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第36回 朝日新聞社

アクティブシニアに向けて新たな情報や社会とのつながりの場を提供する、朝日新聞社のコミュニティプロジェクト


総合プロデュース本部 コンテンツ事業部 Reライフ.net 編集長
菊池 功氏

新聞紙面から始まったアクティブシニアを応援する「Reライフプロジェクト」
そのプロジェクトが運営するコミュニティ「Reライフ読者会議」は、50代、60代の男女を中心に1万人以上が集い、紙面×ネット×リアルイベントを通して、アクティブに生きるシニアのための情報共有の場となっています。
今回はシニアマーケティングを考える上でも貴重なコミュニティを運営していらっしゃる朝日新聞社 Reライフ.net の編集長 菊池 功氏にお話を伺いました。

2021年6月取材

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2021年、大きな転換期を迎えたシニアとネットの関係性

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Q.まず、朝日新聞社が「Reライフプロジェクト」を通じてシニアマーケティングに取り組むことになったキッカケをお聞かせください。

朝日新聞に「Reライフ」という人気の紙面があります。
人生100年時代、定年・子育て後が長くなり、50代以降の数十年をいかに生きるかが問われるようになりました。
元気なシニアが増えるとともに、長寿化・高齢社会による不安も膨らんでいる。そんな方々の生き方を提言する紙面です。

そのファンの方々に向け、新聞だけでなく、ウェブやリアルイベントなどでも情報や体験を提供しようと「Reライフプロジェクト」を立ち上げました。
月間100万PVを超えるネットメディア「Reライフ.net」や、春秋年2回の大型イベント「Reライフフェスティバル」などを運営しています。

「Reライフフェスティバル」はリアルの時は1開催あたり約3,000人、コロナ禍でオンライン化してからは1開催期間中延べ11万人以上の方にご参加いただいています。

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そして、もうひとつ特徴的な活動が「読者会義」です。
オンラインで登録していただき、登録後はセミナーや座談会に参加したり、様々なプレゼント企画に応募できたりします。
参加者は50代~60代のアクティブシニアといわれる世代の人たちです。登録者数は1万人を超えました。
「人生後半」を健康で、より豊かに生きるために、同世代の生活者同士がつながり、語り合い、共感する場をつくる。
そして、そこに集う人たちの課題解決を専門家や企業が支援する。
そんなプラットフォームになることを目指して立ち上げたコミュニティです。


Q.当時、ネットの分野でシニア(マーケット)に取り組むということに対して懐疑的な意見などはありませんでしたか?

特にはありませんでした。
当時の当社にはすでに「朝日新聞デジタル」があり、10年ほど前からは徐々にデジタル独自のコンテンツも発信するようになっていました。
そうした取り組みの中で、当社は紙だけでなく、デジタルにも力を入れていく方針を決めました。

一つのテーマを深掘りしていくネットメディアも次々と立ち上げました。
そうした流れの中で「アクティブシニア」にターゲットを絞り、その層にふさわしい情報を提供する「Reライフ.net」がスタートしました。

 

Q.コミュニティへの参加経路はオンライン一択なようですが、オフラインはないのでしょうか?

読者会議への登録や各種イベントへの申し込みはすべてネット上で行っています。
当初は紙面でメンバー募集を告知していたため、電話での問い合わせもありましたが、想定していたよりもアクティブシニアのデジタルリテラシーが高く、スムーズに登録者が増えていきました。

登録はオンラインですが、コロナ禍以前は、リアルのイベントを開催していました。
そこで読者会議のメンバー同士や我々編集部ともふれあってきました。

イベントを通じて新たに会員になってくださった方もいます。
今現在は三密を避ける必要からリアルのイベントについては開催を見合わせておりますが、いずれコロナ禍が収束すれば、以前のような活動を再開する予定です。


Q.コロナ禍で世界のネット環境やネット活用が一気に進化したとも言われますが、「Reライフ」の運営においても感じることはありましたか?

読者会議メンバーへのアンケート調査でも、コロナ禍前はオンラインイベントに参加していなかった方々においても、コロナ禍の中で様々な集まりや仕事上の会議がオンライン化されたことにより、必要に迫られてオンラインイベントに参加する人が増えていることがわかっています。

当社の調査によれば、(そのようなオンラインでのコミュニケーションについて)7割近い人たちが経験していました。
徐々に操作に慣れてきて、今ではオンラインでの美術展や旅行などを楽しむ人も増えています。
今後、オンラインイベントは様々な発展を遂げるでしょう。

また、私たちの活動においても、ファッションや医療関係などオンラインイベントの数を増やしており、リアルイベント、オンラインイベントは読者会議活動の両輪となると思っています。

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その一方で、課題も見えてきています。
高齢の方の場合、家庭内のネット環境が整備されていないケースが見受けられます。
オンラインイベントへの参加は、スマートフォンよりパソコンの方が画面も大きくて便利です。
すべての家庭でwi-fiが整備されるなどのネット環境の充実化が実現すれば、私たちの活動もより幅が広がるのではないでしょうか。

 

Q.ネットの比重が大きくなる中で、読者とのコミュニケーションが変わりましたか?

新聞は購読者の減少という課題に直面しています。
仮に購読していても、新聞の記事量は新書一冊分といわれるほど多く、すべての記事が読まれるわけではありませんし、また、日々の記事が読まれたのかどうかを確かめるすべもありません。
そのため、「大事な話は5回書け!」と先輩から言われたほどです。

ネットの場合、メルマガで直接情報を送ると、それをもとにどれくらいの読者がWebに流入したのかをある程度知ることができます。
Web上の記事も、どれぐらい読まれたのかを計測することができます。そういう意味では、Webでは読者の反応がリアルにわかり、直接話すことはなくても関心があるテーマなどを推し量ることができます。

私たちは様々なデータを読み解くことで、常に読者とコミュニケーションをとっているといえるでしょう。
またコミュニティ活動では、オンラインであっても「Face to Face」でつながることを大切にして、ZOOMミーティングなどを活用しています。
読者会議コミュニティの強みはオンラインであっても「顔や人となりがわかる」ことです。


次頁 : 「会員のモチベーションの高さ、その理由と活用方法とは」


朝日新聞社 「Reライフプロジェクト」


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