにパットを取り付けるなど、現在9種類のアイテムをご用意しております。

    福祉車両など新技術の開発はもちろんですが、それだけではなく、どうすればすべてのひとが「移動する自由」をもっと身近に感じ、楽しく出かけられるクルマになるかを考えることで、介護される方はもちろん、介護する方にも快適で安心なクルマをこれからも提供し、暮らしをサポートしつづけていきます。

     

     

    トヨタ自動車株式会社ホームページ
    http://toyota.jp/

    トヨタウェルキャブ(福祉車両)ホームページ
    https://toyota.jp/welcab/

     


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    セラピー効果に期待度が高まる
    メンタルコミットロボット「パロ」

    ヒューマン・ケア事業推進部 ロボット事業推進室主任 大場奈緒子氏

    今や、産業界のみならず生活に身近で様々な利便性を提供してくれるロボット。 その中で今回は、人を元気づけ、安らぎを与えるメンタルコミットロボット※1「パロ※2」をはじめとしたロボット事業を展開している大和ハウス工業株式会社に取材を行い、シニアマーケットの中で「パロ」がどのような役割を担っているのか、また今後のシニアマーケットへの展開についてお伺いしました。

    ※1「Mental Commit Robot」、「メンタルコミットロボット」は国立研究開発法人産業総合技術研究所の登録商標です。※2「PARO」、「パロ」は株式会社知能システムの登録商標です。

    2015年11月 取材

    シニア ビジネス 高齢者ビジネス

     


    Q. メンタルコミットロボット「パロ」について教えて頂けますか?

    「パロ」は、タテゴトアザラシの赤ちゃんをモデルに作られ、2002年2月26日にギネスブックに認定された「世界で最もセラピー効果のあるロボット」です。国立研究開発法人産業総合技術研究所の柴田崇徳上級主任研究員によって開発され、現在は、どのようにしてセラピーに取り入れていくかを二人三脚で考えています。

    ちなみに、初めて販売を開始した時の「パロ」は第8世代ですが、現在のモデルは第9世代です。色のラインナップはホワイト・ゴールド・チャコールグレー・ももいろの4色です。
    「パロ」には、アニマルセラピーと同等の効果が認められており、人を元気づける・動機づける「心理的効果」、ストレスを軽減させる「生理的効果」、コミュニケーションを活性化させる「社会的効果」の3つのメリットが期待されます。

    コストの問題や、排せつ・食事、アレルギー等の問題で実際の動物を飼うことが難しい方に対して、24時間いつでも利用者に寄り添うロボットとして活用されています。主に認知症の周辺症状(BPSD)の抑制、緩和が期待され、特別養護老人ホームやデイサービスなどの高齢者向け福祉施設だけでなく、小児病棟などでも採用されています。
    世界的にも、アメリカでは医療機器として認定されている他、デンマークでは、自治体が運営するケアホーム等の約70%にて導入されています。

    また、オーストラリアにおいても、大規模な検証実験が行われています。私たちは「パロ」とともに国内の施設を巡りながら有効的な利用方法をご案内するとともに、現場のご要望などをメーカーへフィードバックする役割も担っています。

    シニア ビジネス 高齢者ビジネス

     

    Q.ターゲットに対してはどのようなアプローチをしてらっしゃいますか?

    当社は、平成元年に医療・介護施設に関わる問題を専門的に調査・分析する研究機関「シルバーエイジ研究所」を設立しており、高齢者向け施設の建設棟数は国内でトップクラスの実績があります。

    そのため、ロボットだけでなく医療・介護施設の建設や、有料老人ホームなどの施設へのご案内等、大和ハウスグループ全体で総合的なサポートを提供できる体制をとっており、お客さまに対して「お困りのことは何ですか」といえるようにしています。

    このように施設のスタッフの皆様や、施設をご利用頂いているお客さまの幅広いご要望にお応えしていくことで、これから先も末永くお付き合いさせて頂きたいと考えております。

    Q.パロにこめられたこだわりなどを教えてください。

    「パロ」は、性別や性格などの細かい設定はあえてしておりません。それぞれご利用いただくお客さまが、「パロ」をどう捉えるのか、という点にお任せしております。
    例えば、犬を飼っていた方が、「パロ」にその犬の名前を付けることで心穏やかに過ごしていただけるのであれば、それで十分であり、その方の気持ちに寄り添うことが大切なのです。この仕事に携わらせて頂いてから、逆に勉強させて頂いています。

    さみしい気持ちを抱えていたり、何か役に立ちたいという気持ちがあったり、思ったことが上手く出せなかったりする方でも、「パロ」を介して思いを引き出してあげることができるかもしれませんし、パロをお世話することで守ってあげたい存在ができるという点は大きいと思います。

    Q.本日は、パロの実物を見せて頂いているのですが、とても可愛らしいですね。

    音を感知するセンサーを全面に備えており、音に反応して顔を向けるようになっています。
    また、なるべく本物の動物に近づけるため、スイッチが見えないところに隠されていたり、縫い目が分からない形になっていたりと、様々な工夫が凝らされています。

    さらに、少ないアクチュエイターで自然な動きができるように追求してつくられています。いい言葉には喜び、悪い言葉には悲しそうな反応を示します。叩かれた感覚もわかるのです。日々の触れ合いの中で元気に育っていったり、おとなしくなったり、まるで感情があるかのように学習していきます。

    また、「パロ」は自分で温度管理をしており、温度が上がりすぎると自ら休憩し、動物のような自然な温かさを保ちます。実際に抱いていただくとわかると思うのですが、新生児の赤ちゃんと同じくらいの大きさと重さになっており、体重は約2.5kgです。これはお子様が生まれたときに抱っこした感覚を踏襲しています。

    パートナーとして長くご使用いただくために、一体ずつ手作りで仕上げられており、それぞれわずかながら表情に違いがあります。
    制菌加工、防汚加工、抜け毛加工が施された人口羽毛が使われています。電磁シールドを施してあるので、ペースメーカーをお使いの方でも安心してご使用いただけるようになっております。

     

    Q. パロが施設にいたら本当に人気者になりそうですね。パロに対して実際はどのような反響があるのでしょうか?

    非常にご好評をいただいています。心穏やかに触れ合ってもらうことができるロボットですので、コミュニケーションを活性化させるツールの一つとして使って頂きたいと思っております。施設でのアクティビティとしてはもちろん、個室に連れて行って可愛がる方もいらっしゃいます。

    シニア ビジネス 高齢者ビジネス

    また、非常に嬉しい報告をお手紙でも頂いています。認知症を患うことによる不安な気持ちを解消してくれた、本人も家族も「パロ」によって元気になったというお話を聞くと、私たちとしても大変喜ばしく思います。

     

    Q.シニアマーケットをどのように見ていますか。

    超高齢化社会で、働く人が少なくなっていく中、マーケットとしては非常に大きいと感じています。
    中でも、高齢者世代にはロングライフ時代の老後の暮らしに対する不安とどう向き合うか、あるいは快適な老後生活を実現するためのQOL(生活の質)の向上が強く問われているところがありますが、一番大切なことは「元気で長生き」というところだと思います。

    こうした、「元気で長生き」をサポートする製品については、現場で利用する方の声が開発側者に届きにくく、現場と開発側にミスマッチがあると言われています。
    そこで、利用者の声を届けるためには、販売代理店である私たちが、こういった生活支援ロボットの特性を理解し、利用者側に伝え、あわせて、現場ではどのような活用がされているのか、どのような改善点があるのかを開発者に伝えるという役割は非常に重要だと感じています。

    もちろん「パロ」が全ての方に合うわけではないと思います。これからコミュニケーションを自ら活発にとる、介護予防ができる、脳の活性化を進めるなどといった特徴的なロボットが世に出てくることで、選択の幅が広がり、一家に一台ロボットがある状態も夢ではないと考えております。
    また、サービスロボット業界全体の活性化にもつながると考えています。弊社も様々な用途のロボットを展開することで、在宅にて、「元気で長生き」していただけるよう励んで参ります。

    Q.課題などありましたらお聞かせください。

    介護負担の軽減のためにも「パロ」やその他のロボットを使って頂けたら、と思っております。常に徘徊する方や目を離したすきに移動してしまう方に対しては、つきっきりになる必要があるため、介護する側にもストレスや腰痛などの負担がかかってしまいます。
    高齢化社会の中で、人でなければできないところ以外をロボットにサポートしてもらうことができれば、効率的で良い働き方に変わっていくのでは、と感じます。

    「パロ」は、日本ではまだまだペットの代わりという面が強いので、セラピーとしての使用方法を普及させていきたいと思います。まずは、多くの人に知って頂くことが必要だと感じています。

    シニア ビジネス 高齢者ビジネス

     

    Q.様々なロボット展開をされているということですが、そのほかにはどのようなロボットがあるのでしょうか。

    尿を自動で吸引しおむつ交換の手間や負担を軽減する「ヒューマニー※3」、体重を免荷しながら安全な歩行訓練をサポートする「POPO(ポポ) ※4」、脚力が低下した方や下肢の不自由な方の自律動作をサポートするロボットスーツ「HAL(ハル) ※5」、難聴の方をサポートする耳につけない会話支援機器「COMUOON(コミューン) ※6」、悪路でもスムーズな車椅子の移動をサポートする「JINRIKI(ジンリキ) ※7」など、人・暮らし・社会をアシストするための事業展開を行っております。

    実際に触れてみなければ分からないこともあるかと思います。大和ハウス東京ビル1階にございます、当社の高齢社会への取り組みを紹介する施設「D’s TETOTE(ディーズ テトテ)」では、コンセプトムービーや実際の商品を紹介しておりますので、当社にお越しの際はぜひお立ち寄りください。

    ※3「HUMANY(ヒューマニー)」、「Humany」はユニ・チャーム株式会社の登録商標です。
    ※4「POPO(ポポ)」は株式会社モリトーの登録商標です。
    ※5「ロボットスーツHAL(ハル)」「CYBERDYNE」、「ROBOTSUIT」はCYBERDYNE株式会社の登録商標です。
    ※6「COMUOON(コミューン)」はユニバーサル・サウンドデザイン株式会社の登録商標です。
    ※7「JINRIKI(ジンリキ)」は中村正善氏の登録商標です。

     

    大和ハウス工業株式会社 ホームページ
    http://www.daiwahouse.co.jp/index.html


    メンタルロボット パロ ホームページ
    http://www.daiwahouse.co.jp/robot/paro/index.html

     


    <<<第15回 株式会社京王百貨店                  第17回 トヨタ自動車株式会社>>>


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    シニアマーケット創出には
    「リピーターの育成」が重要

    株式会社京王百貨店
    経営企画室 部長(経営企画・広報担当) 新藤 佐知子氏 
    営業政策部 営業政策担当 統括マネージャー 常井 克清氏

    「シニアマーケティング」という単語すらない20年前からシニア層をターゲティングしてきた株式会社京王百貨店。同社はお客様の声を第一と捉え、売場の販売員と連携しながら長きにわたりマーケティング活動を推進しています。今回のインタビューでは、取り組みのきっかけから、シニア予備軍の取り組み施策、また2014年11月にオープンした「くらしサプリ」、そして今後の取り組みに至るまで、幅広くお話をお伺いしました。

    2015年3月 取材


    keio


     

    Q. 現在シニアマーケティングにお取り組みされていらっしゃいますが、まずお取り組みのきっかけを教えてください。

    まずは、取り組みを始めたのは20年前に遡りますが、当時はまだ「シニア」というよりも50代の「ミセス」という据え方でした。この「中高年」のお客様を大事にしようという考え方が、当社のシニアマーケティングの第一歩だったといえます。
    そして、このような考えに至ったのは、百貨店の売上が1991年をピークに下落傾向に入った頃のことです。
    また、同タイミングで新宿の南口に髙島屋さんが出店されることになり、大型百貨店がひしめく新宿駅エリアに髙島屋さんができたら、本当にお客様がいなくなってしまうのではないか・・・と、創業以来最大の危機と受け止め対策を講じることになりました。
    そこで、京王百貨店としての強みを新たに見直したときに出た案の一つが、「中高年」や「ミセス」だったわけです。
    新宿店のように駅に隣接する店舗は、比較的年齢層の高いお客様が多い傾向にあります。
    更に当時は創業30周年を迎えるタイミングでした。
    つまり京王百貨店が創業した当時に、20~30代で、長きに渡り当社を支え続けてくださっていたお客様が、50~60代にさしかかる頃です。
    50~60代という年代は、ご自分の時間ができ、お金が持てるようになり、また若い頃、独身の頃のように買い物に戻ってきてくださる年代でもあります・。
    そこで、創業当時からご愛顧くださったお客様を改めて大切にしていくという意味も込めて、このような取り組みを始めました。

     

    Q.具体的にどのような取り組みをされたのでしょうか。

    ひとつ目にはミセスの皆様へのわかりやすいアプローチです。
    京王百貨店には婦人服フロアが3つあるのですが、そのうちの1つを戦略フロアと位置付け、ミセスのお客様にターゲットを絞った商品展開を開始しました。それが1995年の秋頃の試みになります。
    ミセスの皆様が洋服の購買する動機として最も大きいのが「旅行」です。しかし、当時はまだバブル直後でしたので、他の百貨店も含めて洋服はまだまだ価格が高い時代でした。
    そこでミセスの皆様向けに、1万円前後の価格帯で、かつ旅行や日常のちょっとしたお出かけに相応しい洋服ラインナップの充実化を図りました。ポイントとしては、「旅行にも使えるけど、あくまで日常性を大事にする」ということです。
    ふたつ目の取り組みが、1階に設置したウォーキングシューズの専用コーナーです。今でこそこのような売り場はよく見られるようになりましたが、当時の百貨店の婦人靴売り場というのは、パンプスなどのヒールがある靴が圧倒的に中心で、ウォーキングシューズは売場の片隅に置いてある程度でした。
    新宿店は駅に隣接している店舗ですし、ミセスは特に足に悩みのあるお客様が多いだろうと想定し、そのお客様をリピーターにつなげるための独自性のある売り場をつくれるのではないかということで、ウォーキングシューズの専用コーナーを作りました。
    新設した売り場では、単に商品を並べるのではなく、お客様に積極的に商品提案できるような環境も整備しました。
    シューフィッターの資格を持つ社員を配置し、お客様の足に合う一足を、ブランドの枠を超えてご提案できるような体制を整えました。この試みが非常に好評で、今に至っております。

     

    Q.お取り組みをされるにあたり、当時ご苦労されたことはありますか?

    繰り返しになりますが、当時はシニアマーケットという言葉自体ありませんでした。ですので、シニアというターゲットの中に大きなマーケットが存在するのかどうか、そして仮にそのようなマーケットが存在したとしてそのマーケットは百貨店が狙うべきものなのかどうか、手探りのまま進めておりました。
    その当時の当社の決断は業界内でも異端児扱いされました。取引先様からも当社の先行きを疑問視するお声をいただいた記憶もございます(苦笑)。


    Q.シニアマーケットという言葉自体がなかった当時から現在に至るまで、マーケットを分析にはどのような手法を用いられましたか?

    当初からシニアマーケットの創出のために重要なのは「リピーターの育成である」と考えておりました。そのための施策としてカード会員の獲得キャンペーンをはじめました。売上の約7割がカード会員の情報になると、カード会員情報が店全体の傾向を示してくれると言われています。ですので、まずはとにかく7割のお客様にカードを保有していただくべく、積極的にカード会員様を増やしていきました。
    その結果、1994年は約20万人程度だった会員が、1999年に50万人を突破しました。現在は100万人を超えています。カードデータというのは、いつ、どこで、何を買ったのかが明白にわかります。ひいてはそこからお客様の顔が見えてきます。流通業にとってカードから得られる購入履歴というのはナニモノにも変えがたい非常に有益な情報です。
    しかし購入履歴をベースにしているカード情報だけでは、どうしてもわからない情報があります。それは「買わなかった」という情報です。
    マーチャンダイジングを行うに当たって、「お客様が何を購入しなかったのか」、「なぜ買わなかったのか」という情報は、「買っていただいた」という情報に勝るとも劣らず重要なソースとなります。この情報を得るためには、お客様と会話をしている販売員から情報を吸い上げるしかありません。
    この点を踏まえ、カードからの購買データ、いわゆる定量データと、販売員メモとして収集するお客様の声、いわゆる定性データをうまく組み合わせて、マーチャンダイジング、顧客対策、そして売場づくりにフィードバックしていったのです。やがてこの活動が奏功し、お客様がまたご来店され、またその声に応える・・・という好循環のスキームが始まりました。
    このスキームにより、少しずつお客様のご支持を得るカテゴリーを増やしていくことができました。今のような売り場が構築できた背景には、このようなマーケティング分析があります。

     

    Q.当時の百貨店の戦略はエリアマーケティングが主流だったと思うのですが、その点はいかがでしたか?

    はい、ご存知のとおり、京王百貨店はご存知のとおり京王電鉄を核とした京王グループの百貨店です。ですので、必然的に京王沿線を中心とした小田急線・中央線沿線などを含んだ、いわば新宿以西が、主要な商圏になっておりました。
    しかし、生き残りの策としては取り組んだ中高年戦略は、他の百貨店にない特徴です。
    立地だけではなくニーズによって店を選ぶという時代に少しずつ変わっていく中で、当社の試みは結果的に新宿に乗り入れている都営新宿線や埼京線等、広域エリアのお客様にも振り向いていただくことに繋がりました。
    結果として、シニアというターゲット設定を行ったことが、京王百貨店の商圏を「新宿以西という線から、新宿を中心とした面へ拡げてくれた」と言ってもいいかもしれません。

     

    Q.京王百貨店の突出したシニアマーケティングは、その後どのような反響を生みましたか?

    当社の戦略が少しずつ認知され、また、団塊世代の定年退職に伴いシニアマーケットが俄然話題性を集めたのが2007年頃でしたが、ちょうどその頃から、私どもも自身の持っている強みを、もっと外に切り出していけないかという検討を始めておりました。
    そしてちょうどその頃、三井不動産のららぽーとさんから、出店のオファーをいただきました。当時、ショッピングモールは増加傾向にあり、全国各地に大型のショッピングモールが林立し始めていましたが、そのテナントはほとんどが若年層をターゲットにしている出店傾向でした。
    そんな中「3世代集客」という課題に取り組まれていたららぽーとさんでは、3世代の皆様に幅広くお買い物をしていただけるようなモール作り、すなわち特に祖父母世代の皆様にも支持していただけるようなテナント展開を実現するため、当社のノウハウにご期待くださったのです。
    その後2009年にららぽーと新三郷内に京王百貨店初のサテライト店を出店。洋服を始め和・洋菓子、そしてギフト商品などを取り揃えたショップですが、京王百貨店のシニア戦略が、沿線外へ進出を果たした第一歩となりました。
    前述したとおり、元々鉄道系の会社ですので、京王線沿線以外に出店するイメージはなかったと思いますし、私ども自身にもそのような発想はありませんでした。
    しかし、中高年に強いという特徴を作れたからこそ、このようなお声掛けいただけたのだと思います。
    ららぽーと新三郷への出店により、都心部とは違った百貨店に対する需要があることが分かりましたので、2012年にはセレオ八王子にも出店し、2015年の4月にはららぽーと富士見にも出店することになりました。ここから得られる新しいノウハウをもとに、今後は更に新しい市場への進出に取り組んで行きたいと考えています。

     

    Q.出店のみならず、商品開発にもチカラを入れてらっしゃるとお聞きしておりますが?

    はい、2014年からアパレル事業への取り組みをはじめております。長年の取り組みにより、ミセスファッションのノウハウも蓄積されてきましたので、同じ京王グループの関連会社である株式会社エリートを通じて、「ミ・デゥー」という婦人服ブランドの製造・小売り・卸売を手掛けています。
    当初は新宿店と聖蹟桜ヶ丘店の2店舗でスタートしましたが、今後はメーカーとして他の百貨店への出店や専門店への卸売り事業を進めていきたいと考えています。
    また、2年目となるこの春夏商品からは、価格を抑えたセカンドラインを立ち上げました。
    聖蹟桜ヶ丘店やサテライト店のような郊外型の店舗では、より買いやすい価格帯が求められるからです。現在はサテライト3店舗でも展開をしています。
    これらのブランドをうまくミックスさせながら、地方や郊外にも出ていきたいと考えており、2015年秋からは他の百貨店にも出店する予定です。

     

    Q.マーケティング活動をされる中で、何かキーワードになるものはありますか?

    皆様もお気づきの通りだと思いますが、やはりシニアの皆様の関心事というのは、まずは「健康」、そしてその先にある「美」といったキーワードだと思います。ただ、今では想像し易いこれらキーワードですが、私どもがそこに需要があるということが分かり始めたのは2001年頃だったと思います。言い換えれば、特にその頃からシニアの皆様の「健康と美」への投資が目立ってきたと言えるのではないでしょうか。
    また、20年もシニアマーケットと向き合っていますと、その間にもお客様の世代交代、そしてライフスタイルや嗜好の変化を感じる場面は多々あります。顕著なのは、当初私たちがターゲットにしていた戦前生まれのシニア方と、団塊世代の違いです。戦前生まれの方は日本式のスタイルで育ち、よく歩かれ、そして畳の上で暮らす生活を主としていました。しかし戦後世代は椅子中心の生活を送ってらっしゃる上、戦前世代の皆様とは食事環境や栄養摂取状況も違います。
    ライフスタイルの違いについてはよく言われますが、このような生活環境の違いから戦前世代と団塊世代では、例えば足の形などにも違いが見出せます。同じシニアといっても、20年の間に心身ともに変化が起こっているのです。
    ならば、同じウォーキングシューズでも戦前生まれの方たちとは形状も異なりますので、世代に合わせた商品を提案していかなければいけません。ひとつの売り場内でも、このようなマイナーチェンジを繰り返していく必要があります

     

    Q.戦前生まれから団塊世代、そしてその先の世代はどのように捉えられているのでしょうか。

    これから先の世代として特徴的なのは、バブル世代やハナコ世代とも呼ばれるグループに象徴されるような40代後半から50代のお客様ですね。この15年間の顧客動向を見ると50代後半から70代前半にかけて大きなお買上げのヤマができる傾向にあります。次世代シニアであるハナコ世代へもっと種をまき、購買を増やしていく必要があります。常に現在の中心顧客を大切にしながらも次の新しいシニア層との接点を拡大し、そのニーズを探り、挑戦していかなくてはなりません。
    幸い私たちが店を構える西新宿はオフィス街であり、ここには次世代シニア層である40・50代の女性が数多く勤務していらっしゃいます。この方たちへのアプローチを数年前から強化しています。この世代は年を重ねてもシニアと呼ばれたくないと思っているものの、年齢による体型変化に対応した、おしゃれで着心地の良い婦人服を求めています。そこで、2014年に「プレミアムキャリアスタイル」というキーワードで婦人服売場を改装し、管理職もいらっしゃるであろうこの層のオフィスファッションを拡充しました。3フロアある婦人服売場の中でも、このゾーンは好調で確実に顧客を増やしています。
    目の前にいらっしゃる顧客のニーズを吸い上げ、売場展開に反映させていく、というのは当社の得意な手法ですので、これまで私たちが培ってきた強みをうまく生かしていきたいと思います。

     

    Q.シニアターゲットに訴求する際気を付けていらっしゃること等あればお聞かせください。

    なんといってもシニアは百貨店に対して大きな信頼を寄せてくださっていますので、その信頼に応えることが第一です。それとともに百貨店にいらっしゃる方は、店頭での人と人とのつながり、会話を求めていらっしゃる方が多いので、売場での接客対応が重要です。
    また信頼、ということでは、たとえばテレビでご覧になるアナウンサーの方がお召しになっているファッションなどにも好感を持っていらっしゃいますし、お友達の口コミを含めて信頼できる相手からの情報を優先する傾向は強いと思います。
    その他、シニア世代への訴求はWEBメディアが有効でないというお話もよく耳にしますが、以前に比べてWEBでのお買物は増えています。シニアとWEBの関係も変化していると思いますし、これからのターゲットに対してWEBは一つの情報の動線に十分なりうるであろうと捉えています。

     

    Q.昨今の新たなお取り組み、「くらしサプリ」についてお聞かせください。

    ミセスへの取り組みをはじめた約20年前の中高年の環境や関心、ニーズはある程度ステレオタイプでした。しかしながらこの10年ほどで急速に幅が広がっていると実感します。嗜好や消費動向も変化していますし、また非常に多様化していると言えます。
    これまでのモノ軸ではある程度お客様のニーズに応えた商品展開や売場づくりができていると思うのですが、それだけではニーズの多様化に応えられなくなってきました。
    そこで、モノ軸だけでなく、もう一歩踏み込んだコトを充実させようと取り組みをはじめ、2014年11月に8階フロアにある「くらしサプリ」をスタートさせました。
    現在、「いきいきと生きる」「わくわくを楽しむ」「あんしんを増やす」「かいてきに暮らす」という4つの分野で写真のようなサービスを展開しております。

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    近年は、シニア向けのサービスもかなり増えてきていますが、そのニーズが多様化している分、利用者の目線に合致していないものも多数あります。
    例えば、人間ドッグやMRI等は、医療機関に申し込めばどなたでも受診可能ですが、ご夫婦で一緒に受診しようと思ってもこれらのサービスは実は受診可能日が男性と女性分かれていることが多いのです。「夫婦一緒に人間ドッグに行きたい」というお客様のお声を受けて、医療機関様に働きかけています。
    また、「くらしサプリ」は一次的なニーズに呼応するだけでなく、「潜在的な部分まで含めてニーズに対応してくれる場所」、「問題を解決できる場所」、そして「楽しいことがある場所」であることを目指しています。そのためカウンターサービスだけではなく、定期的にイベントも開催しています。買い物に来られたついでに同じ建物内で教室等に参加できるという気軽さもあり、非常に好評です。もちろん、リピーターのお客様も多くいらっしゃいますので、毎回違うコンテンツで楽しんでいただけるよう、季節に合わせて変化させたりするような工夫も施しています。

     

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    Q.コトを商品にするとなると、目に見えないものを商品化するわけですが、どのようなプロセスで商品開発をされるのでしょうか。

    モノ軸と同様に、お客様が望まれることを対面で拾い上げ、それに応えられるようなサービスに開発しています。特にお客様のニーズを拾うということは、京王百貨店としてこれまで売場で実践してきたことを十分に活かせる部分です。
    売場ではありませんが、8階にはカウンターを設けておりますし、イベント開催時にお客様のお声・ニーズをできる限り拾うようにしています。
    カウンターではコンシェルジュのように色々なサービスの中からお客様のニーズにあう商品をご提案しているわけですが、当然お応えできない場合もあります。もっとこんなサービスがあればニーズに応えられるのに、といった現場の声も重要になってきます。
    またお客様のお声がモノにつながることもあります。お客様自身何となくこんなコトがしたい、とおっしゃっていても、お話を聞いていくとニーズを満たすのが実はモノであったりします。本来「くらしサプリ」はコトのサービスですが、モノの商品開発にもつなげていける可能性も秘めています。
    それができるのも、京王百貨店が全国展開していないからというのもあると思います。全国何十店舗も展開していれば、ニーズの最大公約数を反映せざるを得ないのですが、2店舗という小規模でありながらも、新宿という立地である程度のターゲット母数がありますので、それに応えるだけでもかなりのマーケットはありますね。

     

    Q.人気のサービスやイベントはどのようなものでしょうか。

    イベントですと、スマートフォンやタブレット教室、絵画教室等が人気です。
    「健康」というキーワードも非常に人気ですが、それと同じくらい「楽しむ」ことに対しての関心が大きいように思います。特に絵画教室はお申込み多数で早くから定員に達することが多いですね。「楽しむ」ということや「趣味」に関しては、これから元気なシニアが増える中で非常に有用なコンテンツかと思います。

     

    Q.戦前生まれの方から団塊世代、ハナコと3つのフェーズがあるとお聞きしたのですが、大きくなっていくシニアマーケットをどのように区分し整理していらっしゃるのでしょうか?

    これまで年代を軸にターゲットを考えてきましたが、近年定年後も仕事をされる方もいらっしゃれば、年金をもらっている方、単身の方等さまざまですし、生活スタイルも多様化しています。昔は比較的画一的なマーケットだったものが、最近は年齢軸だけでは区切れないほど細分化されていますので非常に難しいですね。これからもお客様のお声を分析し、新たな軸を見つけていきます。

     

    Q.最後に、「くらしサプリ」も含め、今後の取り組みについてお聞かせいただけますでしょうか。

    これから、もっともっと元気なシニアが増えることが想定されますので、趣味の分野は増やしていきたいと考えています。
    これと、同時にやはりニーズが大きい介護関連への取り組みも重要と考えています。
    趣味と介護は真逆の要素ではありますが、ニーズが顕在化しているにも関わらずそれに応える商品・サービスが不足していますので、我々としても何とかお客様の声にお応えできるようにしたいです。
    シニアという言葉はどうしてもネガティブな印象がつきまとってしまう側面があります。
    しかしそんなイメージを払拭して余りあるほど、明るく楽しく暮らしていただけるような、ポジティブな施策をどんどん打って行きたいと考えています。
    特に介護となると、大変、辛い、というイメージが強くなってしますが、極端なことを言えば「介護でさえ明るく前向きに」なるようなサービスをご提供することが私どもの使命です。
    そしてもう一点、今後の強化ポイントはWEBとの連動です。
    イベント等の告知ももちろんですが、イベントへのエントリーや、WEB上のコンテンツ自体がサービスの一環になるように提供していきたいですね。
    今のシニアの皆様も既にWEBには積極的に触れ合っていらっしゃいますが、これから5~10年後のシニアにおいてはその傾向は更に顕著です。
    例えばWEBでのお買い物など何の抵抗もなく、当たり前にこなされる世代です。
    現在でも一部eコマースには取り組んでおりますが、この点を更に強化し今後更にお客様と接点を拡大していきたいですね。
    そうすれば、「お客様の声を現場に反映する」という従来からの京王百貨店らしさを、WEBによっても築いていくことができるはずです。
    最後に、私ども京王百貨店には幸いにしてご支持をいただいている「お客様」と、コミュニケーションの場としての「スペース」があります。
    これらの経営資源を活用して、これからも新しいマーケティング活動にチャレンジしていきたいと考えております。
    ですので、同じくシニアマーケティングにチャレンジしようとしているメーカー様やサービス業様とは積極的に協力し、新たな商品やサービスの開発をさせていただければと願っております。ぜひ、お声掛けをお待ちしております。

     

     

    株式会社京王百貨店 ホームページ
    http://www.keionet.com/defaultMall/top/CSfTop.jsp

    くらしサプリ ホームページ
    http://info.keionet.com/shinjuku/event/kurashisapli.html

     


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    ウルトラマンシリーズのテレビ放送開始から、来年で50周年を迎える円谷プロダクション。今回のインタビューでは、ウルトラマンが支持される理由、作品に込められているメッセージから、シニアの定義、そして三世代マーケティングに成功したキャラクターといわれる要因など、幅広くお話をお伺いしました。

    2015年7月 取材

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    「ウルトラマン」 Blu-ray BOX 好評発売中

     


    Q.ウルトラマンは長年のヒットシリーズですが、ヒットの要因は何だと思われますか?

    imageウルトラマンシリーズは1966年に『ウルトラマン』がテレビ初放映されてから、いよいよ来年の2016年には50周年、また『ウルトラマンティガ』が放映されてから20周年と、節目の年を迎えます。
    これだけの長きにわたってウルトラマンシリーズを続けてこられたのは、やはり創業者の円谷英二をはじめとした制作スタッフの誰も見たことがない作品を作り上げようという情熱と、それを支持してくれたファンのおかげでしょうね。
    多くの方に支持される作品というのは、計算だけでは絶対につくれないと思うんです。一番重要なのは情熱じゃないでしょうか。
    円谷英二と一緒に仕事をして、会話したことのある人間は、円谷プロダクションの中でほぼ私だけだと思いますが、円谷英二は「映画ではなく、テレビで新しいことをやりたい」、「子供たちに喜んでもらえるものを作りたい」、「いいものを作りたい」という熱い想いを持つ、いわゆる“職人”でした。
    その熱意で、30分のテレビ番組とはいえ、撮影中にピアノ線が少しでも映り込んだ時や、編集されたものが面白くなければ、すぐやり直しをするようにスタッフに命じていましたね。あまり大きな声では言えませんが、相当な赤字だったはずです。(苦笑)

    imageまた、円谷英二だけではなく、シリーズ構成を担当した脚本家の金城哲夫や、ヒーローや怪獣のデザインを担当した成田亨をはじめとした他スタッフも同じ想いを持っていました。
    作品にはクレジットが残りますし、人気を得たシリーズならば再放送という形で5~10年先でも見てもらえる可能性があります。そのため、スタッフもいい加減な作品にはできないので余計に力が入るという別の作用もあったのかもしれません。
    今現在でも我々はその情熱を受け継いで作品をつくっていますが、限られた制作費の中で、知恵を出しながら、視聴者が期待に応える作品をつくらなければいけませんので、いい意味でプレッシャーを感じています。“ものづくり”は本当に苦しいですよ。
    また、円谷英二だけではなく、シリーズ構成を担当した脚本家の金城哲夫や、ヒーローや怪獣のデザインを担当した成田亨をはじめとした他スタッフも同じ想いを持っていました。
    作品にはクレジットが残りますし、人気を得たシリーズならば再放送という形で5~10年先でも見てもらえる可能性があります。そのため、スタッフもいい加減な作品にはできないので余計に力が入るという別の作用もあったのかもしれません。
    今現在でも我々はその情熱を受け継いで作品をつくっていますが、限られた制作費の中で、知恵を出しながら、視聴者が期待に応える作品をつくらなければいけませんので、いい意味でプレッシャーを感じています。“ものづくり”は本当に苦しいですよ。
    もう一つの要因を挙げるとしたら、メディアの変遷です。
    1966年当時のカラーテレビの普及率は1~2%程度でしたので、当時の視聴者の多くは、モノクロで見ていたんです。ウルトラマン特有の赤と銀のカラーリングや、カラータイマーの点滅、隊員のたちの服装の色も、何色なのか分からない。
    それが、カラーテレビが普及するようになると、モノクロの世界観とは全く違う作品に見えますので、更に深く記憶に残ったのかもしれません。
    更に、当時は特撮作品がほとんどありませんでしたし、ヒーローものも今ほど多くありませんでした。そのため、怪獣ものなどの特撮作品はお金を払って映画館で見るしかなかったのですが、ウルトラマンはテレビで無料で見られるということもあり、一気に支持を得ました。当時の最高視聴率は42.8%。今振り返ってみても、すごい数字ですよね。「映画ではなく、テレビで新しいことをやりたい」というスタッフの情熱が視聴者にも伝わったのではないでしょうか。
    もう一つの要因を挙げるとしたら、メディアの変遷です。
    1966年当時のカラーテレビの普及率は1~2%程度でしたので、当時の視聴者の多くは、モノクロで見ていたんです。ウルトラマン特有の赤と銀のカラーリングや、カラータイマーの点滅、隊員のたちの服装の色も、何色なのか分からない。
    それが、カラーテレビが普及するようになると、モノクロの世界観とは全く違う作品に見えますので、更に深く記憶に残ったのかもしれません。

     

    Q.ウルトラマンシリーズを通じた三世代マーケティングについてお聞かせください。
    ウルトラマンダイナ-blu-ray-box-2015年9月25日発売

    ウルトラマンダイナ-blu-ray-box-2015年9月25日発売

    ウルトラマンシリーズの放送開始当時に子供だった世代は、現在55歳~65歳になります。放送開始から来年で50年になり、その間にシリーズを作り続けてきましたので、その子供も孫もウルトラマンシリーズを見ているんですね。
    過去の作品を三世代で見るというのはなかなか難しいかもしれませんが、最新の作品の中で、ウルトラマンが戦ってピンチになると、歴代のウルトラマンが助けにくる設定にしています。つまり、今の子どもが見ている最新のウルトラマンシリーズの中で、親や祖父の世代に登場したウルトラマンが共演するということです。三世代で同じヒーローを共有できますので、「このウルトラマンは昔こうだったんだよ」、「この当時こんな怪獣と戦っていたんだよ」と世代間の会話が生まれます。世代が違っても、共通項の話題が持てる。これが我々の三世代マーケティングの特徴ですね。
    1966年当時は放送時間帯も含めて、子供のためだけの作品ではなく、大人を含めたファミリー向けの内容でした。平成以降は玩具メーカーのバンダイさんと一緒につくってきた経緯もありますので、どうしても子供向けコンテンツとして思われがちです。しかし、我々は昔から変わらず、子供だけではなく大人に対しても大人だからこそ本質的に分かるメッセ―ジを込めて制作しています。
    そのメッセージの根底にあるのは、「愛」、「正義」、「あきらめない気持ち」といった普遍的なものですが、各時代の背景や価値観を踏まえています。
    どの作品でも、ヒーローであるウルトラマンが、地球の平和のため怪獣と戦う、というストーリーですが、登場する怪獣の特徴やバックグラウンドの設定で我々のメッセージを込めて表現することが多いですね。
    怪獣あってのウルトラマンですし、数多くの怪獣がいることでファンに楽しみを与えていますので、一番のヒーローはウルトラマンですが、主役は怪獣といっても過言ではありません。

     

    Q.込められたメッセージの具体例があれば教えてください。

    2011年3月11日の東日本大震災が起きる前、新しい映画の脚本開発をしており、ほぼ方向性が決まったところでした。しかし、その後震災が起き、あれだけの甚大な被害がありましたので、怪獣がビルを次々に壊すというという描写を全て変更することにしました。そして完成させた作品が、2012年3月公開の「ウルトラマンサーガ」です。
    今の世の中、どうしても目先のことばかりになってしまいがちですし、震災のことも時が経てば風化してしまいます。
    しかし、あの時日本全国で共有した「復興」、「助け合おう」、「みんなでがんばろう」といったことは、これから先の世代とも共有していかなければなりませんよね。「ウルトラマンサーガ」にはそんなメッセージを込めました。
    直接的なメッセージではないですが、震災を経験した世代が、将来の子供、孫と一緒に見てメッセージを共有できるよう、映画の最後にウルトラマンが宇宙に帰るシーンで、夜の暗い東北地方に明かりが少しずつ点いていく演出にしました。
    我々としては、こういったメッセージを込めたウルトラマンシリーズが各世代間をつなげる、接着剤になってくれると信じています。

     

    Q.「シニア」とはどう定義づけされていますか?
    帰ってきたウルトラマン-blu-ray-box-2015年11月26日発売

    帰ってきたウルトラマン-blu-ray-box-2015年11月26日発売

    よく60歳以上、65歳以上をシニアとされることが多いようですが、60代後半でも現役の方もいらっしゃいますし、色んな立場の方がいらっしゃいますので、年齢で定義づけないほうがいいですね。
    我々はコンテンツ軸で定義づけており、「ウルトラマン」放送開始当時の視聴率約40%を支えてきた世代の方を「シニア」としています。
    また、ウルトラマンというヒーローの特性上、どうしても我々にとっての「シニア」=男性になってしまいます。ウルトラマンの認知度自体は90%以上ありますが、一般的に女性はヒーローに興味ないですよね(笑)。ウルトラマンという名前は知っているが詳しい内容までは分からないという女性がほとんどだと思います。 ただ、女性が安心してお子さんやお孫さんに見せることができるコンテンツ、キャラクターだと思いますので、女性の好感度も高いのではないでしょうか。
    「シニア」世代は長年のファンですから大切にしていきたいですし、これから更に密なるコミュニケーションをとっていきたいと考えています。
    ウルトラマンというキャラクターを通じて若い頃を思い出し、元気をもらうなどして活力にしていただきたいですね。それが今までウルトラマンを育ててくれたファンへの恩返しですし、社会の一員として我々がやらなければいけないことだと思っています。

     

    Q.「シニア」とはどんな特徴を持っていると思われますか?

    私も68歳のいわゆるシニア(認めたくはありませんが・・・)ですが、70年安保時代を経験した世代ですので、それぞれが異なる価値観・生きる指針を持っています。何か押し付けられると、“そうじゃない!おれたちはこういうやり方をしてきたんだ!”という、プライドのようなものですね。
    そのため、「シニア」という大きい括りの中で、何か一方的に押し付けても、あまり響かないと思います。価値観が多種多様だからこそ、それぞれのバックグラウンドに応じたやり方が必要です。
    しかし、唯一大きい括りの「シニア」の中で入り込めるキーワードがあるとすれば、それは「孫」です。
    私自身も3人の孫がおりますが、孫には絶対嫌われたくないんですよ(苦笑)。ここだけの話、子供より可愛いです。親ではないので、教育についての責任もないですし、とにかく財布の紐が緩みます。同窓会での話題も、「病気」か「孫」の話がほとんどですし、皆「孫」の話になると顔つきが変わりますよ。

     

    Q.ウルトラマンは三世代を共有できる数少ないキャラクターと思いますが、何かベンチマークされている企業やキャラクターはありますか?

    他キャラクターや企業の展開を模倣するのではなく、円谷プロダクションならではの展開をしていきたいと思いますので、特にベンチマークしているところはありません。できれば、我々が「三世代マーケティング」におけるモデルケースになるように結果を残さなければいけませんし、それが責務だと考えています。
    前例がないため、新しい取り組みとなると知恵を絞らなければいけませんね。
    例えばですけど、日本国内だけでなく、ウルトラマンの認知度の高いアジアでの企画展開等、マーケットを広げていきたいと思っています。それには、さまざまな視点や戦略が必要ですし、海外の方と情報共有・交換することにより、我々の想像を超えた成果が生まれるかもしれませんね。

     

    ウルトラマンx-毎週火曜日夕方6時より-テレビ東京系列-ウルトラマン列伝-内にて好評放送中 ©円谷プロ

    ウルトラマンx-毎週火曜日夕方6時より-テレビ東京系列-ウルトラマン列伝-内にて好評放送中 ©円谷プロ

     

    ©円谷プロ

     

    株式会社円谷プロダクション ホームページ
    http://www.tsuburaya-prod.co.jp/

    円谷ステーション – ウルトラマン、円谷プロ公式サイト
    http://m-78.jp/

     


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    世界の人々の健康に貢献することを目標として事業展開する大塚グループの中で、日本市場の約50%シェアを誇る輸液メーカー、大塚製薬工場。そして、医療現場で蓄積したノウハウから、一般生活者向けに開発された“経口補水液”『オーエスワン』。今回のインタビューでは、『オーエスワン』の開発のきっかけから、リーディングカンパニーとしてのマーケティングゴール、現在の課題、そして今後拡大するシニアマーケットをどう捉えているのかなど、幅広くお話をお伺いしました。

    2015年3月 取材

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    Q.まず『オーエスワン』の商品についてお聞かせいただけますか?

    大塚製薬02『オーエスワン』は、いわゆる“経口補水液”といって、軽度から中等度の脱水状態の際に失われる、水と塩分を補給・維持するのに適した“病者用食品”です。
    私たちの身体の中にある体液というのは、単なる水だけではありません。
    ナトリウム(塩分)やカリウム等、健康な身体を維持するために必要な成分が含まれております。汗や尿・便によって日常的に排出され、それを食べ物や飲み物から吸収する、というサイクルでバランスを保っています。
    しかし、真夏に暑熱環境で作業をする時や風邪をひき発熱がある時など、大量に汗をかいたり、嘔吐・下痢などによって体液の排出が続くと、必要な水分や塩分が不足してしまいます。こうした体液の不足によって起こるのが脱水症です。
    脱水症が起こると、とにかく水を摂ることを意識する方が多いのですが、単なる水だけではなく、体液と同じように塩分を含んだものが必要になります。
    この必要な成分をバランスよく配合し、脱水状態に適した飲料が『オーエスワン』なのです。

     

    Q.一般的に言われる水分補給飲料とは成分が違うんですね。

    はい。ではまず、“経口補水液”について、ご説明します。
    風邪をひいたとき等に病院で点滴処置をされることがあると思います。これを “輸液療法“と言います。“輸液療法”は血管に直接水分や電解質、栄養などを補給する方法です。
    それに対して、軽度から中等度の脱水状態に対して、必要な水分・電解質を口から取り入れる(経口的に補給する)”経口補水療法(Oral Rehydration Therapy;ORT)“という方法があります。脱水状態への対処において経口補水療法(ORT)は点滴と同等の効果があることが知られています。
    この経口補水療法に用いられるのが『経口補水液』で、WHOや米国小児科学会等でその組成が決められています。『オーエスワン』は米国小児科学会の基準に準じた組成となっております。
    冒頭に、“病者用食品”とお話しましたが、開発過程で臨床試験を行い、エビデンスを持っております。
    そのため、“特定の疾病のための食事療法上の期待できる効果の根拠が、医学的・栄養学的に明らかにされている食品“という意味で、消費者庁から“個別評価型病者用食品”の表示許可を得ています。

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    Q.開発に至る背景をお聞かせいただけますか?

    経口補水療法は実は古くから発展途上国で用いられている方法で、世界的に注目されたのも1970年代でした。南アジアでコレラが流行した際に用いられ、コレラによる死亡率が劇的に改善しました。
    しかし、先進国では比較的医療へのアクセスが容易なこと、また衛生環境が整っていること、さらに日本では輸液(点滴)を希望する患者が多いことから、経口補水療法は一般に用いられていませんでした。
    一方で、冬場に流行する感染性胃腸炎は、乳幼児で流行し、コレラのような激しさはないものの下痢や嘔吐を伴うことから、脱水状態に陥りやすい疾患です。
    治療には大人と同様に輸液が用いられますが、小さな子供に輸液を行うことは、技術的な困難に加えて、針を刺すことを当然子供は嫌がります。
    そこで、輸液によらずに脱水状態の進行を回避できる方法がないかと考え、経口補水療法に用いられる経口補水液の本邦での開発に着手し、製品化に至りました。
    輸液に比べて経口補水液による脱水状態への対処は、針を刺さないため痛みを伴わず、口から飲むだけの簡便なもので、方法を理解すれば自分で(小さい子供の場合はその親が)対応することが出来ます。

     

    Q.『オーエスワン』の購入者に特徴があればお聞かせください。

    小さいお子さんをお持ちのママや、ご高齢の購入者が多い傾向にありますね。
    乳幼児は新陳代謝が活発なことに加えて、体の水分量を調整する機能が未発達ですし、免疫力(抵抗力)が低いため感染症にかかりやすいという特徴があります。特に冬場の感冒・感染性胃腸炎などに罹患すると脱水状態に陥りやすい傾向にあります。
    高齢者は、加齢と共に筋肉量が低下するため、体に保持できる水分量が少なくなります。
    それに加えて喉の渇きを感じにくくなったり、更には食事の量が減るなど、様々な機能低下による水分摂取量の減少によって脱水症になるリスクが高くなります。ですので、最近では一度医師に奨められて体感された方が常備用ということで、オーエスワンをケースで購入して下さる方も増えてきました。

     

    Q.マーケティングゴールはどこに設定されていらっしゃるのでしょうか。

    脱水症のリスクをきちんと理解していただいた上で、『オーエスワン』を知っていただき、家に“常備”してもらうということです。
    あくまで、経口補水療法についての理解が前提ですが、脱水状態が進行する前に対処をすることが可能になれば、脱水状態に苦しむ人を少なくすることができると考えています。
    そのためのコミュニケーションとして、タレントの所ジョージさんを起用して「STOP脱水、ストックOS-1」というキャッチコピーで広告・宣伝活動を行っています。

    os1広告

     

    Q.経口補水液のリーディングカンパニーである御社ですが、何か課題があればお聞かせください。

    我々は、先ず脱水状態に陥るリスクの高い方々に製品と情報をお届けすることを第一に、特に小さいお子さんをお持ちのママと高齢者とのコミュニケーションに取り組みました。
    2010年に猛暑日が続き、熱中症の注意喚起がメディアを通じてされるようになりましたので、皆さん水分と塩分も摂らなければいけない、という事はご存じなのですが、具体的にどうすれば良いのか認知されていないのが現状です。
    本来であれば、我々も広くコミュニケーションをしていかなければならないのですが、“病者用食品“という特殊なカテゴリですので、「健康増進法」や「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保用に関する法律」等に従う必要があります。そのため一般消費者の方にわかりやすい表現が難しいというジレンマを持っています。
    これら制約の中で、最適なコミュニケーション方法を見出す事が一番の課題ですので、常に模索していますね。

     

    Q.現在高齢者に対してはどのようなコミュニケーションを取られているのでしょうか。

    現在は、医療従事者を介在した、間接的なコミュニケーションをメインとしています。
    『オーエスワン』は 飲料ですが、日頃から常用的に飲むことを目的としたものではなく、主に調剤薬局とドラッグストアを流通販路としています。これは医師や薬剤師からきちんと説明を受けた上で購入していただく、という当局との指示を主旨としているためです。
    従って、商品サンプリングに代表されるような、消費者との直接的なコミュニケーション手法は採用しておりません。

    Q.具体的なコミュニケーションとしてはどのようなことが挙げられますか?

    〝病者用食品“という位置づけにもある通り、基本的に脱水状態にある方に対して医師の指示のもと、飲用いただく製品であるため、医師および医療関係者にご紹介し、オーエスワンを必要とする方に勧めていただいております。
    最近の取り組みですと、高齢者の熱中症対策として何かできないか、約2年前から社会福祉協議会等、地域の高齢者の見守りをされている方などへの情報提供の方法も模索しています。
    その他、脱水症に対する注意喚起の啓発活動も行っております。
    その成果もあり、高齢者にも経口補水液に関しての認知は進んでいるようです。しかし、残念ながら十分な理解までは至っていないようですね。
    これまでは経口補水療法(ORT)の啓発活動をすることによって、必然的に『オーエスワン』の購入が増えると考えておりましたが、類似商品も増えましたし、近年は企業の宣伝を鵜呑みにされない傾向にありますので、コミュニケーションにも工夫をしていかなければいけませんね。

    Q.現在シニアマーケットは拡大傾向ですが、これについてはどうお考えでしょうか。

    坂下氏脱水症リスクが高い高齢者が増えるということは、今後力を注がなければならないと考えています。
    しかしながら、高齢者にだけ注力するではありません。
     『オーエスワン』は高齢者だけが使う商品でもありませんので、それぞれの需要期に対してきちんとアプローチをしていく必要があります。
    今のところはシニアマーケットが拡大してもしなくしなくても、必要な方に、必要な時に飲んでもらう、ということですね。
    とは言え、乳幼児の頃から『オーエスワン』を飲んでいただき、時間をかけながら各自の日常にブランド・商品を認知いただく、年を重ねても「脱水症状の時には『オーエスワン』!」と思い出していただける、といったような長期的な取り組みも重要だと思います。もしかしたら、これもある意味シニアマーケティングの一環かもしれませんね。かなり長期的に見た場合ですが・・・(笑)。

     

    Q.最後に、今後の課題をお聞かせいただけますでしょうか。

    ひとつは、脱水症の“予防”ですね。
    『オーエスワン』の開発過程で、輸液(点滴)との補水効果の同等性のエビデンスは持っていますが、“予防”についてのエビデンスはまだ持っていません。
    本来であれば、脱水症になってからではなく、脱水症になる前に対処するのが最も良い方法だと思います。
    将来的に、予防適用や表示許可等のエビデンスを持って啓発できれば、需要も高くなると想定されますし、飲んでいただくシーンも広がると思います。
    我々としては、高齢者をはじめとして、乳幼児、暑熱環境にある方などが少しでも脱水状態が進行するリスクを回避できる環境づくりを目指していきたいですね。

     

    『オーエスワン』オフィシャルサイト
    http://www.os-1.jp/index.html

     


    <<<第12回 からだづくり三鷹                第14回 株式会社円谷プロダクション>>>



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    将来への不安から今の状態を
    「維持」するために運動するシニア

    からだづくり三鷹フィットネスクラブ 所長 寺本由美子氏

    『会員様ひとりひとりのニーズに合わせたトレーニング指導』を心がける、からだづくり三鷹フィットネスクラブ。それぞれの目的を達成できるよう、健康状態に合わせたプログラムを提供し、定期的な個別カウンセリングを行う等、一人一人に密着しているため、ご高齢の方にも評価を頂いています。今回のインタビューでは、施設の概要や特徴をはじめとして、健康運動指導士、西東京糖尿病療養指導士、介護福祉士の資格を持つ寺本所長が、日々のトレーニングを通じて感じるシニア層の特徴について、幅広くお話をお伺いしました。

    2015年6月 取材

    【加工】受付1


    Q.様々な資格をお持ちですが、まず寺本所長のプロフィールについて教えてください

    寺本由美子氏02大学を卒業してから健康運動指導士の資格を取得し、一般のフィットネスでインストラクターをしていました。運動指導自体は約30年弱やっていますが、ここに来る前は、介護施設の運営会社の職員でした。
    そこでは介護業務もしておりましたので、介護福祉士の資格を取得し、デイサービスやグループホーム、介護付有料老人ホームの入居者への運動指導、市から委託される介護予防運動教室での指導もしておりました。
    西東京糖尿病療養指導士は、高齢者の糖尿病が非常に多く、糖尿病セミナーのお手伝いをさせていただく機会があって、高齢者と関わるのであれば、勉強したほうがいいだろうと思い、昨年取りました。
    介護予防の仕事に携わり、参加者を見ていると、色々な変化があって、とても面白いんです。これまでの経験を活かして、高齢者の運動指導のスペシャリストになりたいですね。

     

    Q.からだづくり三鷹フィットネスクラブの会員はどのような方が多いのでしょうか。

    若い方もいらっしゃいますが、大手フィットネスに比べて全体の年齢層は高いです。一番多い世代は40代・50代ですが、60代以上が全体の1/3を占めており、平均年齢が現在52.8歳です。40代・50代は主婦層が多いのですが、60代以上は男性のほうが若干多いですね。 
    現在は元気な会員ばかりですが、以前は介助が必要で、付き添いの方とトレーニングに来られる方もいらっしゃいました。
    また、中には糖尿病の方もいらっしゃいます。ただ、ここに来られる方は通院されていて、医師の指導に基づいた自己管理をきちんとされている方が多いですね。西東京糖尿病療養指導士、介護福祉士の資格を持っておりますので、症状や数値等をお聞きしながら、状態に合った指導にしています。

     

    Q.「健康クラブiみたか」について詳しくお聞かせいただけますか。

    「健康クラブiみたか」は、経済産業省からの助成金をもとに、株式会社まちづくり三鷹を中心に薬・食・運動がトータルに連携して、生活習慣の改善や介護予防を目的につくられた会員制健康クラブです。
    内科クリニック、調剤薬局とフィットネスが連携して、皆さんの健康づくりをトータルでサポートできるように、平成22年に三鷹産業プラザ5階に開設されました。
    内科クリニックでの定期健康診断結果に基づいた栄養相談、調剤薬局での服薬相談、フィットネスでの運動プログラムを作成するといった、一貫した会員の健康維持を目指していましたが、残念ながら平成26年3月をもってサービスを終了いたしました。

     

    Q.どういう目的で通われていらっしゃるのでしょうか。

    会員によって違いますが、多いのは健康診断の血液検査の結果で、病気までではなくとも、数値が悪く、食事や運動に気を付けるよう言われた方が多いですね。
    40代・50代の主婦の方は「痩せたい」という方が多いですね。どうしても50代になると、特に女性はホルモンバランスが変化して痩せにくくなってしまうんです。
    対して、60代以上の方は、「筋力を向上させたい」、「痩せたい」というよりも、皆さん将来に不安を抱えていらっしゃるようで、「寝たきりになりたくない」「介護を受けたくない」という理由から、「今の状態を維持したい」という方が多いです。70代・80代はほとんどそういう方ですね。
    若い世代は、体脂肪率を何%にしたい、体重を何キロ落としたいなど、明確な数字で言われる方が多いですが、高齢者は感覚的な動機が多い気がします。

     

    Q.60代以上の方のトレーニングはどのようにされているのですか。

    日頃のお悩みは、階段を上がるのが大変になってきた、椅子からなかなか立ち上がれなくなってきた、歩くとフラフラする、と皆さん異なります。ただ、足を鍛えたいからといって足を動かせばいいというわけではありません。足を動かすためには、まず関節や筋肉の動きが滑らかにする必要があります。そのためには、まず身体をほぐす、ということから始めます。万遍なく全身を動かさなければいけませんので、どんな方でも最初に行うメニューはある程度決まっています。
    はじめは、言った通りのトレーニングを一緒にするのですが、ある程度一人でできるようになると、独り立ちしていただきます。そうすると、皆さんそれぞれの自己流になります。やはり運動の効果を上げるためにはフォームや動きが重要になりますので、随時スタッフがチェックし、注意するようにしています。
    更に慣れてくると、「このメニューはやりにくい」、「ここが痛い」など、だんだん自分の意見が出てきますので、進捗に合わせたメニューになるよう、15回のトレーニングごとにプログラムの見直しをしています。
    とはいっても、高齢者の場合、無理をしないようにしなければいけません。高齢になればなるほど、身体が思うように動かなるため、腕を伸ばせなかったり、膝を曲げられなかったり等、できない事が増えてきます。そのため、極力身体に負荷をかけず、できるメニュー/できないメニューを見極めながら、その人に合ったメニューにアレンジしています。
    中には「物足りない!」、「もっとやりたい!」とおっしゃる方もいらっしゃいます。ただ、無理な運動をしてしまうと、次の日まで疲れが残りますし、筋肉痛にもなってしまいますので、まずは物足りないくらいが丁度良いです、とお話しています。高齢者ほど頑張り過ぎる方が多いですね・・・苦笑

     

    Q.普段トレーニングをされていて、シニア層の特徴としてお気づきの点があればお聞かせください。

    高齢者といっても、戦前生まれと戦後生まれは全く違うように感じます。
    60代・70代の方は、「ここが痛い」という訴えが多いですが、80代の方は大抵「できます」、「大丈夫です」とおっしゃいますし、我慢して頑張り過ぎる傾向にあります。実は足腰が痛い、血圧が高いため毎日服薬している、心臓が弱かったりする方でも、それを見せないのが80代です。
    会員の最高齢で87歳の男性がいらっしゃるのですが、毎回マシーンで30分歩いて、筋トレもされます。更に、ご自宅でも毎朝30分の運動もされているそうです。非常に健康意識が高く、とにかく元気ですね。心臓が悪いそうですが、全くそうは見えないんですよね。
    色々お話を伺っていると、80代の方は、戦時中の苦しい生活を経験されています。生活が苦しいと、生きていくために働かなければいけませんし、そのためには動かなければいけませんので、かなり身体を使っていたと思います。筋肉の貯金みたいな感じでしょうか。身体の地盤ができているような気がします。
    それに対して、60代・70代の方は、苦労されていないとは言い切れませんが、戦争を体験されている80代と比べるとやはり違いますね。
    今の若い世代は、ファーストフードやジャンクフード等、食べ物ひとつとっても昔とは全く違います。小さい子供の遊ぶ場所にしても、昔は外で走り回ることが多かったですし、公園で何をしてもいいという時代でしたが、最近はボール遊びができない公園があったり、身体を動かす場所が少ないですよね。遊び方の選択肢も増えて、家の中でゲームをする子供もいます。
    子供の体力低下が問題になっていますが、恐らく今の子供世代が大人になった時、病気や怪我をしやすく、回復する力も弱いと思います。
    やはり世代や、育つ生活環境によって全く違うと思いますね。1週間に何百人と接していると、結構感じるものですよ。

     

    Q.他のフィットネスクラブとの違いはどのようなところでしょうか。

    一番の違いは、パーソナルトレーニングとはいかないまでも、個人に密着しているところでしょうか。
    若い世代ですと、自分のペースで「黙々とトレーニングをしたい」という方が多いのですが、年齢層が高くなると、「これでいいんだろうか」、「ちゃんとやれているのだろうか」と不安をお持ちの方が多いです。
    ここでは、お一人でメニューをこなせるまで指導しますし、お一人でやられていても、スタッフが随時チェックしています。施設面積は決して広くはありませんが、スタッフの目が行き届いています。会員の年齢層が高いのはそのためではないでしょうか。
    もうひとつは、会員同士の会話が活発なことです。特に高齢の方がそうおっしゃいますね。
    一人暮らしの高齢の方ですと、家に帰っても会話する相手がいないので、だんだんと言葉も出づらくなくなってしまいますが、色んな人と会話すると、脳の体操になります。運動は脳の活性化に効果があり、認知症の予防になると言われていますので、ここに来れば身体だけではなく会話でも脳を活性化できるということですね。もちろん、大手のフィットネスクラブでも会話はあると思いますが、ここは狭い分、会話をする時間が多いと思います。
    実際にここでお知り合いになられたコミュニティーもあります。午前中は女性の方たちが本当に賑やかですよ(苦笑)。女性のコミュニケーションの凄さは目を見張るものがあります。とにかくパワーがありますし、年齢は関係ないようなので、女性特有なのかもしれません。
    時には女性コミュニティーと同じ時間帯に来られる70代・80代の男性も混じっていらっしゃることもあります。リードする方は年齢層の高い女性が多いですが、積極的に男性にも声をかけられていますね。
    皆さんはじめは運動するために来られているのですが、だんだんとコミュニティーも楽しくなり、それを楽しみにされている方もいらっしゃると思います。
    カウンターの前にマシーンがありますので、カウンターにいるスタッフに声をかけていただいたりすることもあり、施設の構造自体もそうですが、私たち自身も目が届きやすく会話が生まれやすい環境づくりを心掛けています。

    からだづくり三鷹

     

    あと、地域密着型ということでしょうか。ここから歩いて数分のところにお住まいの方が多く、近隣住民の方がほとんどです。中にはトレーニングウエアを着てこられて、ご自宅でシャワーを浴びるという方もいらっしゃいます。

     

    Q.総務省主導のプロジェクトに携わっていらっしゃるとお聞きしたのですが、具体的にはどのようなことをされていらっしゃるのでしょうか。

    ICT健康モデル事業の実証プロジェクトですね。ICTシステムや健診データ等を活用した健康モデル(予防)の確立・普及に向けて、地方自治体が主体となった実証実験です。超高齢社会の医療費や労働人口の減少等の問題解決のために、高齢者の健康を維持して病気を予防するための取り組みです。
    実際には、運動前後の体力測定データや、普段からお持ちの活動量計のデータ、健康データ等、ネットワークを通じて共有して分析するそうです。
    現在このプロジェクトで受け入れている方は、65歳以上の21名です。アクティブシニアがプロジェクトの対象ですので、基本的には皆さん元気で活動的な方が多いです。お話を聞くと、別のスポーツクラブに通っていらっしゃったり、毎日歩いていらっしゃったり、自分で健康維持の方法を見つけて、取り組まれている方が多いです。
    特に皆さんプロジェクトの趣旨を理解していらっしゃいますので、お休みされることなく来られます。出席率はほぼ100%ですね。

     

    Q.最後に、寺本さんにとっての“シニア”とは何かお聞かせください。

    私にとっては目標ですね。自分がその年代になったときに、こうなっていたいなと思います。
    本当に皆さんお元気で、逆に我々スタッフが元気をもらっているくらいです。
    介護予防事業でも、アクティブシニアに近い方たちを対象とした体操教室をやっているのですが、そのパワーに圧倒されます。教室の場合は回数が予め決まっていますので、調子が悪くて、運動する元気がなくても、見ているだけでもいいので来てください、というお話をします。一度休んでしまうと休み癖がついてしまいますからね。そうすると皆さんいらっしゃるんですが、見ているうちに、何となくやりたくなって、できることだけやってみると、スッキリして元気になって帰られることがよくあります。若い方よりも元気ですよね・・・
    これからもフィットネスを通じて、シニアの皆さんが元気になるお手伝いをして、元気を共有していきたいですね。

     

    からだづくり三鷹フィットネスクラブWEBサイト
    http://karadadukuri.jp/

     


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    「進化する努力」と「変わらない勇気」、
    シニアマーケティングには両方が必要

    株式会社バスクリン
    販売管理部 販売促進課 マネージャー広報責任者 石川泰弘 氏
    製品開発部 ヘルスケア企画課 リーダー 梨本里美 氏

     

    「健康は、進化する。」というコーポレート・スローガンのもと、社名である入浴剤「バスクリン」と近年では「きき湯」を主力商品として事業展開する株式会社バスクリン。同社は、「入浴を健康として捉える意識を有した人々」をシニア・マーケティングのターゲット捉え、日々のマーケティング活動を推進しています。今回のインタビューでは、入浴剤市場の概要から、入浴への啓蒙活動、商品パッケージの工夫、そして今後の取り組みに至るまで、幅広くお話をお伺いしました。

    2014年10月 取材

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    Q.まずは、入浴剤市場の概況からをお聞かせください

    image 石川氏) 現在、入浴剤の市場シェアは、花王さんと弊社で54~55%を占めております。 入浴剤の市場は比較的安定しているといえます。 2013年度は、前年比103%で推移しており、その市場規模は520億弱であり、年推移で500億円前後を上下している状況です(※バスクリン調べ)。 ここ数年は、炭酸ガスの入浴剤市場が伸長傾向にあり、弊社においては平成15年に発売した「きき湯」がご好評をいただいていると共に、同じく弊社の主力商品である「バスクリン」と肩を並べるロングセラー商品になってまいりました。  

     

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    発売から11年、バスクリン社の主力商品に成長した「きき湯」シリーズ

     
    Q.「きき湯」がマーケットでうけた、何かきっかけのようなものはありましたか?

    石川氏) あります。 私どもがきっかけの一つとして考えているのが、2009年に放映されたビートたけしさんの「みんなの家庭の医学」というテレビ番組です。 その日は「炭酸ガスの温泉は動脈硬化にいい」という内容だったのですが、それをきっかけに炭酸ガスの入浴剤ブームに火がつき、弊社商品の「きき湯」もそのブームに乗ることができました。 それ以前から売り上げは伸びていたのですが、番組をきっかけに、40~50代の方、それより上の世代の方に売れ始めたと共に、そこへ同時期に盛り上がっていた美容ブームが後押しをして一気に市場へ浸透いたしました。 そんな経緯の後、いまではブームの段階を脱して、市場にしっかり定着してくれた感触をもっております。  

     

    Q.シニアの方が効果・効能別に合わせて入浴剤を使い分けているというデータ等による裏付けはあるのでしょうか?

    image 梨本氏) データの上からは、マーケット全体で入浴剤を使用されている年代は40~50代がボリュームゾーンとなっております。 一方で、バスクリンは50~60代のお客様に支持をいただいているという調査結果が出ております。 これは、バスクリンが長い歴史を有している商品であるゆえ、子供の頃に入って良かったというブランドの原体験が理由だと考えております。 バスクリンを入浴剤利用の入り口にして、その実感がループした後、当社の「きき湯」やあるいは他社商品へと選択肢が広がっていくように思います。

    石川氏) 若い方は美容やリラックスへの意識が高いですが、シニアの方は健康への意識が高く、これが入浴剤利用の理由となっているようです。 とりわけ50代以上の人達は「健康寿命を延ばす」という意識が高いこともわかっております。 具体的には、50代以上の人はお風呂でストレッチする人達が増えているなど、バスルームを活用していかに健康でスマートな身体作りをするかということに意識が向いています。  

     

    Q. シニアに特化した、入浴についての啓蒙活動などのお取り組みはありますか?

    石川氏) 例えば、老人ホーム等で行われる銀行様が主催なさるセミナーに講師としてご招待いただくことなどが多いため、そこで入浴剤の使い方や効能、また温泉についてなどの講演をさせていただくなど、シニアの方の前で入浴のお話をさせていただく場面は数多くございます。 当然のごとくシニアの方は、「健康」をテーマにしたお話にとても興味をもっていらっしゃるので、聴講いただいたシニアの皆様からもご好評をいただいています。 ひいては主催者様からも喜んでいただいております。 事実、主催者様からは、その後の「相続」に関するお話にも円滑に発展できるとお聞きしておりますので、私どもの公演が主催者様のビジネスにも多少は寄与しているのではないでしょうか(笑)。  

     

    Q. シニアの方から支持される商品を開発するための工夫などがあれば教えてください。

    梨本氏) 特に「シニアターゲットに向けて特別に商品を作る」というようなことはいたしません。 それより、「商品を選択していいただく楽しさ」や「新しい商品との出会いから得られる新鮮さ」を表現することが重要だと考えております。

    例えば、メインターゲットが40~50代である「バスクリン・クール」という商品について言えば、数ある商品ラインナップから、お客様の気分やニーズに合わせて商品を選んでいただく楽しさが提供できるような商品であるよう様々な工夫をしてますね。  

    バスクリンクールのラインナップ

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    石川氏) あえて年齢を意識してモノ作りをしないことには理由があります。

    例えば「今の50代は昔の50代より若い」ということです。若い感性や先駆的な感覚をもつた今の50代は、商品選択をすることにおいてもいつもと同じものを選ぶのではなく、違うものにチャレンジしようとする積極的な行動が見受けられます。
    従って、シニア向けに「シニアの皆様に特化した商品です」という提案するのではなく、年代に関わらず、広く市場ニーズに対応した商品をリリースするようにしています。 そのことこそが、結果としてシニアの皆様から支持をいただく手法なのだと考えております。  

     

    Q. 商品パッケージにおいてどんな工夫を施していらっしゃいますか?

    image (2) 梨本氏) 石川が前述した通り、いかにも「シニアの皆様を意識しました」風なデザインは好まれません。もちろん、商品購買層としては50~60代がボリュームゾーンとなりますので、手に取った際の使いやすさなど、商品開発上のシニアの皆様への配慮は必要です。
    しかし、ここにばかり意識を置きすぎると地味でつまらない商品になってしまいます。これはシニアの方をターゲットにする場合に限った話ではありません。

    入浴剤の商品特徴を確実に伝えるためには、何より「パッケージ上における情報の視認性」が最重要課題だと考えております。

    バスクリン・クールでいえば、「ミント」と「シークワサ」という商品はその独特の「サッパリ感」を伝えたい商品です。しかし「ミント」で言えば「水辺の若葉の香り」を伝えたくても、当たり前のことですがパッケージからだけでは具体的な匂いを伝達することはできません。
    したがって、「ミント」を想起していただく情景を伝えるに留まるのですが、結果として伝えたいことが伝わるその強弱が商品によって異なります。この伝達力・表現力こそがパッケージ開発のポイントとなり、日々様々な工夫や苦労を積み重ねております。
    その一方で、シニアの方からは、「バスクリンはわかりやすいよね」という言葉をよくいただきます。
    こういうお言葉をお聞きするのが私たちの苦労が報われる瞬間であり、とても嬉しく思うのですが、その「わかりやすさ」の最大の要因は「色」だと思います。「色」がお客様に与える情報はとても大きいのです。
    したがって、バスクリンの商品はこれまで中身の変遷や進化は繰り返しておりますが、パッケージにおける「色」の使い方はほとんど変わっていません。
     

    株式会社バスクリンの歩み  

    Q.  「新しい取り組みを推進する」ことと、「ブランドを守っていく」という行為は、一見、相反する使命のように思いますが、その点で苦労はありますか?

    1418496884 石川氏)正直なところ、ブランドイメージや商品体系などを変えたくても、なかなか変えられないというのが現状です。
    特に香りの話でいえば、梨本が申し上げたように、言葉やビジュアルで伝えるのが難しい要素です。当社の商品は歴史が長いので、お客様は長年愛用された商品名と香りが頭の中でしっかり紐づけされています。しかし、それをある日突然変えてしまうと、お客様が戸惑ってしまい、ひいては「違うでしょ」というご指摘をいただくことになってしまいます。
    例えば、バスクリンには「ジャスミン」という商品があります。人気商品で長年多くのお客様から支持をいただいているのですが、これはあくまで「バスクリンのジャスミン」といえます。これをあえて本物のジャスミンの香りに近づけてしまうと、多くの苦情が来てしまいます。
    このように、変えたい商品があっても、長年積み重ねてきた「バスクリンらしさ」というものが確立しているため、無暗に商品の仕様を変えられない、という事例もいくつかあります。
    実は、バスクリンのイメージ調査をしてみたときに最も評価していていただいているポイントが「安心・安全」であることもわかっています。
    つまり、長い期間お使いいただいている安心感や、それでいて何の問題も起こしていない安全性というのを当社ブランドに対し感じ続けていただいているわけです。
    そう考えると、「変わらずにいる」ことこそが私たちに課せられた大事な使命なのかもしれません。

     
     
    Q. シニアの方にとって大変興味がある、「入浴と寿命についての関係」についてお聞かせ願えますか
    お風呂掃除にはシニアの健康寿命を延ばす効果が

    お風呂掃除にはシニアの健康寿命を延ばす効果が

    石川氏) はい、まずシニアの方は健康への思いは人一倍強いので、このテーマはセミナーでもとても興味をもっていただけます。
    このテーマで講演すると若い人達は普通に聴講されていますが、シニアの方は積極的にメモをとられたり、「こういうときはどうしたらいいのか」とご質問をくださったりします。
    私がセミナーでお話することの中から一つあげさせていただくとすると、入浴行為そのものも大事ですが、「お風呂掃除」を積極的にすることがシニアの健康寿命を延ばすということです。
    お風呂掃除は膝を曲げたり手を伸ばしたり、実はシニアの皆様にとって健康を維持し体力を養う、とてもいい運動要素になります。
    昨今では、ノーリツさんの自動洗浄浴槽という商品をシニア向けに開発しましたが、実際の購入者は30代の方々が多いと聞いております。すなわち、忙しくてお風呂洗う時間がとれない方々です。
    一方で、シニアの皆さんは時間的な猶予はあるので、ウォーキングやエクササイズと同様に「お風呂掃除」も健康維持の一環として取り組んでいただければと思います。

     

    Q. シニアの方の入浴剤の選び方にはどのような特徴がありますか?

    梨本氏) そもそも入浴剤は、「どの香りにするか」、「どの効能を選ぶか」などを、家族みんなの総意によって選ぶ傾向がある商品です。しかしシニアの皆様の多くは、お子さんも独立しセカンドライフを満喫されていらっしゃいます。そうすると入浴剤についても「本当はこれを使いたかった」という自分主体のモノ選びをするシーンが中心になります。
    そうすると、これまでバスクリンを使っていた方々が、改めて他の商品にも注目が至り、例えば当社の「きき湯」に流れていくなど様々な選択肢へ広がりが発生することが考えられます。
    その際の商品選定のポイントとしては、やはり健康維持です。病院にかからず健康な生活を送るための、予防医学的な意識が商品選定に大きく影響してくると思います。

     

    Q. 改めて、シニアマーケットをどう定義づけられていらっしゃいますか?

    梨本氏) 実は、シニアマーケットについて、社内で明確な決まりがあるわけではありません。年齢軸でいうなら50~60代以上と考えることができますが、ただ年齢軸で区切るのは乱暴な話だと考えてます。
    あえて言うならば、入浴剤という市場においてシニアマーケットを定義するための最初の指標は、やはり家族構成なのではないかと考えております。
    よりシャープな分け方をするならば、お子さんが巣立ったご家庭であるのかどうか、その年齢はどれ位なのか、という区切り方です。
    その次に来るのは、入浴という行為の意義です。お風呂に入るという行為を、単純に体の汚れが落とすための行為とみなしているか、あるいは前述した美容や健康などのニーズを叶えるための時間として捉えているかという区分です。
    とかくシニア層においては、入浴を単なる洗浄行為とみなしてなく、付加価値のある行動と考えています。
    更にもうひとつの指標が、入浴に対するニーズやモチベーションです。具体的には、「健康」を重要視して生活しているのか、もしくはこれは若い層や女性などが中心になってくると思いますが、「美容」という要因に寄っているのかで、マーケティング的なアプローチが異なってきます。

    これら3つの要素を掛け合わせ、つまり、「家族構成を前提とした年齢軸」×「入浴の意義」×「入浴に対するニーズ」という3つの軸の掛け合わせで、マーケットを区分することができ、その中の1象限がシニアマーケットと捉えられるのではないかと考えております。

     
    Q. 海外展開へ向けたお取り組みは何かされていらっしゃるのでしょうか?

     

    近年は日本の温泉を旅行目的のひとつにしている外国人旅行者が増えている-写真は岐阜県高山市-奥飛騨温泉郷の-新穂高の湯

    近年は日本の温泉を旅行目的のひとつにしている外国人旅行者が増えている-写真は岐阜県高山市-奥飛騨温泉郷の-新穂高の湯

    石川氏)  海外には日本のような入浴文化はないので、日本と同じような展開では商品は波及いたしません。
    一方で、日本に来た外国人は、必ずと言っていいほど温泉に入りその良さを体感していきます。
    ですので、まずはひとりでも多くの外国人に入浴の体験をしていただくような施策を考えることが最初のステップだと思います。これができれば、あとは各国が自主的にインフラ整備をやっていただけると思いますし、入浴文化は拡がると思います。
    そのためのきっかけとして2020年の東京オリンピックはとても重要なタイミングだと考えています。
    もし仮に、「日本人選手が活躍するその裏にはお風呂の存在があった」いうことを伝えられれば、各国への入浴文化の波及、そして弊社商品の海外展開にも大きく寄与すると思うのです。

     

     
    Q. 最後に、今後のお取り組みについてお聞かせください

    梨本氏) モノ作りの観点からいうと、今のブランド資産を活かしながら、更に入浴剤というものの用途も拡大しつつ、同時に使いやすさも追求していくべきだと考えています。買いやすく、持ち運びしやすく、また使うときの出し入れしやすさ、そして捨てやすさに至るまで一気通貫で気配りのある商品を展開していきたいです。
    もちろん、これまでにも長年に渡って取り組んできたテーマですが、まだまだ課題はたくさんありますし、終わりのない仕事だと考えております。

     

     

    株式会社バスクリン ホームページ
    https://www.bathclin.co.jp/

     


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    フランスベッドが提供する”人にやさしい
    モノづくり”ブランド「リハテック」

    フランスベッド株式会社 インテリア営業企画部 佐藤則行 氏
    フランスベッドホールディングス株式会社 広報部 梅本綾乃 氏

    フランスベッド株式会社様は、言わずと知れた日本を代表するインテリアメーカーですが、電動アシスト機能付三輪車や介護用ベッドなど、介護・福祉用品メーカーとしても30有余年の歴史を有し、業界を牽引する存在です。インテリアメーカーとしての技術・ノウハウを介護・福祉用品の開発にも生かした「リハテック」シリーズの商品はシニア層から強い支持を得ており、直営の「リハテックショップ」も運営されています。今回のインタビューでは、アクティブシニアをターゲットとした「リハテック」ブランドのモノづくりを通じて、そこにあるマーケティング手法や商品開発に至るまでのプロセスなど、様々なお話をお伺いしました。

    2014年12月 取材

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    Q.早速ですが、御社の「リハテック」ブランドの沿革からお聞かせいただけますか。

    image (1)佐藤氏) フランスベッドという会社は、皆様にはインテリア事業において馴染みかと思いますが、実は介護・福祉用具の販売・レンタルを30年前から行っていたという経緯があります。
    ご承知の通り日本では高齢化が進行しています。そこで、私どもが30年間培ってきた福祉分野のノウハウ、そして特にお客様と直接触れ合ってきた実績値を何かに活かそうと考えた結果、介護が必要になる少し手前の比較的アクティブなシニア層へ商品を提供しようということになりました。そこで作られたブランドが「リハテック」なんです。

     
     
     
    Q.「リハテック」ブランド立ち上げ時の背景について更に詳しくお聞かせください。

    image (2)

    梅本氏) 私どもは創業65周年の会社ですが、その65年というのは、主にご家庭で使っていただくようなベッドなどインテリア用品を造ってきた歴史といえます。
    しかしながら実はその間に、2社程の別会社も擁立しており、その一つが先ほど佐藤が申し上げた介護・福祉用具の販売・レンタルを提供してきた「フランスベッドメディカルサービス」という会社なのです。メディカルサービスは1987年の設立以来、在宅介護ベッドや福祉用具の販売・レンタルを手掛けてきた会社です。
    その後、2009年にフランスベッドと合併し、両社の血が混ざりあうことによって、幅広い商品開発につながっています。
    合併するまでの両社は兄弟会社ではあったものの、インテリアと介護福祉という畑違いな業界にいましたので、なかなか融合する機会がありませんでした。合併により両社の強みを共有しシナジーを生むべく創立したのが「リハテック」ブランドになります。

     
    Q.最初の商品がリリースされたのはいつ頃だったのですか?

    梅本氏) 実際の商品がリリースされたのは今から3年前のことになります。
    我々は元来ベッドを作るメーカーですので、“寝る”ことについては多数のノウハウがあります。リハテックでも“寝る”ことに関する商品からスタートしそうなものなのですが、実は「リハテック」ブランドの最初の商品はベッドとは全く違うものからスタートしました。それは、自社開発の「電動アシスト三輪自転車」なんです。

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    この商品をリリースした背景としては、当時、「買い物難民」という言葉が世間の話題になりつつあったことが挙げられます。「買い物難民」は、つまり高齢化により足腰や身体が不自由になった高齢者が、なかなか買い物に出かけることができず、生活に支障が出てしまう問題です。例えば東京だけ見ているとこの問題は看過されがちですが、地方に行けば今も大変切実な問題です。
    まずシニアの方は車の運転ができない。そして地方では鉄道は充実してない場所も多いですし、生活の足であるはずのバスも本数が少なく待ち時間が長い。もちろん、重い荷物を持って長い道のりを歩けないですし、もし家族がいたとしても、その家族の都合など顔色を伺いながらの買い物というのもなかなか苦痛なことです。
    そういう負の事情を一つでも軽減しようという想いから開発したのが「電動アシスト三輪自転車」なんです。

    佐藤氏) ある調査によると、68歳前後が「自転車寿命」と言われています。これは、ご自身の判断や、家族に止められるなどの理由で“自転車に乗ることを諦めるようになる”年齢のことです。
    ご本人は、本当は乗りたいんだと思います。でも周りから危ないと言われたり、自分でも運動能力の衰えを感じたりと、自信がなくなってくるんです。結果として家の中に閉じこもる時間が長くなってしまうのですが、そうすると更に足腰が弱くなり、買い物も行きにくくなる。まさに負の循環に陥ってしまいます。
    高齢者の日常生活や、外出をサポートする。「リハテック」ブランドはそんな想いから立ち上げたブランドです。

     

    Q.商品の開発をするにあたって秘話などがあればお聞かせください。

    梅本氏) 商品開発にあたっては、何より「世の中の人が求めているモノを考え、それをカタチにする」というプロセスを基本として進んでいきます。
    例えば前述した「電動アシスト三輪自転車」も、弊社の社員が実際に地方を回り、その実情を見て「大変な現実があるな」という想いから発案があり、そして開発に至りました。
    ただ、本格的な福祉用具というわけではなくて、あくまでアクティブなシニア、つまり「まだまだ動きたいという思いがある層」に向けて開発した商品なので、全体的にコンパクトなデザインを心がけ、アクディブシニアにとって扱いやすい形状を心がけています。
    また、乗り降りの際にまたぎやすいようにフレームの高さも低くし、小さな回転で漕げるようペダルを配置しています。イメージとしては、だいたい140センチくらいの小柄な方でも乗りやすいような設計と言ってもいいかもしれません。車体自体も28Kgと軽いうえ、電動アシストがついているのでこぎやすく動きやすいですよ。

    佐藤氏) 更にこの商品の特長を補足すると、カーブを曲がるときに必要な調整バーに工夫があることです。
    自転車ですので左右に曲がる際には必ず車体が傾きますし、傾かないと曲がれないのですが、三輪の場合この傾きが自然に発生するように車体の軸に傾き調整バーを装着する必要があります。
    実は当社の三輪自転車の傾き調整バーは、ベッドに使っているものと同じ部品で造られているんです。
    といいますのも、元々弊社ではスクーターのサドルを造っていた時代があるんです。
    そしてそのサドル部分にはスプリングが入っていまして、そのスプリング製造技術を転用して始まったのがベッドの生産なんです。
    今はもうスクーターのサドルは製造していませんが、順番から言うとベッド生産の方が後から始まったことになります。
    そういう意味では当社は、今も昔も、「持っている技術を転用して、他のフィールドで活かすことが得意な会社」と言えるかもしれませんね。

     
    Q.ターゲットにしている人たちは?

    梅本氏) やはり、アクティブなシニアということになりますね。
    理由はシンプルです。我が国の人口比率のボリュームゾーンがシニア層、そして特にアクティブシニア世代にあるからということになります。世代でいえば、60代後半~80歳の方々を想定しています。
    ちなみに、「リハテック」の利用者は介護保険の対象ではない方が中心です。最近の傾向として感じるのは、高齢者であっても介護保険を利用せずに介護用用具を購入する人が多いということです。ですので、皆さん気持ちはまだまだお若いですし、最近は70代の人でもとてもお元気です。考えてみれば、つい最近まで第一線でバリバリにお仕事をこなしていらっしゃった方も多いわけですから、当然といえば当然ですよね。
    そういう皆さんをターゲットにしているので、デザインにはとても気を使っています。いわゆる「年寄り臭い」デザインには絶対にしません。
    弊社の強みは機能性もデザイン性も兼ね備えた商品をプロデュースできることと自負しています。長年インテリアの世界で研鑽を重ねてまいりましたので、この点についてはノウハウがあります。

    佐藤氏) 介護保険のお話で言うと、シニア層の厚みがどんどん増している状況ですので、将来的に介護保険を継続することができないのではないか、国の財政では賄えないのではないかという懸念があります。
    事実、今既にそれに対応する動きは始まっており、重度化しないと介護保険そのものが使えない制度に変わりつつあります。
    例えば、2015年4月からは要支援1、2の人はデイサービスやヘルパーが、段階的に介護保険ではなく、地域の財源で実施する方向に変わっていく見通しです。
    今まで介護保険が利用できていたのに、利用できなくなってしまうのは悲しいことですが、リハテックのような商品があることによって、そういった方々の日常生活に、役立ったような事例がひとつでも増えてくれたら嬉しいですし、実際そう言っていただけるような商品を幅広くプロデュースしているつもりです。

     

    Q.デザイン性のお話が出ましたが、特にデザイン性を意識した商品事例などはありますか?
    三輪自転車の軽快さと-電動車いすの機能をひとつにした新しい電動車いす

    三輪自転車の軽快さと-電動車いすの機能をひとつにした新しい電動車いす

    佐藤氏) 例えばシルバーカーですね。細かいことになるのですが、実は他メーカーでフレームまで着色しているものは少ないです。メッキむき出しのものが多いですが、弊社商品はフレーム部分まで赤や青などで塗装を施し、細かい点までこだわってモノづくりをしています。

    梅本氏) 機能性の面では、シルバーむき出しの方が清潔だと考えることができるかもしれませんし、もしかすると手入れもしやすいかもしれません。
    しかし、最近のシニアの方々は、本当にお若いのです。現実に「本当はタータンチェックのデザインのモノが欲しいんだ」という声も挙がっております。
    まだ開発には至っていないのですが、検討の余地はありそうですね。需要があるのですから(笑)。

    佐藤氏) 今のデザインもご好評をいただいているのですが、これ、実は元々フランスベッドの掛け布団カバーなどのデザインを利用して作っているんですよ。ファッション性を大切にしている背景には、フランスベッドでの商品開発の実績があるんです。

    梅本氏) あと、シニアの皆さんにとってのデザイン性という意味で非常に重要なことは、「選べる」ということです。「シニアにはこれが受けるだろう」という一点を作るのではなく、多様な指向に対応できるよう選択肢をたくさん用意して差し上げることが、シニアの皆さんの満足に繋がるという傾向を感じています。
    これまでの介護用具やシルバー向け商品と言えば「皆さん方の世代にはこれですよね」というような商品展開が多かったと思いますし、そういう商品を迷いなく買ってくださる方が多かったのが事実です。
    しかし昨今はたくさんの中から選択する、つまり「買い物そのものから楽しむ」方が増えています。ですからメーカーも「選べる楽しさ」を提供する必要があります。


     

     

     
    Q.マーケット分析はどのような手法で行っていらっしゃいますでしょうか?

    梅本氏) 商品開発に活かす調査と言う点でいえば、まさに現場の声がソースになっているといえます。当社は福祉用具のレンタルを直接行っておりますので、スタッフが在宅のお客様のお宅にお伺いをすることもありますし、またケアマネージャーとも繋がっています。ですので、お客様の生の声を聞くことができるのが強みです。

    リハテック大阪店

    リハテック大阪店

    佐藤氏) また、「リハテック」の推進担当を全国に設けて、各支社で情報の吸い上げをしております。
    彼らがお客様と触れ合う現場で上がってきた声を集め、これも商品開発や改良に役立てています。
    実際に先ほどお話をした「電動アシスト三輪自転車」もそういった声を聞いて初期モデルから改良を重ねてきています。
    あとは販路拡大という点でいうと、最近は広告活動よりもいわゆる試乗会などのタッチアンドトライの場の創出にチカラを入れています。各地域の様々なコミュニティと協力関係を構築し、そこで試乗会を開催しています。やはりシニアの皆さんにとっては、実際の商品に触れて、乗って、感じていただくのが一番の商品機能訴求になるようです。

    梅本氏) イメージで購入されても実際には使えなかったとか、あまりニーズにフィットしていなかったという事例もありますので、そういうミスマッチを防ぐ意味でも、タッチアンドトライの場を通じて商品を体験・体感していただいて、納得してからご購入いただける流れがベストだと思います。ご自身の親御さんをイメージしてみてください。その時に「こんなサービスがあったらいいな」、「こんな風に商品を買ってくれたら安心だな」というイメージがあると思います。それをひとつずつ具現化しようとしています。

     

    Q.そんな現場の声から生まれた商品で、今のイチオシはありますか?
    寝台を床面まで下げることが可能な「超低床フロアーベッド」。

    寝台を床面まで下げることが可能な「超低床フロアーベッド」。

    梅本氏) お尋ねくださってありがとうございます(笑)。イチオシは「超低床フロアーベッド」ですね。
    これは寝台が電動で上下するベッドなのですが、なんと、寝台を床面まで下げることが可能になったのです。一見単純な機能に思われるかもしれないのですが、薄い筐体と細い脚の中にすべてのムーブメントを収納しつつ、水平をとりながら寝台を動かすことは技術的に大変なことなのです。実際、この商品を開発するために2年の歳月を必要としました。
    手前味噌を承知で申し上げますが、弊社開発部、かなり頑張りました!(笑)これこそまさに現場の声を聞いて開発した商品になります。
    高齢者の方は畳の上に布団を敷いて寝ていることが多いので、ベッドに慣れていない方も多くいらっしゃいます。床面まで下げて寝ていただければ、お布団で寝ているような感覚が得られますし、手すりの必要もありません。万が一、ベッドからの落ちたとしても高さが低いのでケガのリスクを抑えられます。
    実は介護ベッドの脇にお布団を敷いてご家族が寝ているケースがありますが、目線の高さが違い、立ち上がらないとベッドの上の様子がわかりません。このフロアーベッドならお布団を並べて敷く感覚でご使用いただけ、双方にとって安心です。

    介護する側にとっても優しい設計とデザインが施されている

    介護する側にとっても優しい設計とデザインが施されている

    また、ご利用者様がベッドから離れるときは、ベッドの高さを上げて立ち上がりやすくすることも、車いすの高さに合わすこともできます。
    介護する側にとっても多くのメリットがあります。例えば寝台を上げることで、腰に負担なくお世話できます。寝るときには寝台を下げることで、介護ベッドでよくある挟み込みの事故も避けられます。
    さらに、ボードも取り外しが可能なので、頭側からも、足側からもアプローチが可能です。こういった工夫は全て介護の現場からの生の声を元にして、商品開発へと反映しました。

     

     

     

    Q.最後に、御社がシニアをターゲットにして展開をする中で、参考にしている企業などはありますか?

    佐藤氏) メーカーさんではないのですが、サービスという点ではイオンさんの取り組みは興味を惹かれますね。単なるモノ売りだけでなく、積極的にコミュニティを展開していて、シニア層の取り込みに注力されていらっしゃいます。なかなかすぐに結果に結び付けるのは難しいですが、チャレンジ精神をもって、取り組んでおられるので参考にしたいですね。当社がこれから商品を開発していく際に、こうした小売業の方向性は、参考にさせていただけそうな要素を感じますね。

     


    フランスベッド「リハテック」WEBサイト
    http://www.francebed.co.jp/brand_site/Rehatech/




    <<<第9回 富士通株式会社                      第11回 株式会社バスクリン>>>


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    自社テクノロジーの集大成
    それが「らくらくホン」

    富士通株式会社
    ユビキタスビジネス戦略本部 プロモーション統括部 統括部長 土井敬介 氏
    モバイルプロダクト統括部 第一プロダクト部 シニアマネージャー 古木健悦 氏

    富士通株式会社様は、テクノロジーをベースとしたグローバルICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)企業です。人々がICTの力を活用して、ビジネス・社会のイノベーションを起こし、豊かな社会を築いていく「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティ」の実現を目指しており、「らくらくホン」を開発するモバイル事業は、人とのインターフェイスの一部を担っています。今回のインタビューでは、携帯電話市場を取り巻く現状や「らくらくホン」の開発に取り組まれた経緯、開発プロセスや海外事業の展開までをお聞きしました。

    2014年10月 取材

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    Q. まずシニア向けの携帯電話にお取り組みを始められた経緯からお教えください。

    古木氏 らくらくホンは元々他メーカーが初号機を作られたのですが、弊社は2001年2号機(F671i)からお声掛けをいただきました。 当時、携帯電話は、シニア層にはまだまだ行き届いていない状況でしたので、シニアの方々に便利に積極的にご利用いただけるような携帯電話を開発しようという取り組みを開始しました。 一方、一般の方々には携帯電話はかなり普及していた段階でしたので、携帯電話以外の市場を見て、シニア向けの携帯電話市場も今後同様に伸びるだろうという予測を持っていました。 ちょうどシニア向けのプロダクト・サービスが徐々に増えてきている状況だったと記憶しています。

     

    らくらくホン実機-右が初号機で時代順に並ぶ-左が最新機種-らくらくスマートフォン

    らくらくホン実機-右が初号機で時代順に並ぶ-左が最新機種-らくらくスマートフォン

     

    Q. 富士通さんとしての初号機の売れ行きは如何でしたか?

    土井氏) 当初は、スロースタートだったと記憶しています。 冒頭古木が申したように、シニアの方が携帯電話を利用する時代が到来するだろうという見込みはありましたので、手ごたえのようなものは感じていましたが、最初から販売が好調だったというわけではありません。  

     

    Q.当時シニアの方が集まるマーケット展望の裏付けとして、リサーチ等はされましたか?

    古木氏) ご存知のとおり、シニア市場は分析や攻略が困難な市場です。たとえばリサーチするにしても、これまで利用したことのないものを取り上げて、「これを利用したいですか?」という問いを投げかけても、参考になる情報は得られません。その点を踏まえ、弊社はある程度の「仮説」をもってプロジェクトを開始しました。
    実際にシニアの方が集まる現場に赴き、携帯電話の活用にどのような課題があるのか、またどのような利用方法が考えられるかという意見を掬い上げて、その上で商品開発に転嫁させる方法を採用しました。そして、この方法は、今でも変わらず継続しています。
    また、「らくらくホン」リリース当初から、全国の携帯電話ショップで「携帯電話教室」が開講されているのですが、参加者の方の高齢者比率は比較的高く、教材は必然的にらくらくホンになります。
    全国にいる拠点社員が、キャリア様のご支援という形で教室に赴き講師としてサポートします。それを実施することで、”利用者の声”がわかります。
    どの携帯電話を購入しようか迷われている方や、上手く使いこなせない方等、つまずく箇所やご要望の声が上がってきます。
    それらを集約することにより、実際にご利用されているお客様の声に耳を傾けることができ、こうした仕組みを製品開発に活かしています。

     

    Q. 開発において特に重心を置いていらっしゃるのはどのような点でしょうか?

    ユビキタスビジネス戦略本部-プロモーション統括部-統括部長-土井敬介氏

    土井氏) らくらくホンのアプローチは、携帯電話の基本動作、いわゆる”見る”、”聞く”、”話す”、”操作する”を徹底的に磨き上げることの積み重ねです。
    ですので、”聞きやすさ”や”見やすさ”という基本性能は、どこにも負けないと自負する技術を注入しています。
    シニアにとっても利便性の高い機能は使いやすさに配慮し徐々に追加しておりますが、反面、遊びの機能や派手な部分には敢えて手を出しません。
    すべては、シニアの方や機械に強くないお客様にも使いやすいと感じてもらうための戦略です。
    この点については、富士通研究所と共同で技術開発を行っており、結果として当社からリリースする携帯電話の中で、最もテクノロジーが注入されている商品が「らくらくホン」だと言えるかもしれません。
    「らくらくホン」は、あくまでユニバーサルデザインの観点から開発しています。結果として、シニアの方もご利用しやすいですし、それ以外の方にも利用しやすい仕様を目指しています。
    シニア層のみならず、目がご不自由な方にも幅広くご利用いただいているのも大きな特徴です。

     

    Q. ハードウェア開発においてご苦労された点はありますか?

     

    1413412609古木氏) とにかく多くのテクノロジーが集結している「らくらくホン」ですので、言い出せばキリがないですが…(笑)
    まず挙げられるのは、「音声読み上げ」機能ですね。これは、メールやHP上のコンテンツを音声で読み上げる機能ですが、弊社の初号機から盛り込んでいる機能です。商品開発のたびにモニターとして目がご不自由な方にご参加していただき、たくさんのご意見をお聞きして、さらに改善を積み上げてきた経緯があります。
    また、ディスプレイは特注のモノを採用しています。他社の携帯電話の液晶のほとんどは、縦長で進化してきました。しかし、「らくらくホン」の場合は、文字の一覧性と大きさを実現するために、横幅をきちんと保てるようなディスプレイを採用し続けています。
    さらに言えば、キー部分にも拘りがあります。新機種のほとんどはシートキーを採用しているため、”押した!”という実感が残りません。「押し感」を保つよう心掛けています。
    また昨今売れ行きが伸長している「らくらくスマートホン」は、”触れて確認、押して動く”という「らくらくタッチ」機能というのを付けました。通常のスマートホンは指で触った感覚が残らないのでボタンを操作したことがわかりませんが、この「らくらくタッチ」は、触れた時に読み上げ、そのまま押し込めば起動する直観的な読み上げ機能を実現しています。

     

    土井氏)「らくらくホン」から「らくらくホン」に買い替えるお客様、すなわちリピートが非常に多いのも特徴です。
    使い慣れた操作感を求めて「らくらくホン」をお選びいただいている以上、”変わらない安心感”をご提供し続けることもメーカーとしての責務と考えています。

     

    Q. らくらくホンユーザー向けのコンテンツサービスについても教えて下さい。

    土井氏) 「らくらくコミュニティ」というSNSサービスがあります。らくらくコミュニティの利用者は、累計15万人を突破しました。一回ご利用になられた方の多くがリピート利用してくださり、アクティブユーザー率が高いのが特徴です。  

    らくらくコミュニティ(PC版)トップページ

     

    ファミリーページ古木氏) もう1つ、新サービスを紹介させてください。らくらくコミュニティを更に進化させ、「ファミリーページ」という新機能を追加しました。
    今回のサービスは、家族間のコミュニケーションを重視しています。子供の写真を投稿すると、フォトパネルのように自動的に待ち受け画面に写真を貼り付けられる機能です。ただ単に貼り付けただけではつまらないので、そこに一言メッセージを掲載できます。自ら発信せずとも、見るだけでも十分お楽しみになれます。
    これをきっかけにしてコミュニティ・サービスをご利用していただけると、さらにお楽しみいただけて、世界がもっと広がります。
    親御さん、お爺ちゃんお婆ちゃんばかりでなく、お子さんまでご参加いただいて”デジタルな親孝行”のためのツールとしてご利用いただければ嬉しいですね。

     
    Q. 最後に、らくらくホンの技術やお取り組み方法が、海外から注目されていると聞きましたが、その点についてお聞かせいただけますでしょうか。

    土井氏) 2013年から、Orangeという世界的なオペレーターと組んで、フランスでらくらくホン事業を展開しています。フランスは日本に次いで高齢化が進んでいます。当然オペレーターとしても、マーケットの高齢化にどう対応すべきかという課題を持っています。
    弊社は、日本において、らくらくホンで一定の成功を収めておりますので、注目をいただいています。

     


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    顧客と共に成長する
    シニアマーケティング戦略

    株式会社文化放送 放送事業局 放送事業部長 吉住由木夫 氏

    開局以来、幅広い層に向けたラジオ放送事業を展開し、2012年には60周年を迎えた文化放送。働き盛りの40代男性の支持も高く同世代での聴取率において長年トップを走る同局。2006年には社屋を浜松町に移転し、昨今はアニメ関連番組などヤング層へのアプローチに力を入れる他、孫世代・親世代・おじいちゃん世代の3世代を結ぶ「親子3世代プロジェクト」の展開など、先駆的な社風と行動力を有した放送局として注目されています。今回は、シニアライフ総研として初めてのメディア取材。文化放送のシニアマーケティングへのアプローチについてお話をお伺いしました。

    2014年6月 取材

    文化放送

     


    Q:まず、ラジオ業界における現在の御社のポジショニングと今後の目標についてお聞かせください。

    ラジオの聴取率でみると、TBSさんを筆頭に、弊社やニッポン放送さんがトップグループを構成するカタチになっています。
    ただラジオ聴取率というのはその算出においてテレビとちょっと違いがあります。それは世帯ではなく個人を対象としている点です。個人を対象としているので行動が分散し、インパクトが小さくなる傾向があります。従ってテレビにおけるサッカー・ワールドカップ中継番組のように視聴率40%達成というような大きな数字が発生することはありません。ただしその一方で聴取者の年齢などは細かく把握することが可能です。
    弊社は昨年度、一年間を通じて40代~50代男性をターゲットとした番組作りに注力して参りました。彼らの中には中高生の頃、私どもの放送を聞いてくださっていたのですが、その後生活様式が変わりラジオから離れてしまった方が多くいます。このような人たちがもう一度ラジオの良さや文化放送の面白さに気づいていただくためのリーチ拡大を狙っており、この取り組みは本年度も継続して続けております。

    具体的には、イベントなどのリアルな場を通じてリスナーとの関係づくりを醸成するようなメディアミックス施策も積極的に展開しております。その際のコンテンツは「学び」をテーマとしたものが中心になっております。

     

    Q:テレビなどの他メディアではなく、ラジオで展開することの意義についてお聞かせください。

    ラジオはテレビと違い出演者であるタレントさんやパーソナリティとリスナーさんの距離感が非常に近いメディアであると考えております。出演者を目で見ることのできない分、出演者はリスナーに絶えず情報や話題を投げかけ続けます。もちろん番組として構成しておりますので出演者同士によるトーク形式で番組は進行いたしますが、そこには常にリスナーが参加をしている構図を強く意識しているので、結果として両者の関係がとても密接になっていきます。
    ハガキなど送ってくださる常連リスナーさんが多く存在することでもわかるように、初めて番組をお聞きになる方もその回数を重ねていくごとに番組の重要な出演者にもなり得ます。パーソナリティや番組制作スタッフもリスナーさんのペンネームなどしっかり覚えています。
    リスナーさんも自身が番組に参加していることは無意識のうちに感じてくださっていると思います。このようにラジオは言わば「参加型メディア」であるからこそ、リスナーさんの「思い」が非常に熱いのです。

    かつて、喫茶店のマスターに扮した谷村新司さんが、弊社の吉田涙子アナウンサーと、日々様々なテーマでトークを展開していく「純喫茶・谷村新司」という番組がありました。この番組は全国ネットで展開していたのですが、ある放送で谷村さんが「ベローチェ(カフェ)のメロンパンが好きだ」という話をしました。当時、吉田アナはベローチェのメロンパンを食べたことがなかったので、谷村さんがメロンパンの美味しさを熱く語ったところ、全国のベローチェからメロンパンが売り切れてしまったのです。
    ベローチェの社内で、メロンパンの売り切れた原因が「純喫茶・谷村新司」だとわかると、文化放送に御礼のメロンパンを送ってきてくれました。それをまた番組で紹介すると、再度ベローチェのメロンパンが売り切れ、今度は全国の店から「うちのメロンパンの方が美味しいぞ」と言って、文化放送にメロンパンを送ってくださるというメロンパン戦争が起こったのです。
    このような現象は、リスナーさんが番組やパーソナリティを「好きでいてくださっている」というバックボーンがあるからです。リスナーが番組やパーソナリティに対し好意を持ってくださっている前提があるからこそ、ひとつひとつの言葉や情報がリスナーのハートに届きやすい、そして信頼していただきやすい、ラジオというメディアはそんな強さをもっています。だからこそイベントや映画の情報に対しても敏感にかつ積極的に行動をしてくださいます。従って番組内でパーソナリティが自身の言葉で商品をご紹介する生コマーシャルなどにも非常に大きな反響を頂けます。
    ただし気持ちのこもっていない番組づくりやトークをするとリスナーの皆さんにはそれがすぐに分かってしまいます。リスナーさんはよくわかっていらっしゃるのです。

    ですから、我々も「熱」を込めて番組制作に取り組みますし、「熱」を込めればたくさんの反応をいただけます。その結果、その番組をどんなリスナーさんが支えてくださっているのかを実感することもできるのです。

     

    Q:文化放送さんとして、番組制作や編成面で意識されていることはどんな点ですか?

    まず、ラジオの場合は時間帯によって、ターゲットとする層が大きく異なります。
    朝から夕方のナイターは大人向けの放送でありそれ以降は、ヤングゾーンと言われる若者向けの番組で構成しています。このゾーンでは他の放送局と差別化を図っている点があります。それは、アニメやゲームにフォーカスしたコンテンツを配置していることです。
    文化放送では、20年位前からアニメに関する番組制作を開始しました。当初は1番組、2番組程度からのスタートだったのですが、それが人気を博し、今では土日の夜は、アニメの声優さんが多く並ぶゾーンになるまで成長しました。
    今でこそ声優さんがNHKさんの紅白歌合戦に出演するなど、アニメやゲームといったジャンルが確固たる地位を築いてきていますが、20年前の番組開始当時の状況はもちろん違っていました。当時のアニメ文化はいわゆる一部の「オタクリスナー」のためのものであり、まだまだ市民権までは得ていない時代だったと記憶しております。
    しかし幸いなことに当時から弊社は「新しいものに挑戦をする社風」がありましたので、結果として「アニメ&ゲーム番組」という新しい取り組みを開始することができました。それが今では非常に力強いコンテンツに成長し、文化放送を象徴する特色にまでなってくれました。
    新しいチャレンジをすることはとても大事なことです。その取り組みは今この時点で同番組を聞いて下さるリスナーに届けるだけのものではないのです。

    昔、21時台から放送されていた「吉田照美のてるてるワイド」を聞いてくれていた若者が、月日が経ち40代、50代になって今、15時台からの「吉田照美 飛べ!サルバドール」を聞いて下さってます。今、新しいチャレンジをして面白い番組を作り若い皆さんに届けることは、この先20年後30年後までつながり続ける文化放送のファンを作ることでもあるのです。

     

    Q:そんな中、現在の若い世代に対するアプローチの仕方は何が重要でしょうか?

    言うまでもないことですが、ネットの存在は無視できません。私も子供が3人いるので分かるのですが、今の若い世代はわからないことがあったらその場でスマホなどを使って調べます。また何か観たいものがあればすぐにYouTubeで検索して閲覧できます。
    これは言い換えると、「自分が欲しい情報だけ選択しそこで完結する」という状況にあるのだと思います。自分の興味範囲以外の情報が入りにくい環境に置かれているといえるのです。
    我々の世代の場合、主な情報源のひとつとしてラジオは確固たるポジションを有しておりました。ラジオは私たちに「聞きたいジャンル」、「知りたい情報」の枠を超え、それ以外の情報をどんどん提供してくれました。そして私たちはそれを吸収し、そこからまた新しいジャンルへ世界が広がっていく感覚がありました。
    今の若い世代が興味のある事に貪欲なのは事実です。そして欲しい情報は徹底的に調べますし、それができる環境にあります。ですからラジオ番組も「彼らにとって欲しいと思われる情報やコンテンツ」を提供していく必要があると思います。
    ネットじゃないから接触しないのではありません。テレビや雑誌では得ることのできない情報やコンテンツが含まれた番組であれば、支持を得ることは可能です。現にそういうコンテンツを提供することにより、若い層からも多くの支持を得ている番組も多くあります。

     

    Q:ラジオと若者の接触ポイントも作る必要がありますね?

    はい。事実、今の若者にとって「ラジオ」という媒体そのものが遠くなりかけています。従って生活導線上にラジオが存在していることを認知してもらい媒体への距離感を少しでも近づけるような施策も重要です。
    その取り組みのひとつがPCやスマホでラジオが聞ける「radiko」です。また2014年5月からはJ:COMのコミュニティチャンネルで文化放送が聞いていただけるようになりました。このように接触ポイントを増やすことが若者とラジオが繋がるきっかけとして重要だと思います。そこで一度でもラジオを聴いていただければ、我々が他媒体では得られない価値のあるコンテンツを提供していることに気づいてもらえるはずです。
    また、リアルなコミュニケーションの場を創出することも重要だと考えております。たとえばイベント活動の展開です。冒頭にお伝えした通り、ラジオはパーソナリティとリスナーが非常に近い距離にあります。そこで、各種イベントを通じて音声のみでは提供しきれない、そしてデジタルのコミュケーションでは表現できないリアルな場をご用意し、リスナーと番組がより密接な関係を保てるよう努めています。

     

    Q:具体的にどのようなイベントを実施されていますか。

    日常的なコンサートなどの興業はもちろんですが、それとは別に年に一回「浜祭」という文化放送総力で取り組むイベントを開催しています。
    当社は2007年に本社社屋を四ツ谷から浜松町に移転しました。新社屋は浜松町駅にも隣接しており、イベントの実施が可能なホールもあります。
    また、近隣には東京タワーやハマサイトなど集客力のある施設もあり、人の活気に溢れた立地です。これらの利点を活かさない手はないと考え、イベント活動には積極的に取り組むようになりました。その一環が「浜祭」です。
    「浜祭」は文化放送の周波数AM1134にちなみ、初年度は11月の3、4日に開催をいたしました。その際は3~4万人の集客規模でしたが、2013年は11月4日の単日開催であったにもかかわらず、7会場で10万人の方にご来場いただいています。
    ラジオは声だけのメディアなので、このようにリスナーとの接点を我々は大切にしていますし、リスナーの方々も非常に喜んでいただいています。「くにまるジャパン」という人気番組があるのですが、私の知っている居酒屋の店長さんは邦丸さんをリスペクトする余り「邦丸さんに会うから浜祭の前日はお酒を飲まない」といって、張り切って来場してくださいます。挙げたらきりがないのですが、このように他のメディアでは見られない熱いファンがラジオには多いのです。

     

    Q : 「浜祭」の具体的な内容やトピックスなどお聞かせください。

    「浜祭」ではそれぞれの拠点で、公開収録・生放送、音楽イベントなどを行っています。実は、第一回、第二回はAKB48が参加してくださいました。当初は200人ぐらいの規模だったのです。その後、人気が出て第三回目以降は混乱が予想されたのでご参加いただけませんでしたが…(笑)。
    特筆すべきは、本当に多くのシニアの方が浜松町までお越し下さることです。朝早くからわざわざイベント会場に足をお運びいただき、邦丸さんや大竹まことさんなど、お気に入りのパーソナリティの収録やイベントに積極的に参加してくださいます。その熱気はAKB48などアイドルに夢中になり声援を送る若い皆さんの姿と何も変わりません。つい先程まで静かにしてらっしゃったおじいさんが、目当てのパーソナリティを見た途端に見違えるかのようなお元気な姿に変わるほどです。
    「浜祭」はリスナーと直接の接点が持つことができて、聴取率だけでは絶対に分からない番組へのリアルな支持を体験することができます。こういう体験を次の番組のコンテンツ企画に活かしていきます。

    また、リアルな場の臨場感というのはスポンサーさんにとって番組のポテンシャルを体感していただく大事なエビデンスにもなります。単に電波を流しているだけでは「誰が聴いているのか」、「どんな人が反応しているのか」が見えません。「浜祭」の現場をご覧いただくと、スポンサーさんにとっても自社ブランドがどのようにリーチしているのか再確認していただくことができ、ビジネス面においても大変意義のあるイベントであると思います。

     

    Q : そんなにシニアの方はイベントで積極的な反応をしてくださるのですか?

    そうなんです。シニアの方々のバイタリティには本当に驚かされます。例えば当社には「飛べ!サルバドール」と「走れ!歌謡曲」といういわゆる40代以上をターゲットにした2大シニア向け番組があるのですが、今年の6月にこの番組のパーソナリティとアシスタントを務める室照美と小林奈々絵が、「金沢・愛のパラミシア」というデュエットソングをリリースしました。
    興業としてもそれほど大きな期待はしていなかったのが本当のところですが、リリース時に弊社の一階のスペースで完成披露イベントを開いたところ、予想を大幅に超える多数の方々、特に50代60代の方がお越しくださいました。その現場は、まるでアイドルのような熱気に包まれ、年配の方々が自作の団扇やカードを持って参加してくださいました。握手会も開催したのですが、これも大盛況。普段ポーカーフェイスと思われる年配男性のお客様も、握手後には「今日は来て本当に良かった」という感想をくださいました。

    イベントを通じて感じることは、「ラジオ+イベント」の組み合わせがシニアに大きな「元気」を与えるということです。普段は癒しを与えてくれているパーソナリティですが、たまに彼ら、彼女らと触れ合える非日常の場の提供をすることにより、「文化放送は元気をくれる」存在と思っていただけことができるのです。
    イベントは私たち文化放送が「シニアに元気を提供する」という使命を担っていることを再確認する重要な場でもあるのだと考えております。

     

    Q:浜祭以外にもシニアをターゲットにした様々な施策に取り組んでいらっしゃいますね?

    はい、「浜祭」は当社の一大イベントなのですが、それ以外にも放送と連動した企画をプロデュースして参りました。
    そのひとつとして、完全生放送で取り組んだラジオドラマが印象に残っています。
    浜松町に越してきた一年目に、浜松町は古典落語の芝浜の舞台でもあるので、その芝浜を原作としたラジオドラマを、完全生放送というカタチで構成しました。
    古典落語と現代を掛け合わせた内容なのですが、役者さんも各自でセリフを覚えてきてもらい、なんと当日のリハーサルが初顔合わせでした。また、BGMや雑踏の音など「音を作る職人」による生の演奏にするなど、すべて「生」にこだわった企画でした。演技も生なのですが、音も録音ではなく生なので、見ているお客さんもCMになると溜息を漏らすぐらい緊張していました。
    とても大変な企画だったのですが、もう一度チャレンジしたいという気持ちもあります。ただ、キーマンの一人である音作りの職人さんがご高齢によりもう起用できないため、残念ながら再演するのは難しいのが現実です。こういう面でもシニアの皆さんには元気でいていただくこと、そして次世代への技能伝承の重要性を感じる次第です。

     

    Q:現在進行形でも結構なのですが、今後の展望や展開について具体的な取り組みを教えてください。

    冒頭にもお伝えさせていただきましたが、昨年から「学び」をテーマにした番組制作を積極的に展開しています。これは「大人がもう一度学ぶムーブメント」に着目し、弊社としてマーケティング的観点を強く意識して着手した施策になります。
    具体的には、火曜日から金曜日20:00 – 22:00の帯で35歳以上のビジネスマンをターゲットとした「オトナカレッジ」という2時間番組を昨年から始めました(プロ野球中継シーズンは不定期)。大きく分けて前半は「趣味と教養の20時台」、後半は「経済・ビジネスの21時台」の2部構成になっているのですが、後半部分では経済評論家の方々にも出演していただき、ラジオの向こう側のリスナーの皆さんにいわゆる「講義」をするような番組構成になっております。従って番組パーソナリティであっても講義中はなるべく口を挟まず、出演者とリスナーが対峙しているような番組です。

    また、講義後にメールでの質疑応答を行い聴くだけではなく、参加をしてもらう形式をとっています。このような番組は弊社の社員も積極的に聴いているので、実際のビジネスマンにも役立っていると感じています。

    今後は、ラジオだけではなく本当の講座も定期的に開講していこうと考えています。今後はビジネスだけではなく元プロ野球選手による野球教室やレッスンプロによるゴルフ教室などを考えております。これを聞いてからプロ野球中継を聞くと野球が何倍も楽しめたり、ゴルフの見方やり方がかわるような、大人が聞いて楽しい講義です。
    また講義の後にレッスンも行うなど、よりリスナーと密接な関係を構築できるようなコンテンツを提供し、文化放送の「オトナカレッジ」をブランド化していきたいですね。

     

    Q最後に御社が考えるシニア、シニアマーケットについて教えてください。

    ラジオはやはり若いうちにどれだけラジオに触れていたかが重要になってくると考えています。私たちや今の年配の世代は、若い頃ラジオに抵抗なく接していたので今でもラジオを聴きますし、何かのきっかけでラジオの存在を思い出し、聞いてくださる方も多くいます。
    しかし今の若い世代は、ラジオに対して距離感を持っていると感じます。ですので、スマートフォンやパソコン、イベントといったコンテンツを通じて、ラジオはメディアの中でも非常に近い距離に存在していることを啓蒙すると共に、「今、この瞬間に接してもらえる」ようなコンテンツ作りも心がけています。

    また、孫世代・親世代・おじいちゃん世代の3世代を結ぶ「親子3世代プロジェクト」にも注力して参ります。今の親は仕事に忙しくて子どもと触れ合う時間が限られる一方、祖父母が若くてお元気です。ですから子育てに祖父母が関わっていることが非常に多くなっております。子育ては親子三世代で取り組んでいるという観点から、「親子で話し合える」「おじいちゃん、おばあちゃんと語り合える」というキーワードの下、生活の一環にラジオが関わっていき役に立てるような番組作りに取り組んでいます。「一緒にラジオを聴くと楽しいね」、「ラジオってためになるね」と言ってもらえる存在になりたいのです。
    ラジオは生活の一部であると実感していただき、一緒に時代を経る時期を作ることができれば、途中、ラジオから離れてしまう時間があったとしてもまた思い出してもらうことができます。
    つまり、若い世代や40代、50代の「今」に対して、魅力ある番組、コンテンツ作りこそが、私たちにとって長い目で見たシニアマーケティングに繋がっていくのだと考えています。

     


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    半歩先のマーケットを見据えた情報発信、
    それを通じてのビジネス機会の創出

    株式会社ビジネスガイド社

    株式会社ビジネスガイド社は、ギフトをテーマにした「ギフト・ショー」をはじめ「インターナショナル・プレミアム・インセンティブショー」、「グルメ&ダイニングスタイルショー」等、様々な展示会を展開していらっしゃいます。今回のインタビューでは、2013年9月に開催された「第76回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2013」内での特別テーマ展示イベント「『アクティブ・シニア』×『旅』=タビシニア」の事例から、株式会社ビジネスガイド社がギフト・ショーを通じて考える今後のシニア・マーケットに至るまで広くお話をお聞きしました。

    2013年11月 取材

     

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    Q.ギフト・ショーの概要を教えてください。

      弊社は流通業界に向け、ギフトを切り口とした専門誌の出版業からスタートしました。
     その出版業の中で、中小企業が新しいビジネスチャンスを見つけられるようなお手伝いができないかということで、1976年よりギフト・ショーの開催を始めました。
     現在、日本国内では数多くの展示会が毎日のように開催されておりますが、元来、展示会ビジネス自体が欧米からはじまったビジネスモデルなのです。従って展示会運営を主要事業とする企業には外資系が多く、当社のような内資系で展示会業をメインにしている企業は非常に珍しい存在であると言えます。私共が運営する展示会の特徴は、「成果を重視し、商談機会を獲得して頂くこと」です。そして、展示会がそういう場であるように、強い意識をもって企画・立案を行っております。その一環として、ブース出展のみならず無料参加できるビジネスマッチングの企画等、様々な選択肢をご提示させていただいております。

     
     
    Q.近年の出展企業・来場者の傾向を教えてください。

     昨今アップル社の商品のようなプロダクトデザインがフィーチャーされる傾向にも見受けられるように、ジャンルに限らず、デザイン性の高い商品を扱われる出展社様が多くなってきていると感じています。その影響は、セレクトショップや専門店などの販売チャネルを希望するメーカー様、卸企業様が増えていることからも伺えます。
     中でも、日本の伝統技術を活用した商品や、クラフト系の商品の増加は、その傾向を顕著に表した事例ではないでしょうか。こうした、クールジャパンを体現する商品を少しでも多くのバイヤー様に見ていただくため、私どもとしては海外バイヤーの誘致にも注力しており、実際ここ数年は海外からの来場者数も増加傾向にあります。
     また、時代の流れもあってか、情報入手手段が多様化しています。具体的にはパソコンからの情報収集からタブレット、スマートフォンへの移行です。タブレットやスマートフォンをご来場前に活用して、最新の情報をご覧いただく傾向が多いようです。デバイスによっては、入場直前まで情報収集が可能ですので、ある程度ニーズに合う企業様を絞り、効率的にブースを回っていらっしゃる印象がありますね。

     

    Q.前回のイベントでアクティブ・シニアをテーマにした「旅シニア」という企画を展開されましたが、「旅シニア」が企画・立案された経緯をお聞かせください。

     近年、シニア・マーケットが伸長し注目されているという理由で企画したというわけではなく、私個人の体験がきっかけでした。
     ある冬の実家帰省時に、祖母へのプレゼントとして百貨店で手袋を購入したのです。そうしたらとても気に入ってくれて、彼女が近所の方に自慢していたというのを後で聞いたのです。実は私としては、その商品が本当に祖母の好みのものなのか、その商品が本当は何歳くらいがメインターゲットのものなのか、全く意識せず、単に祖母へのプレゼントとして選んだものだったのです。
     この時ふと思ったのが、これまで自分自身が「シニア」という人々を漠然と捉えていたということです。つまり、本来ならば、シニア向けに作られていない商品でも、シニア本人が気に入る可能性は十分にあるということです。
     この体験をもとに改めてシニアの消費機会を分析すると、シニアの皆さんに商品を購入していただけない、つまり機会損失の要素が大きく3つあるのではないかと考えました。


    【シニアにおける商品購入を阻害する3つの要素】

    1. 「未知」・・・見たことがない、試したことがない
    2. 「不便」・・・もう少しこうだったら良いのに
    3. 「世間体」・・・私たちの年代で持っていいものなのか

     

     シニア・マーケットは急拡大しておりますので、このマーケットへの参入を目指す企業も増えておりますが、この3要素は重要になってくると考えます。
     ギフト・ショーは、「中小零細企業のビジネスチャンスの創出」というミッションを有しておりますが、そのような立ち位置の中で、マーケットの発展に寄与できることがあるとするならば、シニア・マーケットに特化した情報発信の場を創出することだと考えました。これが企画に至った経緯です。
     また、第1回目のテーマを「旅」にした理由ですが、それは、昨今、日本の購買行動が「モノ消費」から「コト消費」にシフトしていることが挙げられます。弊社の展示会でも単純に商品を並べるのではなく、その商品を使う消費者のライフスタイルや行動をイメージしやすいような、「コト消費」を強く意識しているのですが、そういった背景もあって、モノだけではない価値が演出できる「旅」をテーマに選定いたしました。

     
    Q.「旅シニア」の反響はいかがだったのでしょうか。

     企画当時は、やはり既存参入企業の多い、介護や衛生用品のような商品が多いのではと懸念していたのですが、結果として年齢に関係なく使える商品やデザインで、比較的行動範囲の広い方向けの商品が多かったです。
     来場者については、当日のアンケートによると、企業のエグゼクティブやシニア戦略担当の方が非常に多く来場されていましたので、それだけ注目されている市場なのだと再認識しました。
     次回は美容をテーマにした「美(ウツク)シニア」という企画で実施しますが、今後もテーマ性を持たせ、ライフスタイルが伴うような、商品展示企画を考えて参ります。


     
    Q.世界に冠たる高齢化社会の日本ですので、シニア・マーケットに関しては世界中に先駆けて各分野の企業が模索しながら取り組まれていると思いますが、海外に向けた取り組み等はお考えなのでしょうか。

     シニア企画はまだはじめたばかりですし、シニア企画自体が1つのイベントとして独立するに至っておりません。
     現在、海外でも展示会を開催しておりますが、シニア企画に関しては当面日本国内に注力していく予定で、今後シニア企画の回数を重ね、出展社様や来場者様の反応・反響を踏まえて海外展開という可能性もあるかもしれないとは考えています。まずは国内で浸透させることが第一です。
     シニア・マーケットは今後更に伸長し注目が集まるとは思いますが、弊社として何ができるかを見定めながら、今後更にオリジナリティーを加えながら企画していきたいと考えています。

     
    Q.シニアマーケットにおいてベンチマークされている企業があれば教えてください。

     一概には言えませんが、消費者とのコミュニケーションの接点はメーカー企業よりも小売企業の方が多いと思いますので、小売企業のほうがより正確にマーケットを捉えられているのではないかと思います。また我々はバイヤー向けの展示会ビジネスを運営していることもあり、小売企業の動向には特に注目しております。
     特筆する企業としては、2社あります。1社はイオンさんです。一度取材でお話をお伺いしたのですが、随分前からシニア戦略に取り組まれており、シニア向けの売場づくりはもちろんですが、小売業に限らず銀行や保険、葬儀に至るまで様々な事業展開をされています。ソリューションやアイディアが非常に多く総合的かつ長期的にシニア・マーケットを据えられておりますので、今後の動きにも注目しています。
     もう1社は京王百貨店さんです。京王百貨店さんは、昔からシニアに好まれている百貨店であり、シニア戦略に注力した展開をされています。特に新宿店ではシニアに特化した売場づくりや、知識・経験の豊富なご年配の方でも満足できるような店員スタッフの配備、店舗内の動線に至るまで配慮されていますので注目しています。

     
    Q.「旅シニア」という名称にも使われていますが、「シニア」はどう定義されていますか。

     呼び方として「シニア」というワードを使っていますが、弊社の場合は単なる年齢を重ねた方を「シニア」と定義するのではなく「高度に成熟した個人」という捉え方をしています。
     我々のような若い世代は新しいトレンドを積極的に取り入れやすく、周囲の価値観にも影響されやすい。
     対して「シニア」世代は、長い人生の中で多くの経験や知識など様々なものを蓄積して今の彼らを形成しています。そのため、自分に最適なモノやコトが何なのか、確固たる判断基準をお持ちだと思います。これまでの人生で数多くの商品に触れていますので、その分新しい商品に対する期待度も大きくなります。コストパフォーマンスを見極める目もお持ちですので、商品は勿論のことですが、更に、店舗で接客されるスタッフの方にも、自分と同等かそれ以上の知識やノウハウを求められると考えます。
     そういった意味で、シニア・マーケットに参入を希望される企業が増えてはいるものの、一方で、小手先の戦略では満足に至らしめることが難しく、撤退する企業も増えていくように考えています。

     
    Q.シニア・マーケットを細分化する際、軸や指標にされているものはありますか。

     昨今、消費者ニーズや趣味・嗜好も多様化しているため、従来のようなセグメント化が難しくなり、マスを狙った従来のマーケティングではシニア層を捉えきれないという悩みを抱えていらっしゃる企業様も多いと聞きます。
     また、現在の60代と今の若い世代が60代になった時を想定すると、もちろん生活様式や生活環境も違いますし、何より、ITリテラシーが高いため、触れる情報量が多く、趣味・嗜好がより多様化するでしょう。そういった意味で、これからは消費者の人生の時間軸でマーケティングを考えていく必要があると思います。はじめからマスを狙うのではなく、1人1人時間をかけて商品の存在や価値を高めていけるような体制づくりや、長く愛され続けるような生涯価値の形成が大事になるのではないでしょうか。
     また、シニア向けの商品といえども、これらの商品の実際の購入者は、使用者のお子さんやお孫さんだという場合もあるということも重要です。そう考えると、単にシニアだけを捉えるのではなく、世代を跨いで購入させるような戦略も今後は必要かもしれません。特に、私どもは「ギフト」というキーワードで展示会を企画しておりますので、このような「つながり消費」は大事なテーマと言えます。

     

     Q.今後のシニア・マーケットはどう変化すると思われますか?

     前述のとおり、趣味・嗜好の多様化によって、これまで以上にシニア・マーケットの攻略は難しくなり、スピード感や柔軟性がどの分野にも求められるようになると考えます。
     シニアは一度使ってよいと思ったら長く使い続ける傾向があり、そういう意味では非常にありがたい顧客です。そういった旨味があることから、各分野で参入企業が急増していますが、将来的にはシニア・マーケティングを継続し続ける、強い意志と体力と戦略性を有した企業にある程度集約されていくでしょう。その結果、マーケットを牽引するプレーヤーが明確になると考えます。
     また、その流れが、流通企業にも影響すると考えます。前述した、京王百貨店さんのように、シニアの方に寄り添うような接客や商品展開がひとつの方法だと思いますが、このようなシニアを意識した施策がごく当たり前になってくるように予想しています。

     
    Q.現在シニア・マーケットへの参入を検討中の企業様に向けて何かメッセージはありますでしょうか。

     シニア・マーケットが注目されはじめ、まだそこまで時間は経っていないですが、いかに早くビジネスチャンスを見出せるかが重要だと考えます。既に取り組みを強化し、成果を出されている企業様も多くいらっしゃるので、決して他人事として捉えるのではなく、早めに手をつけてほしいです。
     今後の日本企業にとっては、海外展開も非常に重要ですが、日本は内需大国ですから、シニア・マーケットも同じくらい重要な収益源になり得るでしょう。
     会社の規模が小さいと、新しいチャレンジに慎重になりがちですが、中小規模でしかできない事も多くあります。スピード感や小回りのききやすさは、大企業にはない優位性だと思いますので、是非それを活かしてビジネスチャンスを見出していただきたいです。
     我々も一中小企業として皆さんと共にシニア・ビジネスに向き合っていこうと考えています。

     


    株式会社ビジネスガイド社
    • 会社HP:http://www.giftshow.co.jp/
    • 本社所在地:〒111-0034 東京都台東区雷門2-6-2 ぎふとビル
    • 電話番号: 03-3843-9854
    • 設立年月:1971年(昭和46年)8月
    • 資本金:5,000万円
    • 代表取締役:芳賀 信享

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    高齢者に心地よく楽しめる音楽の場を

    株式会社リリムジカ 取締役 共同代表 
    柴田萌 氏 (日本音楽療法学会認定音楽療法士)

    イタリア語のリリカメンテ(叙情的に)とムジカ(音楽)を組み合わせ「心に響く音楽」という意味の企業名である株式会社リリムジカは、「介護を受けて生活している人に心地よく楽しめる音楽の場を提供する」というミッションのもと、介護事業所等に出張し、認知症の方や障がいのある方向けに歌や楽器、会話を楽しむ音楽療法にもとづいたプログラムを展開しています。今回のインタビューでは「音楽」を手段として捉えたコミュニケーション、現状の取組、そして今後の展望までお話をお伺いしました。

    2013年12月 取材

    4

     



    Q.まず、柴田さんが音楽療法とどのようにして出会ったか、からお聞きしてよろしいでしょうか。

     4歳の時からヤマハ音楽教室でピアノを習いエレクトーンもはじめ、学校では合唱やブラスバンドに参加したりして、幼少期から音楽に溢れた生活をしていました。私と同じような環境で過ごされた方の多くは音楽大学への進学を一度は考えると思うのですが、音楽大学に入ったからといって演奏家として活躍するのはほんの一握りで、かつ就職も難しいという現実があります。そのため、音楽大学ではなく理系の大学を目指して高校3年生まで勉強していました。
     そんな中、偶然「音楽療法」という言葉と出会い、「音楽療法」に関する本を読んでみたのです。一般的な概念では「音楽」を仕事にしようとする場合、演奏家になるかもしくは教育者になるかの2つが代表的な選択肢だと思います。一方、仕事にしないとしたら「聞く」か「教わる」というのが音楽との関わり方になります。
     しかし、その「音楽療法」の本の中では、音楽そのものがコミュニケーションの“手段”として捉えられており「音楽を医療や福祉に活かす」という考え方が書いてありました。当時、「演奏する」、「教える」、「聞く」、そして「教わる」の4つが音楽との関わり方だと考えていた私にとって、その考え方は衝撃的でした。それからというもの「音楽療法」というワードが頭から離れなくなってしまい、結果的に理系の大学ではなく、音楽療法コースのある音楽大学への進学を決意するまでに至りました。

     

    Q.大学ではどのような勉強をされたのでしょうか。

     はい。まず大前提として「音楽療法」というのは大きく分けて3つの対象者が存在します。「障がい児」、「精神疾患者」、そしてもうひとつが現在私どもがお仕事させていただいている「高齢者」です。私は大学3年の時に週に1回のペースで障がい児、精神疾患者、高齢者のそれぞれを対象とした「音楽療法」プログラムの実習カリキュラムを受けました。そのカリキュラムは学外の様々な施設様を訪問する実地型の実習でした。その中で特に私にとって印象に残っているのが高齢者の皆さんを対象にした実習です。なぜかというと、当時の私はその実習が最も苦手だったのです。「音楽療法」のプログラムでは、歌を歌ったり演奏するだけでなく、前に立ってトークをしたり会話をしたりしなければなりませんが、当時の私はお年寄りの前で何を話したらよいのか分かりませんでした。
     大学生活というは高齢者との接点はほとんどないですし、うちの場合祖父母と同居しているわけでもなく地域の高齢者との交流もなかったので、高齢者の前でのトークや会話がすごく難しく思えていたんだと思います。今となっては楽しくてついつい話が盛り上がりすぎてしまうのですが・・・(笑)

     

    Q.大学を卒業されてからは?

     大学を卒業してすぐに弊社代表取締役である管と共に「リリムジカ」を立ち上げました。先程お話した通り、音楽大学出身者は勉強して知識・技術があるにも関わらず、音楽を活かす仕事が少ないという現実があります。しかしそれが非常にもったいない事に思え、知識・技術を活かし社会の役に立つ組織、そういう人が集まる場所を作りたいと思いが、会社設立に至る原動力になりました。

     実は、設立当初は大学在籍時に専門で勉強していた障がい児を対象としておりました。しかしながら、これがなかなか仕事にならない、どうしようかと考えていた際にたまたま介護施設からお仕事をいただく機会がありました。

     それをきっかけとして高齢者向けも視野に入れるようになったのですが、それが高じていつのまにか介護事業所ばかりお伺いするようになっていました。(笑)

     

    Q.「音楽療法」という言葉の中に「療法」とありますが、実際にどのような効果があるのでしょうか?

    2 音楽療法についてご説明する際、非常に難しいのがその「効果」についてです。実は「音楽療法」の明確な定義自体も定まっていないのが現状です。障がい児を対象にした場合については効果を見出しやすいかもしれません。障がい児対象の療法というのはどちらかというと療育に近いのですが、「音楽療法」を通じて感情を表現したり、それぞれが担当の楽器を持って演奏することによってルールや我慢、社会性などを学びます。また、音楽の場面だけでなく日常的も着席できる時間が増えたり、情緒が安定したりと日常生活に変化が起きてきます。そういう目に見える良い変化を効果として捉えることができる特徴があります。
     一方で、高齢者を対象とした場合の効果測定は難しいのが実態です。高齢者にとっての「音楽療法」というのは、体力・筋力維持と認知症の予防や進行を緩やかにすることの2点において有効性が見出せます。
     例えば体力維持の側面で言えば、楽器を演奏したり音楽に合わせて体操したりすることを通じて、体力や筋力維持ができるという側面がありますのでこちらはまだ効果を図りやすい指標といえますが、一方で、認知症予防における効果測定は困難です。
     認知症に対しては「音楽療法」がその進行スピードを緩やかにするとされていますが、そもそも認知機能自体の数値的な測定が難しいという問題があります。昨今では数値的な数値的な指標のひとつに「長谷川式スケール」という測定手法がありますが、たとえこの測定方法を使ったとしても、今度は測定結果が他の要因によるものである可能性があり、と音楽療法の因果関係を証明しにくいのが現状です。

     

    Q.なるほど、なかなか可視化しにくい効果なのですね?

     そうですね。実は私自身も勿論大学で「音楽療法」について勉強していた際、認知機能に関しての効果を追及していました。しかし私どもは音楽療法の存在意義は直接的な効果だけに見出されるべきではないとも考えています。
     こんなことがありました。ある時、音楽療法をご採用していただいている施設の職員様から、「認知症をお持ちでいつも落ち着かず歩き回っている利用者様が、最近ニコニコしながらときどき、リビングで椅子に座って他の方と交流されるようになったんですよ。」と言われました。また別の時には、「○○さんはこの歌が好き」、「○○さんは、この楽器を演奏する時はじっと着席されている」等、音楽プログラムを通じて施設の皆さんが利用者様の何らかの“変化”を発見するきっかけになっている旨のお話をよく聞かせていただけるようになり、更にはその後施設職員様から利用者様への見方や関わり方にも変化が表れ始めたことに気づきました。つまり、音楽療法が利用者ご自身のみならず、施設様内の運営そのものに寄与していたのです。
     この経験から、介護現場においては、音楽療法の効果を医学的に実証すること以上、利用者様のより良い日常のために、施設職員やご家族をはじめとした利用者様の周辺環境にアプローチするサービスであるべきだと考えるようになりました。
     更に、「音楽療法」という言葉自体が「何かを治療する難しいもの」、「特定の曲を聞かされる」といったイメージを与えてしまうともありましたので、「音楽療法」ではなく「音楽をつかった場づくり」という言い方をしております。そのため実際にプログラムを行うスタッフのことは「音楽療法士」ではなく、音楽の場をつくる人ということで「ミュージックファシリテーター(音楽をつかった場作りの専門家)」」という呼び方をしています。
     現在お付き合いのある施設様は平均して月に2回のペースでお伺いしていますが、1か月に2日ある音楽の時間だけではなく残りの28日にどう影響を及ぼすかが大事ということですね。

     

    Q.御社のプログラムの一番の特徴・ポイントは何でしょうか? 

    4 (2) 先程お話しましたが、音楽プログラムのためだけにお伺いするのではなく、音楽を通じて施設全体の活性化を目指しておりますので、施設職員様との連携を重要視しているという点になります。
     施設側と当社間の連携を密にするため、当社ではプログラム実施後には記録をご提出させていただいておりますが、その記録は必ず施設のご担当者様と一緒に作成しており、我々はこの時間を「振り返り」と呼んでいます。他社の音楽療法士の方の中には、記録を一人で書いて施設様にご提出される方もいらっしゃるようですが、当社は施設職員様の同席していただいております。
     私どもは基本的に月に2回しか施設にお伺いしません。従って利用者様の事を十分に把握しきれないのが本当のところです。そのため、新しく入られた方についてはどう接するのが一番良いのかであったり、病気が進んでいらっしゃる方の具体的な病状であったりとか、利用者様に関するあらゆる事を情報交換させて頂くために、振り返りの時間が重要な意味合いを持っています。
     そして共同でこの記録を施設職員様と直接的なコミュニケーションを介して共同で作成させていただくことが、施設の皆さんにも主体的に音楽プログラムに関わっていただくきっかけになります。 もう一点補足させていただくと、プログラム内容は、当社が一方的に決めるのではなく、利用者様や施設職員様のご意見をお聞きして決めています。
     施設様にとって私たちはただの「音楽プログラムを担当する人」ではなく「施設運営全体を見て、一緒に考え一緒に実行するパートナー」であることを目指していますので、振り返りというのは、施設様と私どもにとっての重要なコミュニケーショ手法なのです。

     

    Q.現在お付き合いのある施設はどのくらいあるのでしょうか?
     約40事業所です。現在の対象エリアは東京・埼玉・神奈川・栃木の4県ですが、近い将来的には千葉エリアでも展開したいと考えております。
    1事業所あたりは平均して月2回実施し、1回のプログラム平均時間は45分ですので1日に複数施設を訪問することもあります。
     45分という時間については、お元気な方の中には腹八分目とおっしゃる方もいらっしゃいますが、認知症の方が多い施設ですと集中力の持続が難しく、相対的に45分がちょうど良い時間だと考えています。

     

    Q.プログラムの対象とされる施設利用者様の介護度に制限はあるのでしょうか? 

     特に制限はしておりません。デイサービスもありますし、グループホームや特別養護老人ホームにもお伺いしております。新たに導入していただける施設様へアプローチする際も制限はしておりません。
     お元気な方の地域サークルでの現場もある一方、介護度が4~5の方もいらっしゃる特別養護老人ホームにもお伺いしています。ただこの場合は声を出して歌える参加者が半分以下ということもあります。
     そのためプログラムの中身については、介護度によって使用する楽曲は同じでも方法が異なる場合があります。例えば、歌であれば利用者様のご様子に合わせて3番まで歌うこともあれば、利用者様がよくご存じの歌の1番を繰り返し歌うこともあります。集中力が続かない方に対しては「○○さん、次○○歌いますよ!」というように声をかけたり、歌い出しを目の前でアカペラで歌ったり・・・状況に応じて進め方をアレンジしています。

     

    Q.楽器も演奏されるということですが、楽器は施設様でご用意いただくのでしょうか? 

     3 太鼓や鈴等お一人ずつ演奏いただく楽器については、各ファシリテーターが20~30人にお渡しできる数を用意しておりますので、事前に何名参加されるかお聞きしてお持ちしています。
     中にはピアノをお持ちの施設もあるのですが、ピアノの場合背を向けて伴奏することになってしまいます。
     そのためキーボードを持ち込むことがほとんどです。利用者様の中にはこちらをじっと見ながら歌われる方、笑うと満面の笑みで返してくださる方、こちらが歌う口元を見ながらタイミングを合わせて歌われる耳の遠い方等いらっしゃいますので、お互いの顔が見えるというのは必須ですね。  

     

     

     

    Q.介護施設の現場で「音楽療法」自体は浸透しているのでしょうか?

     あくまで感覚値ですが50%程度は浸透していると思います。全くご存じない施様設もありますし、20年以上「音楽療法」を取り入れていらっしゃる施設様もあります。
     当社の説明をする際は「音楽療法」という言い方はせず、認知症や麻痺がある方でも参加できる「音楽プログラム」とお伝えしています。また45分の時間を埋めるのではなく、音楽を通じて施設全体の活性化を目指しており、施設職員様のパートナーとして利用者様を見ていけるような気持ちで考えていますとご説明しています。

     

    Q.現在一番の課題は何でしょうか?

     やはり人材確保でしょうか。当社では、特に資格をお持ちの方をミュージックファシリテーターの採用条件にはしておりません。ただし、実際の現場では利用者様から歌いたい曲のリクエストを頂いたり、歌いやすいキーやテンポにするなど、臨機応変な対応が不可避ですので一定以上の音楽的素養が求められます。そう考えるとやはり音楽療法の勉強経験がある方は即戦力といえますね。
     また、音楽の技術があったとしてもある程度介護や認知症に関しての知識も必要になります。施設様側もヘルパーの資格を持っていると安心していただけますので、介護職員初任者研修やヘルパー2級の資格を持っている者も多く在籍しています。
     更に一番重要なのは一方的に音楽プログラムを押し付けるのではなく、「利用者の皆さんの歌声を引き出そう」、「楽しくするために何ができるのか」、というようなマインドも重要ですので、こういうマインドをお持ちの方と出会えるよう常にアンテナを張っています。

     

    Q.ピアノが弾ける施設職員の方がいらっしゃった場合、職員の方向けに教えたりということはないのでしょうか?

     デイサービスの職員様を集めた研修会の講師依頼をお受けすることはあります。
     職員様向けにノウハウをお教えすると、我々の仕事がなくなってしまうのではないかと思われるかもしれませんが、決してそうではありません。研修会を機に施設内で音楽の時間を増やしていただくと、「もっとこうしたい」、「もっとこんなこともやりたい」とクオリティやバリエーションを求めるようになり、職員様の業務量が非常に多いため対応できないことも増えます。そういったときこそ我々ミュージックファシリテーターの出番だと考えています

     

    Q.今後の目標をお聞かせください。

       近年、介護施設が急増しているため競合施設との差別化の意味もあってか、利用者様向けのコンテンツを様々ご用意される介護施設が増えていますが、利用者様それぞれに趣味や好きなものがありますよね。我々の音楽に限らず、様々なコンテンツホルダーが介護業界参入することで、高齢者がやりたい事を選択できるのが当たり前にすることですね。 最近では介護旅行や訪問美容、アロマ等様々なコンテンツホルダーの参入があるようです。ビジネス上はニッチすぎて難しいという面もあるかもしれませんが、積極的にこの業界を盛り上げていきたいと考えています。    

     

     


    柴田 萌 氏 プロフィール

    株式会社リリムジカ 取締役 共同代表/ミュージックファシリテーター 「介護を受けて生活している人に心地よく楽しめる音楽の場を提供する」というミッションのもと、介護現場にて認知症や障がいのある方も楽しめる音楽プログラムを実施。実施回数は年間300回以上にも及ぶ。 また介護職や地域の人に向けた音楽の場づくり講座等も行っている。 2008年昭和音楽大学音楽療法コース卒業。 日本音楽療法学会認定音楽療法士/ヤマハエレクトーン演奏グレード5級/ヘルパー2級  


    株式会社リリムジカ 会社概要

    • 会社HP:http://lirymusica.co.jp/
    • 本店所在地:東京都西東京市
    • 設立年月日:2008年4月1日
    • 資本金:600,000円
    • 代表取締役社長:管 偉辰

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